透明な気圏の中から

日々の生活の中で感じたこと、好きな作家についての思いなどを書いてみたいと思います。

絵本『Liberté 自由 愛と平和を謳う』

2017-03-22 19:55:52 | 

曇り。最低気温0.2 ℃、最高気温3.5 ℃。

 

≪Liberté 自由 愛と平和を謳う

2001年初版発行

詩:ポール・エリュアール

訳:こやま峰子

画:クロード・ゴワラン

朔北社

          🍁     🍁     🍁

ポール・エリュアール

18951214日、パリの北8キロのサン・ドニで生まれ、19521118日、パリのグラヴェル街の家で57歳の生涯を閉じる。1917年、最初の妻ガラと結婚。その後2度結婚を経験する。天才的画家ダリやピカソと交友を持ち、戦火の最中、愛と平和を求め戦った詩人。

第二次大戦中に詩「Liberte(自由)」を発表。他に80冊近くの著作がある。

 

こやま峰子

詩人、童話作家、エッセイスト。第13回赤い靴児童文化賞、第28回日本同様賞特別賞受賞、第4回フランス・エビアン市文化賞受賞。


             🍁     🍁     🍁

≪Liberté 自由 愛と平和を謳う≫    の絵本の全文を

 

ぼくの大切なノートに

机に 木々に 砂に

そして 雪のうえにも

ぼくは きみの名を書く

 

読み終わったページに

真っ白な ページのすべてに

石 血 紙 灰のうえにも

ぼくは きみの名を書く

 

こがね色の イメージに

ナイトたちの よろいに

王さまの かんむりにも

ぼくは きみの名を書く

 

ジャングルと 砂漠に

小鳥の巣と エニシダに

幼いころの こだまにも

ぼくは きみの名を書く

 

夜のファンタジーに

日々の 白いパンに

婚約した 季節にも

ぼくは きみの名を書く

 

コバルトブルーの きれはしに

くすんだ太陽が うつる池に

息づく月が うつる湖にも

ぼくは きみの名を書く

 

地平線までつづく はたけに

小鳥たちの つばさに

木かげの 水車にも

ぼくは きみの名を書く

 

夜明けの 息吹に

海にただよう 船に

とてつもなく 高い山にも

ぼくは きみの名を書く

 

やわらかで 軽やかな雲に

あらしのような 汗に

メランコリーな 雨にも

ぼくは きみの名を書く

 

きらめく すべての物に

色とりどりの 鐘たちに

まことの姿の 肉体にも

ぼくは きみの名を書く

 

めざめたばかりの 小道に

広い広い 道路に

人のあふれる 広場にも

ぼくは きみの名を書く

 

ともされた ランプに

きえてしまった ランプに

占領されてる 秘密の家並みにも

ぼくは きみの名を書く

 

ふたつに切られた果物に

ちいさな部屋の 鏡に

古い貝殻のような ベッドにも

ぼくは きみの名を書く

 

くいしんぼうの 優しい犬に

ぴんと立っている 耳に

ぶっきらぼうな 足にも

ぼくは きみの名を書く

 

扉のそばの トランポリンに

つかい古された 家具に

祝福された 明かりの列にも

ぼくは きみの名を書く

 

調和のとれた 肉体に

友だちの ひたいに

さしだされた 人々の手にも

ぼくは きみの名を書く

 

びっくりした女が写る 窓ガラスに

待ちつづける 女のくちびるに

用心深い 沈黙にも

ぼくは きみの名を書く

 

こわされてしまった 隠れ家に

くずれおちた 明かり台に

けだるさに染められた 壁にも

ぼくは きみの名を書く

 

ねがいがすべて 消えてしまっても

ひとりぼっちで なにもかもなくなってしまっても

死が ちかづいてきても

ぼくは きみの名を書く

 

とりもどせた 健康に

きえてしまった 危険に

さだかでない 希望にも

ぼくは きみの名を書く

 

そして ひとつひとつの言葉の力で

ぼくは もう一度 人生に立ち向かう

ぼくは きみに出会うため うまれてきた

ぼくは きみの名を書くきしるすため

 

自由という名を


          🍁     🍁     🍁

絵本の訳を担当されたこやま峰子さんは絵本のあとがきにかえて、「詩の泉のほとりで」という一文を綴っています。その一部を引用させていただきました。

19995月「ハロー・デイア・エネミー」展が東京でスタートした。この展覧会はドイツのミュンヘン国際青少年図書館が企画した戦争をテーマにした絵本展。世界18ヶ国、83冊のなかにエリュアールの一編の詩が絵本になっていた。

「自由」という詩は第二次世界大戦中、フランスがドイツに占領され、レジスタンス運動のさなかに書かれたもので、『詩と真実、1942年』の中で発表された。

この詩はエリュアールの二番目の妻ヌーシュに捧げた愛の歌。ここでいう「きみ」はアルザス生まれの貧しい踊り子ヌーシュのことだけれど、単なる、愛の歌に終わらせず、彼が求めてやまない自由を全人類的な愛に重ね合わせて思いを綴ったところに、多くの人々の共感と普遍性があるにちがいない。

              🍁     🍁     🍁

この本は、図書館1階の絵本コーナーで見つけました。絵本としてはめずらしい題名に惹かれて何となく手に取ったのです。そして、その場で次々とページを繰って読み終えてしまいました。

初めて耳にした詩人の名前。彼の自由を渇望する気持ちが力強く響いてきました。息苦しさが増してきたと感じることが多くなってきている昨今、自由が奪われそうで不安になっている自分に気づきハッとさせられたのでした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 顔をのぞかせたフキノトウ | トップ | JRタワーのハッピーフラッグ2... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

」カテゴリの最新記事