呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

珠江デルタ、上がり続けるワーカーの人件費

2013年04月22日 | 日記

 珠江デルタの302社の企業に対すスタンダードチャータード銀行の調査によりますと、2013年の農民工の給与増加率は9%以上と、昨年の7.6%を上回るという結果が出ています。

 

 302社のうち、80社(60%)がすでに給与を引き上げており、引き上げ幅は平均で7.9%となっています。そして36社(12%)が昨年より労働力不足の状況は改善していると回答しているものの、34%の企業が2011年から労働力く不足の状況がどんどんひどくなっていると回答しています。

 

 第十二五次五か年計画では、全国の最低給与標準の変換平均増加率を13%以上とし、地方は状況に応じてもっと高い標準を設定できるとしています。多くの企業が五か年計画以上の引き上げを行っていますが、103社の企業は最低給与標準が引き上げられていなくても給与を上げていると回答しています。最低給与標準も大事ですが、それとは関係なしに給与増を迫られている状況ですね。

 

 さらに多くの企業が過去6か月以内に工会(組合)または従業員代表と正式な給与協議を行っており、60%以上の企業が5%~10%の日聞き上げを要求され、32%の企業が10%~20%の引き上げを要求され、それ以外は20%以上の引き上げを要求されています。あまりにも激しいです。

 

 こんな状況なので珠江デルタから出ていこうという選択当然出てきており、91社(30%)が内陸への移転を計画、27社(9%)が中国から出ていくと回答しています。また、広西と珠江デルタの給与差は30%もあることから、広西へ移転するという回答も多いです。5年くらい前から来料加工に対して政策的に締め付けが厳しくなってきましたが、その時点で広西に移転してしまった香港・台湾系は結構あります。動きが速いなあと思ってみていましたので印象に残っています。中国国外で最も注目されているのはカンボジア、それ以外だとバングラデシュとベトナムです。日本で言われているのと変わらないですね。

 

 業種にもよると思うのですが、カンボジア、バングラデシュ、ベトナムって実際のところどうなんでしょう。アパレル会社の中にはベトナムは既に過去の国と言い切り、それこそカンボジア、ラオス、ミャンマーと言っているところがありますが、他産業も全く同じと言い切れるのでしょうか。日中間の政治的関係が発生してからより一層注目を浴びるようになったプラスワンですが、まだまだ中国生産の方が全体的に見て効率がいいという人もおり、プラスワンばかりに目が行っている人も現地のインフラや産業集積度の状況を見て、また中国を選択するという人も出てくるのではないかなあと思えますし、今から進出する製造業でも中国生産を検討しているところもあります。中国国内販売を目的としている企業なんかは特にそうですよね。トヨタなんてレクサスの中国生産を検討し始めましたし。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2102K_R20C13A4TJC000/

 

 なんとなくプラスワンの流れもどこかでひと段落してまだ中国回帰の動きがきそうな気がします。もちろん業種によるとは思いますが。