御存知、大洗女子学園ウサギさんチームのM3中戦車リーです。テレビシリーズの終盤での大活躍に続き、劇場版でも別働隊としての働きが目立っていたことは周知の通りです。
最終章シリーズにおいてはまだ目立った見せ場に恵まれていませんが、しかしガルパン戦車プラモデルにおいては常にベスト5に入る人気車輌です。
そのためかどうか、最近には新規製品の投入が相次いでおり、タコムとミニアートからそれぞれ前、中、後期型がリリースされて一気に適応キットが豊富に揃う状況になってきています。いちおうプラッツからタミヤ製品での公式キットが出ているものの、古い時期の製品なので劇中車再現に際しては一歩を譲らざるを得ず、新規製品群のほうが適応キットとしての評価を上げつつあるようです。
M3中戦車リーが人気車輌であり続けるのは、ひとえに上図の澤梓以下ウサギさんチーム6人の人気の高さ故のことでしょう。アニメの時間軸においては最終章シリーズにおいても一年生のままですが、しかしテレビシリーズの頃に比べると、随分と成長し、頼もしくなってきています。
それがまた人気を呼び、結果的に搭乗車輌の人気をも持続させている、ということでしょう。
この6人が乗り込むM3中戦車リーは、周知のようにテレビシリーズの時と、劇場版の時とでは外見に幾つかの変化があります。簡潔に言えば、前期型の特徴および細部省略が多かったテレビシリーズの仕様が、劇場版仕様においては実車準拠となって後期型の特徴が付加された、という流れです。
上図は劇場版仕様ですが、最終章においてもこのまま登場しているようなので、M3中戦車リーに関してはアニメ版の仕様が2種類あることになります。
以前に制作したテレビ版仕様に続き、今回は劇場版仕様にチャレンジしてみます。
劇場版仕様、とはほぼ実車準拠ですので、仕様が近い適応キットがあれば、それを素組みするだけでも再現が出来ると思います。劇中車再現にこだわるならば、タコムやミニアートの新規製品群のなかで適応キットを選ぶことになるでしょうが、実を言うと、厳密にはズバリの適応キットはいまだに出ていません。
つまり、ガルパンの劇中車は、実車準拠の劇場版仕様でさえも、史実の車輌とは異なる独自の要素を残しています。端的に言えば、ガルパンオリジナルの車輌、という特性を今なお保ち続けている訳です。
上図には、ほぼ実車準拠となった劇場版仕様車輌の諸特徴を4つ示しています。1は短かい背面装甲、2は後部フェンダー、3は水平の雑具箱、4は側面ハッチ上のハンドル、です。いずれもテレビ版仕様において省略または変更されていた箇所です。
続いて5は車外装備品の追加分のパールと鶴嘴の柄、6は鶴嘴の身、7はホーン、8は前畳み式のキューボラハッチ、9から11は3ヶ所のベンチレーター、です。8までは中期型までの各タイプにみられますが、9から11のベンチレーターは後期型からの特徴です。
したがって、2019年秋の時点で適応キットを求めるとすれば、タコムおよびミニアートの中期型または後期型の4種類のなかから、好みで選ぶことになるでしょう。
ただ、いずれも劇中車にズバリではなく、とくに劇中車の背面排気管だけはテレビ版以来の前期型の特徴を残したままですので、中期型または後期型のキットに該当パーツはありません。タコムでもミニアートでも前期型のキットにしか入っていません。
そのあたりをどうするか、という問題は、私の製作においても一つの壁になっていました。色々悩んだ挙句、テレビ版仕様の車輌を作ったときのアカデミーの前期型キットを再びチョイスすることにして、国際通販にて該当製品を購入確保したという経緯がありました。その時の記事はこちら。
ところが制作の機会がなかなか無いままに1年余りが経過、2017年冬に模型サークル交流仲間のモケジョさんの希望に応じてアカデミーのキットを譲渡しましたので、その後はしばらく手元にM3中戦車リーのキットがありませんでした。
そうして2018年の夏、岡山真備の模型店エラヤの水害水没品セール買物支援において、上図のタコムの中期型のキットを見つけて購入しました。
当時はミニアートの新製品はまだ予告案内のみでしたので、適応キットとしてはこのタコムの製品群しかありませんでしたが、これなら容易に劇場版仕様が再現出来るだろう、と考えました。足りないパーツは何とかして補えば良い、と腹をくくりました。
エラヤで購入した時点のキットです。御覧のように箱は泥にまみれて原形をとどめず、箱絵も見えない状態でしたから、最初は何のキットか分からなかったのでした。側面にかろうじて「M3LEE」の文字が読み取れたので、製品名も分かったのでした。
水害にて水没してボロボロのドロドロ状態でしたが、箱がつぶれただけで中身は全部保たれたため、製作には支障がないことが分かりました。水害品なので、衛生面から洗浄および消毒を入念に行いましたが、5回洗っても、泥は完全に落とせませんでした。
それからでも1年近くが過ぎました。洗浄後のランナー群は御覧のようにスチール製トレイに入れ、今年の7月まで消毒用の重曹クエン酸の洗浄水に浸け置きしたまま、庭先に放置していました。
それを京都への引越しに際して水揚げして乾燥させ、さらにアルコール消毒したのが、上図の状態でした。
ですが、問題は組み立てガイドが使用に耐えないことでした。上図の状態は使えそうに見えますが、実はほとんどのページがめくれませんでした。
洪水に数日間浸かっていたため、ただでさえ薄くて破れやすい紙が、溶け出した印刷材の接着成分によってひっついて、そのまま乾燥して固まってしまい、剥がすと印刷面がボロボロに裂けてくるのでした。衛生面からもそのままの使用ははばかられましたので、思い切って廃棄しました。
次善の策として、パーツ構成がほぼ同じである前期型のガイド図をタコムさんのサイトからダウンロードして使用することにしました。一部のパーツおよび番号が異なりますが、組み立ての段取りが分かればなんとかなると考え、このまま取り組むことにしました。
かくして購入から一年余りを経て、水没品の泥まみれのキットが日の目をみることになった次第です。
ステップ1です。下部車体を組み立てます。
ここは、組み立てガイドの指示通りに進めました。
多くのパーツには、5度の洗浄でも落ちなかった頑固な泥汚れがこびりついたままでしたが、塗装してしまえば隠れる筈ですので、気にしないことにしました。
組み上がった状態です。タコムのキットはパーツの合いがしっかりして組み立てやすく、M3中戦車リーに関してはプラッツ発の公式キットよりも取扱い易いのでは、と思いました。 (続く)