風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

冬のミルクロード

2006-01-26 22:38:37 | インポート

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南小国の現場へ行く時は必ずと言っていいほどミルクロードを通ります。雪でチェーン規制がされ、二重の峠に通行止めの柵があっても。

雪道の怖さは知っているのですが、学生時代東京を深夜出て長野や新潟のスキー場へ朝着く為、普通乗用車の屋根にアルペン競技用の竹ポール(最近のポール樹脂か何かで根の所が自由に倒れ、元に戻りますが、昔は竹を雪に突刺してました。―竹をなぎ倒すように滑るのでアバラ骨を骨折する部員が年に1,2名、足の骨折は2,3名―これはポールのせいではありませんが)を山のように積んで雪道を走っていましたので、熊本の雪ではほぼOKです。ただし夜は走りません(道巾が判らず危険です)

ミルクロード(阿蘇外輪山西尾根沿い―牛乳を運ぶ道の呼名)を走りながらの景色は素敵です。昨年から天草、阿蘇方面の現場の為、時間は掛かりますが熊本の自然の豊かさを再発見しています。写真は順番に西の端辺原野、阿蘇谷越の阿蘇五岳涅槃像、大津方面に沈む夕日です。

途中から国道212号線へ入り南小国・小国方面に行きますが、その途中東側に見える瀬の本高原、九重の山々も綺麗ですね。まだ良い写真が撮れていません。

Photo_13 おまけではないのですが、南小国から黒川温泉に行く途中、蔵のある民家があります。母屋自体も土壁の良い建物ですが、この蔵が気に入りました。軒の出の深い屋根は元からある蔵に後で付け加えたものなんですね。でもなかなかバランス良く造ってあり、景観のポイントになっています。


今日は建築で

2006-01-18 20:46:04 | インポート

HP管理人から「最近ブログに建築の話題がないね」と言われました。建築は計画、設計、工事監理があり、計画の時はイメージを模型で表現するので良いのですが、設計、工事中は細かく紹介しても遅々として進んでいない感じですし、面白みもあまりないので、つい周辺の話題へそれて行きます。書いていても楽しいし、読まれる方もその方が良いのかなと思いながら。

しかし、設計事務所のブログなので、今日は建築でいきます。

Photo_4 工事中の建物を2棟紹介します。熊本市の隣、益城町の秋津川公園に建つ公衆便所とみなみYMCAの保育室増築です。公衆便所は10年程前は年に3、4棟設計していましたが、最近は機会もなく久しぶりです。内容的にはコンパクトな建物ですが、トイレとしての機能性を満足させながら、アイデアや個性的な空間づくりが出来る楽しい設計の一つです。

Photo_5 Photo_6 Photo_7 秋津川の写真の左奥に建ちます。(駐車された車の先)3つのコンクリートの箱(天井なし)の上に木の腕木を斜めに取付、木造の屋根を浮かせています。浮いた屋根と壁の間は開いていて、そこから採光と換気をします。(部分的に雨が降込まないよう透明のパネル付)

壁は杉小幅板のコンクリート打ち放しで、コンクリート打設時(流し込む)に壁の巾しか無く、出来上りも一発勝負になるので失敗が許されないシビアな施工になります。コンクリートを綺麗に施工する秘訣は、設計した本人が念力を込めることしかなく、当日は作業着を着て施工に参加します。(型枠をタタキ、竹の棒でツキます。-古いやり方ですが手作業に勝るものなし) 出来具合の結果は数日して型枠をはずした時しか判りません。コンクリートは硬化時化学反応による熱を発生しますが、その熱がコンクリートに不思議な力を与えてくれるようで好です。(セメントはエジプト時代から使われていたのですが、なぜ硬化するのか科学的に解明はされていないと言います)

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みなみYMCAは新築オープンして2年足らずですが、スポーツクラブに併設された体育英語幼稚園が人気があり、2、3才児までが対象だったのですが年長になっても引き続き利用したいとの要望で急遽保育室を増築しています。本館はRC+S造ですが、こちらは地盤下に電気、給排水のインフラが埋設してある為木造です。幼児期は出来れば木造の中で生活させるのが良いように思います。キズが入ったりヒビが入ったりしますが、古びたり破損する事がこころに大切なものを与えてくれる気がします。(・・・我家はコンクリートだったのですが)

小さな建物ですが、出来上るのを楽しみにしています。


Good Time Charlie

2006-01-11 23:23:17 | インポート

Photo Photo_1 今日、チャーリー永谷さんの本「My Name is Good Time Charlie」(熊日出版)を送って頂きました。(サイン入です)

カントリーミュージックを50年歌い続けておられ、毎年阿蘇のアスペクタで開催されるカントリーゴールドは、本場アメリカからカントリーミュージシャンが出演し、全国から2万人のファンが集ります。(私は行った事がありません―スミマセン)

昨年は県民栄誉賞を受賞され、熊本にカントリーミュージックありと言える音楽文化を作られたミュージシャンです。

実は写真(サイン右 Good Time Charlie)のお店の内装設計は、以前勤めていた設計事務所所長がカントリー好きで、永谷さんとも懇意だった為、私が25年前に設計を担当したもので、今も当時のまま使われています。ステージ境の幌馬車風飾りや西部劇では欠かせない酒場へ入る時のスイング扉など、マカロニウエスタンが流行で見てはいたのですが、詳細が判らず、デザインを求めて西部劇の映画や雑誌を捜したのを思い出しました。ただ、私自身がカントリーファンではなかった事(嫌いではありません)が残念でした。

