風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

八ヶ岳高原音楽堂の椅子とSURVEタイプ14

2014-06-23 18:21:00 | インポート

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4月16日~19日 仕事に追われて時間が無いと言いながら、OMソーラーともくよう連共催「ゆるがないデザインを学ぶ~パッシブデザインを継承する」八ヶ岳周辺のパッシブデザイン(主にOMソーラー)の別荘見学会、交流会、パネルディスカッションに行きました。

17日の集合が茅野駅13時集合だったので前日夕方東京へ行き、立川に宿泊、10時発特急(一時間半)で向いました。みどりの窓口で茅野「ちの」を「かやの」と思い込み、通じなかったことには焦りました。

中央線を松本方面まで利用するのは2度目だと思いますが、九州と違う植生の山並が面白くずっと眺めていました。茅野駅には茅野市民館(図書室・音楽ホール・美術館 古谷誠章氏設計)が隣接しているので一時間程早めに着いて見学、後で藤森照信氏が茅野市出身で、「神長官守矢史料館」や茶室(高過庵)が在ることを知りましたが、後の祭り、朝から「立川市役所」(野沢正光氏設計)を見学したのでしかたありません。(次回があればぜひ見てみたい)

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17日午後は別荘を4件見学、参加者が214名、大型バス4台で補助席まで使う盛況でした。小さな別荘に代わる代わる何十人も来るので周りの人は驚いたと思います。別荘地としては比較的新しいのか、軽井沢のような森の見事さはなく、高く伸びたカラ松林の華奢さが印象に残り、向かう途中魅力的な古民家や蔵が多く残ってたのもとても気になりました。

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夜は星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳(イタリアの建築家 マリオ・ベリーニ設計)に宿泊、各宿泊室はゆったり造られていて快適ですが、案内表示が少なく迷路のようでした。バブル時の建物なので何処と無く過剰な雰囲気と今との時代のズレを感じました。室の窓から以前話題になったたまご型のガーデンチャペルが見え、見学しようと思ったのですが早朝の出発と土曜のみの見学可とのことで諦めました。

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18日は朝から3棟見学し、八ヶ岳高原音楽堂ホールで、益子義弘氏、野澤正光氏、秋山東一氏、堀部安嗣氏、小澤文明氏によるパネルディスカッションに参加しました。OMソーラー生みの親の奥村昭雄氏、永田昌民氏が亡くなられ、他の方たちも高齢になられて来て、これからパッシブデザインを次世代へ引継ぎ、より発展させられるかが問われています。時代は省エネ化でパッシブ建築は注目を集めていますが、しかしOMソーラーのようなパッシブ技術は商品化や経済的効果とはある意味逆の発想です。小さなエネルギーで暮らし易くすると言うのは個人には魅力ですが経済的魅力には乏しいのでしょう。パッシブ技術は携わる者の建築を探求する気持が支えるものなのかもしれません。

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ディスカッションの間、吉村順三氏設計の「たためる椅子」に座っていました。座り心地の良さに改めて感心しました。繰り返し改良を加え完成させた椅子とは聞いていて、何度か座ったことはあるのですが、長時間座ったことは初めてで良さを再認識しました。今事務所隣のギャラリー楓で「サーブ家具と涼しげな器」展を開催しています。サーブのタイプ14も長く座ることで良さが解る椅子です。価格は安くはないのですがギャラリーで腰掛けてた人がほしいと言ってくる椅子です。椅子としては傑作の一つだと思います。しばらく前からTUTAYAのCMで宮沢りえが腰掛けて語りかけるCMに使われています。http://www.youtube.com/watch?v=Prk45V7mDJI

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「ゆるがないデザイン」は「ここち良さ」につながると...思います。


フードバレーアグリビジネスセンター

2014-02-04 21:04:30 | インポート

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熊本県の事業でフードバレーアグリビジネスセンター公募プロポーザルで風+丸岡共同企業体で応募し、設計者に特定されました。

現在、熊本アートポリスの天草市庁舎設計の地元協力事務所として、ワークショップ中心の協力を行っています。(旧天草2市8町の出前WSなど) メインアーキテクトである山本理顕設計工場も厳しい状況ながら全力で取組まれており、地元協力事務所チームも一緒に頑張っています。長丁場の取組みなので地元チームは夫々自らの仕事を頑張りながら対応する必要があり、今回プロポーザルに特定されることが出来てホッとしました。

農業が盛んな熊本県南の農産物の品種改良や高付加価値化、6時産業化などを支援するビジネスセンターとして新設される研究所と事務所機能を併せ持つ施設です。

八代市鏡町鏡村にあるい業研究所の敷地内に建設されます。い業研究所は全国一の井草生産地である八代地方の井草品種の改良や製品化支援を行う研究機関です。

非常に短い設計工期なので、集中的な要望聞き取りや提案が必要になります。チームを組んだ丸岡さんは大ベテランで実施設計力は熊本一ではないかと私は思っています。一緒に取組めるので楽しみです。

プロポーザルでの評価得点を見せてもらいましたが、(公表されてますので県で見れます)僅差での特定でした。参加された方はとても残念だったと思います。一昨年の南小国村庁舎プロポーザル決戦投票で一票差で次点だった時、暫く仕事に力が入りませんでした。その時の思いを思い出すと、他の人の分まで頑張って良い建築を設計しなければならないと思います。


