風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

多摩の家

2009-06-17 17:20:51 | インポート

Gai01_5 Gai02_2   12日に引渡しが終わった「多摩の家」です。最後に玄関ドア(チーク)に亜麻仁油のオイルをしつこいほど(5回ほど)塗り込んできました。これから梅雨に入る事と次来るのが何時になるか分らないので。

着工が12月上旬ですから、6ヶ月通ったことになり少し長めの監理でした。第一種低層住居地域、建ぺい率40%、容積率80%、建築協定(外壁後退1.0M)、第一種高度地区と制約が多く、規制ギリギリの計画でしたが、そのお陰で環境の良い地域です。それでも近隣の方の目が厳しいのにはチョット驚きでした。

Nai01_2 Nai02_2 外壁は漆喰とフッ素樹脂塗装鋼板で内壁は霧島シラス塗壁とチップクロス、床は南部栗のフローリングのシンプルな仕上です。SERVEの家具(テーブル、デスク、チェア)も入り、雰囲気も落着いてきました。SERVEのオーナーである友人も見て「新築と思えないほど馴染んでいるね」(良い意味でだよ)と、最近ずっと其処にあったような建築を造りたいと思っているので、嬉しい褒め言葉です。

耐久性の強い材料を使っていますので、時を経て味わいが深まってくれるはずです。この家もOMソーラーが組み込まれていますが、隣家とのプライバシーを考慮した通風、換気用の小窓が多いのがこの家の特徴です。引っ越したばかりの建て主の感想は「とても涼しい」との事です。

約一年間20回ほど東京へ通いました。建築も沢山見ましたが、本も沢山読みました。最初は建築の本ばかり読んでましたが、最近は小説が多く、池波正太郎と村上春樹、変な取合せですが、電車での移動時間が多いので、東京に着くとすぐ3、4冊買い込んでしまいます。電車の中の暇つぶしなのですが、つい夢中になるとコーヒーショップで2、3時間読みふけっていることもありました。そういった時間がもうなくなるかと思うとチョット寂しいです。


軽井沢

2009-06-15 13:52:18 | インポート

Photo_6 6月12日は半年監理した多摩の家の完成引渡しでした。13日に時間が取れたので軽井沢へ行きました。大学時代スキー合宿で何度も通ったのに下りた事は一度も無く、それと軽井沢銀座と言われる避暑地と人混みのイメージに気後れしたこともあって初めて訪れました。

駅前でレンタサイクルを借り散策を始めると、さすが軽井沢と感心せずにはいられません。どこも数百年を経た大きな木々に囲まれ、地面には木漏れ日が差し込む程度の鬱蒼とした森の中に別荘が点在しています。日本得意のミニ開発的別荘はほとんど無く感心すると共に嬉しくなりました。

01_3 Photo_11 最初に脇田美術館と並存する吉村順三設計の脇田別荘に、湿気対策のピロティや地形に合せた弓方の自由な平面、別荘ならではの楽しい仕掛けや工夫が随所にあり、建物のスケールやバランスも素晴らしく期待以上でした。(残念ながら中の見学は出来ず、年一度のシンポジュウムの時だけ見れるとの事) 脇田和さんの作品は様々な色を基調にしながら、どれも色の個性があり魅力的で色彩的センスの良さを感じました。

01_4 02 次にA・レーモンド設計の聖パウロ教会へ、軽井沢の中心に近く人通りも多い一角にあり、丁度結婚式の最中で、残念ながら中は見れませんでしたが、外から見た入母屋のような下屋の高さやと素朴な材料の使い方、そして何より全体的なスケールが良くこれまで写真で感じていたイメージと比べ物にならないほど実物は素晴らしく、大変好感を持ちました。

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そこから勘を頼りに吉村順三の別荘を探しました。見たいとの思いが通じたのでしょうか、しばらく行くと写真で何度も見たアプローチの風景が目に止り、行って見るとやはりそこが「小さな森の家」でした。入口は鎖で閉じられているので、少し離れた林の中から眺め、新緑に遮られ全容を見ることは出来ませんでしたが、木々に埋もれた森の家の雰囲気は充分感じられました。

Photo_10 最後に「ペイネ美術館」として移築再利用されているA・レーモンド設計の「夏の家」へ、中心部からはかなり離れていて自転車で息を切らし20分程走ると軽井沢タリアセンと言う園内にあります。入場料金900円(ペイネ美術館入館料込)、ペイネ美術館に入ると女性がほとんど、そう言えばメルヘンチックな恋人達の絵と添えられた言葉が若い女性に人気の絵です。

建物はすこし華奢に見える磨き丸太で組まれ、コルビジェからエラズリス邸の模倣だと抗議されたデザインや空間も、(エラズリス邸に触発された作品と注釈付きであった為、コルビジェと和解)絵の展示の為窓が閉じられていて、肝心の空間の広がりがいま一つ感じ難く、施工のラフさや雨漏りし易そうなディテールにチョット?、しかし70年以上も使い続けてる訳でそのことに敬意を感じます。

以前から一度見たいと思っていた建築はすべて見ました。時間があればもっと沢山あるのでしょうが、仕事の途中の寄り道です。レンタサイクル(軽井沢はレンタサイクル店がすごく多い)を返却し東京へUターン、羽田から帰熊しました。約7時間の軽井沢への旅でした。


丸尾康弘展

2009-06-02 11:54:15 | インポート

Photo_2  多摩の住宅の現場監理と合せて、三越日本橋本店で開催されている木彫「丸尾康弘展」に行きました。丸尾さんは昨年ギャラリー楓で企画展をして頂き、亡き妹の古い友人でもあります。

作品は約50cm程の楠の坐像20点ですが、一点だけ1.0mの女性の坐像が中心に置かれています。この作品の元になった坐像(約50cm)はギャラリー楓が所蔵しています。どれも丸尾さんの人柄が感じられる優しく、憂いを含んだ作品ですが、今回「山に座る」と言う大柄な男性の坐像に引かれる人が多かったと言われていました。確かに見ていると何となくその姿に共感を覚える気がします。

三越6階のアートギャラリーは初めて行きましたが、油絵、日本画、彫刻、陶芸、漆器など5~6の企画展を同時に開催していました。見るとどれも魅力的な作品で当然と言えば当然なのでしょう。

1階ホールでは噺家が「江戸の手ぬぐい」について噺をしていて、「江戸の手ぬぐい」も50点程即売していました。面白いなと思いお土産に数点買ったのですが、帰熊して見せると熊本の「しろつめ」でも買えるよとの事、レトロモダンが流行とは聞いてましたが物も文化も地域性を飛び越えて広がっていることに感心しました。