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風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

エコ(?)ハウス

2009-08-29 14:31:17 | インポート

5 水俣市は「21世紀環境共生型住宅のモデル整備」地域の選定を受けて、「水俣市エコハウス事業」として7月中に3回の勉強会を行い、後日設計プロポーザルがあり、私も応募しました。

勉強会では「自立循環型住宅への設計ガイドライン」、「住宅性能評価」、「CASBEE-建築物総合環境性能評価システム」、「エコマテリアル」などの話でした。ここ十数年パッシブソーラーを組込んだ設計をして来て、内容の大半は設計に取入れているものです。その中で興味を持って聞いたのは「風が外壁に沿って流れる」ことと「木材の人工乾燥の燃料費が北欧からの輸送費より高い」と言う話でした。これは廃材やペレット、太陽熱などを使って半減している所もあるので、一概には言い切れませんが。

設計プロポーザルの提案書を作成していて「エコハウス」と言う響きが気になりました。提案内容は勉強会に沿っているし、パッシブソーラーはいつも取り組んでいる事なのに「エコ」と言う言葉にどうも馴染めません。                                     子供の頃(半世紀前...)田舎の祖母の家に遊びに行くと、外に井戸があり、飲料水は土間のカメに貯め、かまどで薪を焚き、便所は外の小屋にある自然と一体化したような自立循環型でした。それが50年後の今、電気、水道、ガス、トイレも住まいの中にあり、住宅の環境負荷はどんどん大きくなっています。そういう意味では「エコロジー」(人間生活と環境との調和と共存)は大切ですが、エコロジーを経済(エコノミー)に結び付るのは間違いなような気がします。エコカー減税やエコポイントの買換え廃棄を促進するのは本当は反エコと思います。

馴染めないエコ(?)を考えていて気付きました。エコと言うより「建築と人と環境」は設計を志した当初からずっと自分の中に在ったことです。卒論の日本建築史で古寺仏閣の屋根に引かれたのも、お寺の軒下空間が子供の頃、夏の日陰や雨宿りとして最高の場所だった思いから、軒下や庇下空間にこだわってしまう事や、約30年前、RC造に屋根の2重葺きや外断熱を採用したのも、無駄が少なく設計の工夫で暮らしが楽しくなることがパッシブソーラーに取り組む切っ掛けだったとを改めて認識しました。                        (これまでモャ~と感じてました)


林野長官賞

2009-07-21 22:49:12 | インポート

Photo 二週間ほど前の話でチョットブログとしては不味いのですが、7月8日にYMCA赤水保育園が優良木造施設で林野庁官賞を受賞し、東京の表彰式へ行きました。以前のブログ熊本県賞に続いての受賞です。

受賞は大変嬉しく思いますが、実を言うと赤水保育園の設計段階には非常に厳しい状況があり、実質の設計期間は1ヶ月強の強行スケジュールでした。完成した建物を見ても解り難いのですが、設計者としてはもう少し時間があれば..と思うところも無い訳ではありません。その状況の中で「此処で幼児期を過ごす園児達が大人になった時に、何らかの心の糧になる建物にしたい」との強い思いだけがありました。

先日東京の友人が来て見てくれたのですが、その後メールで、                                           「山の中の保育園を見せてもらいましたが、とても良かったです。
細部に優しい心遣いが感じられました。
専門的な事は分かりませんが、心地良い空間とたたずまいでした。
感動に近いものを感じました。
次の仕事を楽しみにしています。」  

私にとって一番嬉しい言葉でした。


多摩の家

2009-06-17 17:20:51 | インポート

Gai01_5 Gai02_2   12日に引渡しが終わった「多摩の家」です。最後に玄関ドア(チーク)に亜麻仁油のオイルをしつこいほど(5回ほど)塗り込んできました。これから梅雨に入る事と次来るのが何時になるか分らないので。

着工が12月上旬ですから、6ヶ月通ったことになり少し長めの監理でした。第一種低層住居地域、建ぺい率40%、容積率80%、建築協定(外壁後退1.0M)、第一種高度地区と制約が多く、規制ギリギリの計画でしたが、そのお陰で環境の良い地域です。それでも近隣の方の目が厳しいのにはチョット驚きでした。

Nai01_2 Nai02_2 外壁は漆喰とフッ素樹脂塗装鋼板で内壁は霧島シラス塗壁とチップクロス、床は南部栗のフローリングのシンプルな仕上です。SERVEの家具(テーブル、デスク、チェア)も入り、雰囲気も落着いてきました。SERVEのオーナーである友人も見て「新築と思えないほど馴染んでいるね」(良い意味でだよ)と、最近ずっと其処にあったような建築を造りたいと思っているので、嬉しい褒め言葉です。

耐久性の強い材料を使っていますので、時を経て味わいが深まってくれるはずです。この家もOMソーラーが組み込まれていますが、隣家とのプライバシーを考慮した通風、換気用の小窓が多いのがこの家の特徴です。引っ越したばかりの建て主の感想は「とても涼しい」との事です。