天草市庁舎プロポーザル

2013-09-30 19:48:48 | インポート

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9月22日(日)天草市民センターであった熊本アートポリス 天草市庁舎公募プロポーザル二次審査に行きました。

公開二次審査は5者 新居千秋都市建築設計 ㈱都市環境建築設計所 梓設計+SUEP 現代計画+野沢建築工房JV 山本理顕設計工場です。12:30~18:00近くまで、各者の説明と質疑、全体質疑、最終審査と講評まで6時間の長丁場で、熱のこもった内容で結果山本理顕設計工場が最優秀賞になりました。

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最優秀賞案は最も魅力的であり、最も難しい建築だと思いました。建物内部は行政機関ですが、外部は地域に開放されています。市庁舎でありながら地域のつながりをつくり出すクラブハウスであり、特産品アンテナショップなり、祭りや催しの場にもなる。そして観光拠点にまでつなげるこれまでにない新しい試みに挑戦する市庁舎です。

地域住民と行政が一緒になってこの新市庁舎に夢と愛情をそそぎ込めば、天草のシンボルとなり、地域間のつながりを強め、観光の目玉にもなる大きな魅力を持っています。ただ開放された坂道や屋上広場は実際の運営や管理の問題などの検討とシュミレーションを確りしないと使いこなせない事態も考えられます。

他の提案も庁舎と市民の関わりをコンセプトにしていましたが、最優秀賞案ほど全面に据え挑戦的な案はありませんでした。ある意味この提案を選ぶ勇気を試されていて、それを選んだ審査員の思いに熱くなるものを感じました。

今回のプロポーザルは全国公募と共に地元協力事務所も公募され、全国公募には東京+地元事務所での応募もあったのですが、二次審査に残らず、結局地元応募の私達チーム 風+IGA+廣田都市・建築+フジモトが協力事務所候補となりました。最終審査後お見合いとなり、両者が納得の上共同企業体を組むこととなりました。

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天草の新鮮な魚を食べたいと生簀のあるお店で(愛嬌のある浮きのくまもんが浮かび)、海鮮どんぶりを食べました。(それも昼夜2回も)


「建築を考える職人」に

2013-05-06 15:02:19 | インポート

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5月5日昨年に続き山鹿・湯の端美術会に行った。昨年工事中だった「天聴の蔵」の修復も完成し、大小3つの蔵で絵画や、ワークショップ、映像のインスタレーションなどが展示されていました。「おお蔵」では絵(野田竜太郎)と映像(畠山浩史)とピアノ演奏会(ながふちなほみ)「展覧会の絵」の演奏によるコラボレーションがあり、

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「もと蔵」ではこの酒蔵に関わる昭和初期の写真映像が次々に映し出され、空間を切取る浮んだパネルに切り取られながら、土壁にも映り込む、その不思議な立体感で人がその中に立つと時が混在したような感覚がある。

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今年2月16日に「阿蘇キャンプ60周年記念事業」があり、3月19日はその実行委員の反省会 、20日は会員交流会のワークキャンプで15人程で雨の中カッパを着て、側溝に溜まった土の除去を行った、午後からはYMCAが管理する的石(小学校跡地)にブルーベリーの植樹。

阿蘇キャンプメインホールも改築15年を経て風景に馴染んできた。YMCAの方から「建物は何年も残こるので素晴らしい仕事ですね」と言われ、「この建物にはその分のエネルギーが要りました」と答えてしまった。思い出すとこの建物は持てる力を全て注いで取組んだことと経営的に厳しかったことが思い出された。

建築設計に携わって40年近く経て、改めて建築は奥深いと思う。

成功や失敗、経験を積み重ねながら建築設計の質は益々高まっていくし、この年になっても建築への興味は尽きない。新しい設計に取組むと気持は熱くなり、ワクワクしてくる。

今も図面は自分で描きたいし、描いていると完成する建物の細部までが自分の体の一部になって来るような気がする。ディテールを工夫しながら積上げていく作業は楽しく、手書き時代の楽しさも格別だったけど、老眼が進んでも描けるCADもあり難い。

古建築と最新建築両方にも興味は尽きず、まだまだ建築の知らな部分も多くあり、用事で遠方に行けば建築を見て歩き回り、本を読む。

以前日本建築家協会の会員でもあったけれど10年程前に退会した。建築への思いや質の高さを求める設計者の集まりは建築家協会しかないと今も思っている。

しかし10年ほど前から自分が求めている建築を考えていると、自分自身が建築家になりたいと思っていないことに気付いた。

オリジナリティやデザイン性の高い建築ではなく、シンプルで無駄がなく、使い易く、メンテナンスがし易く、光熱費が少なく、地域に馴染み、建て主や使う人が喜べば充分であり、その方が嬉しい。その為に力を注ぎたい。ただそれだけである。

「一建築を考える職人」になりたかったんだと最近よく思う。

時々講師や人前でプレゼンをする機会も多いけれど、実はあまり得意ではない。引き篭って目の前にある建築の設計を考え、図面を描き、完成へ向けて現場監理をし造り上げるのが何よりも好きであり、楽しい、これからもそんな職人でありたい。