呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

瀋陽伊勢丹が撤退

2013年02月14日 | 日記

 現地のオフィシャルサイトではまだ通知が出されていませんが、日本のメディアではすでに報道されているように、瀋陽伊勢丹が3月に撤退します。営業譲渡の形で撤退するとのことで、その場所自体は引き続き百貨店として運営されます。2008年2月のオープンなのでちょうど5年で幕を閉じることになります。

 

 

 

 撤退の要因として、日系メディアでは「開業以来、販売不振が続いていたことに加え、昨年秋の反日デモの影響もあり、事業継続は難しいと判断」、中国現地メディアでは、「日本本社側は長期的な赤字による」もの、「瀋陽伊勢丹の内部関係者によると瀋陽伊勢丹事態のポジショニングが瀋陽の消費者に合わなかった」とのことです。どれも結論は同じでしょう。そもそものターゲットはミドルハイ以上のホワイトカラーとのことですが、瀋陽にはそのような消費者がまだそれほど多くなく、にもかかわらず高級商業施設は少なくなく、消費者が分散してしまったそうです。

 

 これで中国にある伊勢丹は上海に1店舗、成都に1店舗、天津に2店舗の合計4店舗になります。この中で私が言ったことがあるのが上海と成都の店舗です。上海はもともと2店舗あったのですが、今残っている店舗は1997年にオープンしており、歴史も長く、場所もよく、そこそこにぎわっていると思います。2007年5月にオープンした成都店は歩行者天国の中にあり、イトーヨーカ堂の真横です。イトーヨーカ堂は賑わっていたのですが、伊勢丹はびっくりするくらいガラガラでした。

 

 中国は今まであちこち行ってきましたが、地方都市でも高級ブランド店や立派なショッピングモールがあることはよくあり、瀋陽もきっとそうだったのでしょう。ヤマダ電機も瀋陽でオープンしていますが、昨年時点での瀋陽の平均月収は3813元と中国第7位と上位に位置していることから、狙いとしては分からなくもありません。収入が高ければ高いほどいいに決まっているのですが、なにせ貧富の差が激しかったり、お金を持っている人でも土地によっては消費性向が保守的であるがゆえに、新しいものに手を出さなかったりすることがあります。瀋陽伊勢丹に関してはこういう面からもアテが外れたのでしょう。平均給与や可処分所得等のデータはまずはじめにチェックすべきポイントですが、貧富の差が激しい中での平均値であることも踏まえること、現地消費者の消費性向を事前によく把握しておくこと、これでかなりリスクヘッジできるのではないかと思います。もちろんリスクが0になるわけではないですよ。リスクは減らすことはできても0にすることまではできません。あとは小売りに関しては立地ですよね。これはもういい場所があるかどうか、その場所を押さえるだけの予算を取れるかどうかですよね。