約一年間20回ほど東京へ通いました。建築も沢山見ましたが、本も沢山読みました。最初は建築の本ばかり読んでましたが、最近は小説が多く、池波正太郎と村上春樹、変な取合せですが、電車での移動時間が多いので、東京に着くとすぐ3、4冊買い込んでしまいます。電車の中の暇つぶしなのですが、つい夢中になるとコーヒーショップで2、3時間読みふけっていることもありました。そういった時間がもうなくなるかと思うとチョット寂しいです。


軽井沢

2009-06-15 13:52:18 | インポート

Photo_6 6月12日は半年監理した多摩の家の完成引渡しでした。13日に時間が取れたので軽井沢へ行きました。大学時代スキー合宿で何度も通ったのに下りた事は一度も無く、それと軽井沢銀座と言われる避暑地と人混みのイメージに気後れしたこともあって初めて訪れました。

駅前でレンタサイクルを借り散策を始めると、さすが軽井沢と感心せずにはいられません。どこも数百年を経た大きな木々に囲まれ、地面には木漏れ日が差し込む程度の鬱蒼とした森の中に別荘が点在しています。日本得意のミニ開発的別荘はほとんど無く感心すると共に嬉しくなりました。

01_3 Photo_11 最初に脇田美術館と並存する吉村順三設計の脇田別荘に、湿気対策のピロティや地形に合せた弓方の自由な平面、別荘ならではの楽しい仕掛けや工夫が随所にあり、建物のスケールやバランスも素晴らしく期待以上でした。(残念ながら中の見学は出来ず、年一度のシンポジュウムの時だけ見れるとの事) 脇田和さんの作品は様々な色を基調にしながら、どれも色の個性があり魅力的で色彩的センスの良さを感じました。

01_4 02 次にA・レーモンド設計の聖パウロ教会へ、軽井沢の中心に近く人通りも多い一角にあり、丁度結婚式の最中で、残念ながら中は見れませんでしたが、外から見た入母屋のような下屋の高さやと素朴な材料の使い方、そして何より全体的なスケールが良くこれまで写真で感じていたイメージと比べ物にならないほど実物は素晴らしく、大変好感を持ちました。

Photo_12

そこから勘を頼りに吉村順三の別荘を探しました。見たいとの思いが通じたのでしょうか、しばらく行くと写真で何度も見たアプローチの風景が目に止り、行って見るとやはりそこが「小さな森の家」でした。入口は鎖で閉じられているので、少し離れた林の中から眺め、新緑に遮られ全容を見ることは出来ませんでしたが、木々に埋もれた森の家の雰囲気は充分感じられました。

Photo_10 最後に「ペイネ美術館」として移築再利用されているA・レーモンド設計の「夏の家」へ、中心部からはかなり離れていて自転車で息を切らし20分程走ると軽井沢タリアセンと言う園内にあります。入場料金900円(ペイネ美術館入館料込)、ペイネ美術館に入ると女性がほとんど、そう言えばメルヘンチックな恋人達の絵と添えられた言葉が若い女性に人気の絵です。

建物はすこし華奢に見える磨き丸太で組まれ、コルビジェからエラズリス邸の模倣だと抗議されたデザインや空間も、(エラズリス邸に触発された作品と注釈付きであった為、コルビジェと和解)絵の展示の為窓が閉じられていて、肝心の空間の広がりがいま一つ感じ難く、施工のラフさや雨漏りし易そうなディテールにチョット?、しかし70年以上も使い続けてる訳でそのことに敬意を感じます。

以前から一度見たいと思っていた建築はすべて見ました。時間があればもっと沢山あるのでしょうが、仕事の途中の寄り道です。レンタサイクル(軽井沢はレンタサイクル店がすごく多い)を返却し東京へUターン、羽田から帰熊しました。約7時間の軽井沢への旅でした。


丸尾康弘展

2009-06-02 11:54:15 | インポート

Photo_2  多摩の住宅の現場監理と合せて、三越日本橋本店で開催されている木彫「丸尾康弘展」に行きました。丸尾さんは昨年ギャラリー楓で企画展をして頂き、亡き妹の古い友人でもあります。

作品は約50cm程の楠の坐像20点ですが、一点だけ1.0mの女性の坐像が中心に置かれています。この作品の元になった坐像(約50cm)はギャラリー楓が所蔵しています。どれも丸尾さんの人柄が感じられる優しく、憂いを含んだ作品ですが、今回「山に座る」と言う大柄な男性の坐像に引かれる人が多かったと言われていました。確かに見ていると何となくその姿に共感を覚える気がします。

三越6階のアートギャラリーは初めて行きましたが、油絵、日本画、彫刻、陶芸、漆器など5~6の企画展を同時に開催していました。見るとどれも魅力的な作品で当然と言えば当然なのでしょう。

1階ホールでは噺家が「江戸の手ぬぐい」について噺をしていて、「江戸の手ぬぐい」も50点程即売していました。面白いなと思いお土産に数点買ったのですが、帰熊して見せると熊本の「しろつめ」でも買えるよとの事、レトロモダンが流行とは聞いてましたが物も文化も地域性を飛び越えて広がっていることに感心しました。