呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

最近の外国投資者による中国国内への不動産投資について

2008年06月23日 | 未分類
  2年前に建設部、商務部、国家発展改革委員会、中国人民銀行、国家工商行政管理総局、国家外貨管理局が連名で公布した《不動産市場の外資参入と管理の規範に関する意見》(通達原文はここ)が公布されて以来、外国投資者による中国国内への不動産投資に関するルールが厳しくなってきており、現在では地方権限で認可されるものであっても最終的には商務部への備案(届出)が必要となっている。しかしながら、この備案の権限が省級商務部門に委譲されるという話が出てきている。
これに対して商務部外資司の某職員が「文書が出るので公布を待って欲しい。ただし政策の風向きは変わらず、単に地方で備案されることになるだけに過ぎない。」と回答している。商務部の職員がこのような回答をしているのと同じく、備案権限が地方に下りたとしても関連する通達が出て風向きとしては結局変わらないという見方をする人もいる。現在の環境において不動産プロジェクトの権限を緩和する方向に向かうのは考えがたいからだろう。単に商務部の仕事量が多くなってきたために地方に権限委譲するだけとの見方もある。2007年5月に《一段と外商の不動産企業への投資の審査批准及び監督管理を強化、規範することに関する通知》が公布されてから備案制が開始し、同年11月に商務部がさらに《外商の不動産企業への投資の備案の関連問題に関する通知》(通達原文はここ)を公布して、各地商務部門が批准した新設、増資の外商投資不動産プロジェクトについて商務部への備案が要求された。しかも外貨管理局が外商投資不動産プロジェクトにおける人民元転を行うにあたってはこの備案が済まされていることが要求された。その後商務部は300社あまりの外商投資不動産企業の備案を行ってきたが、既に備案を通過した不動産企業の多くは中国国内企業が香港で上場後に増資し、不動産プロジェクト会社を新設するケース、批准を取得した会社は二・三線都市に集中しており、北京や上海などといった一線都市のプロジェクト会社はそれほど多くないという特徴があるようだ。ある投資会社の董事によると備案制度は批准しないという強制的なものはないものの、外商投資不動産プロジェクトの備案は往々にして時間が非常に長く、一部の不動産が特に加熱している地域では備案が行われる可能性が小さいと指摘している。たとえ地方でプロジェクトとしての批准を取得しても商務部での備案で躓くということだ。
 
  今年に入って以来、外商投資不動産プロジェクトの商務部での備案にある特徴が見えている。北京、上海等の重点地区のプロジェクト会社の場合は要する時間が非常に長く、別の地区であれば2~3ヶ月であれば完了する備案フローが、北京、上海のプロジェクト会社であれば4~5ヶ月、さらにはもっと時間を要するケースも見られるという。商務部の備案手続きにおいても不動産市場が歩き始めた地区への投資を促そうとしている動きのひとつという見方もある。

  繰り返しになるが、外商投資不動産プロジェクトの備案権限が委譲されるといっても単に形式が変更するだけであり、つまり備案が地方で行われることになるに過ぎず、省級とはいえ商務部門で備案が行われることに変わりはない。従って、外商による不動産投資については現行の政策が継続され、外商による不動産投資に対する方向性としては大きく変わらず、権限委譲されたことが濫用されないような新たなルールができるかもしれないだろう。