一昨年、事務所のスタッフとお店へ寄った時、エレベーター付近に何故か背広姿の人達が居り、お客さんもそれほど多くなかったのですが、ステージ近くのテーブルに4人座られ、廻りには誰も居ません。ステージが終わって帰られたのですが、後でチャーリーさんから「そこに居られたのは皇族の方ですよ」と言われ、驚くと同時になぜエレベーター付近に居た(SP)のか判りました。

Photo_2 本はまだ少ししか読んでいませんが(ゆっくり読みたいと思っています)、書き出しにチャーリー永谷さんは「大好きなカントリーミュージックを歌い続けて50年。思えば、長いようで短い、ドラマに満ちた時間の推移でした。わたしは、決してプロのアーティストではなく、ただ、好きな歌を、心温かいアメリカ文化を、無我夢中で取り込み、それを精いっぱい表現してきただけの、わがままな一徹者だと思っています。」と語られています。若輩の私が言うのは失礼なのかも知れませんが、ああ永谷さんらしいなと思うともに追い求めてきたカントリーミュージックへの謙虚な姿勢と長く続けることの難しさや苦しさを感謝の気持にされているその言葉に感動しました。

私も建築に惹かれ、建築を追い求めているのですが、何時かこのような気持になれる時が来れば幸せだなと思いました。

以前聞いた時の話しですが、チャーリーさんお風呂では日本の演歌も歌うそうで、曰く「カントリーミュージックはアメリカの演歌ですよ」  ・・・・そ、そうなのか。


続 島崎そぞろ歩き

2006-01-06 20:34:12 | インポート

1月5日仕事始め、今日6日は朝から雪がちらほらあまり天気も良くないので、事務所で相談受けている2つの建物の計画をしていました。ブログに載せる画像も無いので、2日のブログで書いた峠の茶屋の会話が気になり、熊本弁に替えてみました。

「御婆さん、ここをちょっと借りたよ」

「あらー、いっちょん気付きまっせんで、すんまっせん」(はい、これは、いっこうに存じませんで)

「だいぶ降ったね」 

「悪か天気で、ほんにおおごつだったですな。わあエライ濡れとらす。いま火ば焚きますけん乾かしてはいよ」(あいにくのお天気で、さぞ御困りで御座んしょ。おおおおだいぶお濡れなさった。今火を焚いて乾かして上げましょ)

「そこをもう少し燃しつけてくれれば、あたりながら乾かすよ。どうも少し休んだら寒くなった」

「はい、いま焚きますけん。お茶でん一杯どぎゃんですか」(へえ、ただいま焚いて上げます。まあ御茶をひとつ)

とこんな感じだったでしょうか、漱石先生実話を元に書かれたのであれば、熊本弁に戸惑いながらの会話だった気がします。

P1000855_1 峠の茶屋と鎌研坂の間に漱石句碑「木瓜咲くや漱石拙を守るべく」があります。「拙を守る」と言うはもっとも好んだ言葉で、生涯持ちつづけた生き方の基本との解説(半藤一利)があります。「世渡りが下手なことを自覚しながら、それをよしとしてあえて節を曲げない」ことらしく、草枕の書き出しはまさに「拙を守る」ことへのつぶやきのようです。

 

P1000862 P1000863 鎌研坂を下り、左手へ歩くと「西の武蔵塚」があり、熊本には阿蘇へ向かう57号線沿いの「武蔵塚」と2ヶ所宮本武蔵の塚があることになります。こちらはあまり有名でなく、私も散策していて最近知りました。隣にはカソリックの墓地もあり、不思議な組合わせだなと思いつつ、まだ他にも発見がありそうで、また歩こうと思う「島崎そぞろ歩き」です。


鎌研坂-峠の茶屋

2006-01-02 23:55:31 | インポート

P1000849  明けましておめでとうございます。

 最初構造偽装の話を書こうとしていたのですが、年初からこの話題はあまりにも相応しくないので止めました。

暮れから正月三が日はどうしても食べ過ぎてしまい(何時もより食材が贅沢)体重も1,2kg増えてる気がします。我家は2日にクミコの実家(島崎)へ年始に行きます。

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昼食後食べ過ぎと運動不足解消のため島崎周辺を一人で散策に出かけました。島崎周辺は史蹟も多く(10月23日ブログ)、熊本には珍しい坂道の町なので意外な発見があり好きな処です。

実家から坂を登って荒尾橋へ出て、そこから鎌研坂へ、この坂は夏目漱石が草枕で「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ、情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくこの世は住みにくい」と有名な冒頭の書き出しの山路です。振り返ると熊本市内が見渡せ、自動車道に整備された部分もありますが、草枕当時と同じ道が続く処もあります。気温は低いのですが山路を歩いていると少し汗ばんで暑く感じて来ます。鬱蒼とした木々の中を歩いていると、以前父から聞いた玉名郡玉東町辺り(父の実家)から、朝暗い3時頃出て5,6時間掛け熊本市内まで歩いて行商に来ていた人の話を思い出しました。(この路を使っていたのかもしれません)

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「おい」と声を掛けたが返事が無い。峠の茶屋での一文ですが今は当時の建物はありません。草枕のここの所を読み直すと店のお婆さんとの会話があります。しかしきれいな標準語で書かれています。熊本弁の強いHP管理人(峠の茶屋より熊本市内近くに住んでいた)から考えると、峠の茶屋での会話はオカシイ、本当はヒドイ熊本弁だったはずです。漱石先生熊本弁で書いたのでは、文学的に合わないと思われたのでしょうか。(全然違った草枕になった気がします)