呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

明治乳業の中国撤退に関する日中メディアの報道の違い

2013年10月31日 | 日記

 中国メディアの報道は政府からコントロールされているので、本当のことが伝わらないというイメージを持つ人もいるかと思いますが、政治的なことはともかく、それ以外のことについてはそれほどコントロールされているとは思えず、経済記事なんかでは結構厳しい意見を書いていたりします。最近明治乳業の中国撤退に関して最近話題になっており、中国のメディアでも報道されていますが、日本メディアの報道と違いが見られるように思いますので、今日はこれを紹介したいと思います。

 

 まず、日本の報道から見ていきましょう。撤退するということは要するにうまくいってなかったからと言うことなのですが、その理由が、

 ・根強い反日感情や独特の商習慣

 ・東京電力福島第1原発事故の影響

 ・日中関係の悪化の影響

 ・他の大手外資メーカーなどとの厳しい競争

 

 だいたいが上記の理由により売り上げが落ち込み撤退せざるを得なくなったというものです。理由を見る限りはなるほどなあと思えます。

 

 次に中国側の報道を見てみましょう。

 ・欧米メーカーは狂ったようにお金をかけて市場を押さえようとするのに対して、明治はコスト投入が少なく、重点を華東市場(上海、江蘇、浙江)においていた。

 ・販売チャネルはKAチャネル(売り場面積の大きい、来客数の多い大型チェーン)が主体だが、このチャネル費用はかなり高いにもかかわらず明治の販売量は小さかった。

 

 反日や原発事故を主な要因とは見ていないようです。

 

 中国における粉ミルクの販売チャネルは、

(1)  大売場のKAチャネル:これはコストが最も高く、参入企業も国内外の一級品が多い。

(2)  母子ショップチャネル:中小ブランドの主戦場

(3)  ECチャネル:新ブランドや小ブランドが好む

以上の3つがあるのですが、明治は自らは販売チームを持たず、全てディーラーの運営に任せ、またブランドも欧米メーカーほど浸透力もなく、この体制で市場を勝ち抜くのは簡単ではなかったと見られています。

 

 また、あるディーラーが言うには、「明治の粗利はその他の欧米ブランドと変わらないが、何も投入しようとしない。人も送ってこないし、広告もしないし、販促プロモーションも足りない。」というぼやきも紹介されています。

 

 あんまり反日や原発にふれていないんですよねえ。特に反日について触れないのは「中国は反日不買なんてしないというわざとらしいメッセージ」と意地悪な見方をする人もいるかもしれませんが、中国メディアの報道もこれに関してはかなり核心をついていると思います。結構厳しいですよねえ。「広告もしない」とあるように、広告主でもないから余計に書きやすいのでしょう。

 

 中国からの撤退を紹介する記事でやたらと反日を理由にするのが見られます。確かにそれも一因かと思いますが、そこまで単純とも思えません。残念ながらそのマーケットで勝負するために何を準備し何をすべきかといった、やるべきことをしっかりとやっていないまま、ずるずると従来のやり方で進めて結局うまくいかないというケースも多いのではないでしょうか。そのあたりしっかりと詰めて物事を進めていく会社ももちろんあります。意識の違いなんでしょうね。私もコンサルタントとして色んな会社とお付き合いしておりますが、そういう意識の高い会社とお付き合いしていると私も非常に刺激を受けられますし、そういう会社とより深く付き合っていきたいと思いますね。