風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

神戸女学院大学

2017-10-12 14:32:59 | 日記

グランド

Googleの航空画像を見ると、宅地化された周辺街並みの中に鬱蒼とした森の中にゆったり配置された校舎と広大な神戸女学院大学キャンパスがあります。

1933(昭和8年)にW・M・ヴォーリズによって設計されたスパニッシュ様式の校舎が完成、岡田山キャンパスに移転しています。現在も当時の文学館、理学館、図書館本館、音楽学部1号館、講堂・チャペルを含む総務館が使われています。建物の配置は移転時と大きく変わってないように感じます。特に中庭を囲む校舎群はヴォーリズ建築で必ず紹介される建物です。

写真では何度も見ていた校舎群です。様式的な建築なので近代的和洋折衷建築と思っていましたが、実際この中庭に立ってみると中庭と建物のスケール感がとても良く、夫々の校舎のデザインも洗練されたものを感じます。和洋折衷ではなく洗練されたスパニッシュスタイルデザインだと思いました。1階部分にタイルを張ってありますが、貼り方のデザインががより魅力を引立てています。

 

中庭北側の講堂内部を見せてもらいました。この建物も写真では見ていましたが内部空間は予想以上に素晴らしいものでした。包み込むような柔らかな曲線の天井と連続する窓から入る光が、心までも包み込まれるような雰囲気をもっていて、この講堂は秀逸です。ここに腰かけてパイプオルガンの演奏を聴いてみたいと思いました。

当時のヴォーリズ建築事務所でも素晴らしい才能を持った設計者が担当されたのだと思います。

渡り廊下と外部の交差する通路のデザインもとても魅力的で、タイルの貼り方も素敵です。2014年国の重要文化財になったことも頷けます。神戸女学院大学はヴォーリズ建築の傑作の一つだと思います。

今回、最も美しいと言われる有名な図書館は見れませんでしたので、いつか見学ツアーに申込み再訪したいと思います。

ヴォーリズ建築には現代建築的な派手さはないのですが、訪れてみると深い感銘を受けます。建築も質が高く、阪神淡路大震災で被災修復され80年経た建物が今もこんなに魅力的であることに感銘を受けます。何か大切なものが宿っているような気がしました。

来年「ヴォーリズin熊本展」を開催する準備の訪問でしたが、素晴らしい建築との出会いがありとても有意義でした。


関西学院大学

2017-10-06 11:43:57 | 日記

 

 

29日午後、最後の目的地である関西学院大学西宮上ケ原キャンパスを訪問しました。阪急神戸線西宮北口からタクシーで15分程の丘陵地にあり、ここではヴォーリズ建築の写真パネル(38点)の借用と確認が目的です。

初めての訪問ですが、門から入ると正面に時計台校舎が見えます。近づいて行くと中央に広々とした芝生広場があり、その周りにスパニッシュスタイルの校舎が取り囲んでいます。待ち合わせ時間まで30分程あったのでキャンパス内を見学させてもらいました。

広大なキャンパスにスパニッシュスタイルの建物がゆったりと配置され、校舎は最高4階建としてある為圧迫感も少なく、多くの樹木と庭がバランスが良く、学生生活の理想的な環境が作られています。

なるべく学生は映らないようにしていますが、実際は行き交う学生はとても多く活気があります。これほど伸びやかで綺麗な大学は初めて見しました。木々の手入れも大変だと思うのですが大木もあり素晴らしいです。

先程の芝生広場を取り囲むように造られた建物と正門廻り、外国人の住宅10棟がヴォーリズ建築です。1929年(昭和4年)に建設され88年たっています。中央芝生広場と校舎群は背景に見える甲山の景観は、「ヴォーリズが設計者としてのみではなく、伝道者そして教育者として理想とするキリスト教学校のあるべき形の具現化として完成されたものとなっている」(パンフレットより)と説明されています。

門から中央広場に歩いて来た時、何とも言えない安心感と気持ちの高まりを感じます。ここで学ぶ学生も同じ気持ちになるのではないかと思います。キャンパスの中心に大きな広場を設けることで、大学の一体感や愛着、親近感が生まれる効果を持っていることに気付かされます。

大きなホールとレストランがあり、卒業生の結婚式も出来るそうです。

時計台校舎は現在記念館になっていて、関西学院大学の歴史や資料が飾ってあります。校舎移転時のジオラマが展示してあり、熊本展への貸し出しもOKとの事でしたが、運搬中の損傷が心配でお借りするのは難しいと判断しました。

中央芝生広場では学生と混じって、近隣の子供たちもボール遊びをしています。周辺地域の人にとっても親しみのある自慢の大学なのでしょう。

 

西宮上ヶ原キャンパスから歩いて5分ほどのところに西宮聖和キャンパスがあります。移動の途中スパニッシュスタイルのマンションやアパートを多く見かけます。立面や丸窓のデザインを見ると関西学院大学の一部かと勘違いしてしまいそうです。これだけ地域に親しまれ、溶け込んでいる大学も珍しいと思いました。

このキャンパスにも1932年(昭和7年)築のヴォーリズ建築があり、聖和キャンパスのシンボルとなっています。1階に在るダッドレーメモリアルチャペルは簡素な造りですが、親しみを感じるチャペルです。

聖和キャンパスの隣りには神戸女学院があります。まるで一緒の学校かなと思わせる雰囲気で繋がっています。今年国の重要文化財に指定されました。女学校と言う事もあり見学日が決まっていて申込みが必要です。今回関西学院大学の学長さんと一緒だったので少しだけ案内して頂きました。次のブログで紹介したいと思いますが、久しぶり建築に感動しました。


W.M.ヴォーリズと大同生命

2017-10-03 19:30:50 | 日記

 

ハイド館(旧幼稚園)

ヴォーリズ邸(現ヴォーリズ記念館、兄弟社寮を改造)

9月28日午後豊郷小学校から近江八幡の近江兄弟社を訪問しました。近江八幡に来たのは2度目です。(2011年2月2日のブログ)その時はヴォーリズ記念館は催しがあり内部見学は出来ず、近江兄弟社ヴォーリズ学園も外から眺めただけでした。それで周辺のヴォーリズ建築や重要伝統的建造物群保存地区の町並み、豊臣秀次が作った運河周辺などゆっくり散策、落ち着いた町並みと運河の緩やかな曲線に寄り添うような建物景観に心惹かれました。そんな中にヴォーリズ建築のコロニアルやスパニッシュスタイルのデザインがあり、日本伝統の街並みとヴォーリズ建築の共存を大切にしている近江八幡に不思議な魅力を感じました。

近江八幡の街並みからJRの駅が離れています。明治時代の頃出来たと思うのですが、駅を古い町並みまで引き込む計画もあったそうですが、駅が近いと若い人が町を離れていくことを心配して離れたところに造ったとのことです。そのお蔭でしょうか保存地区には高い建物がなく、伝統的な日本の街並みが多く残っています。

W.M.ヴォーリズが日本に来た時の木製のトランクが飾ってあります。頑丈に見えますが意外に軽いです。(中身が無ので)このトランクは近江八幡駅に届くはずが北九州の八幡に行ってしまい時間が経ってから届いたと言うことです。

幼稚園の時使っていた籐の子供椅子、とても軽くて小さい子供でも自分で持ち運べるようになっています。またおもらししてもすぐ分るので、子供たちの衛生にも良かったとのこと。

講堂兼運動室

 ヴォーリズ学園礼拝堂

 

屋内体育館

ヴォーリズ学園には中学校、高校があり、多くの生徒が行き交っていました。本館の最上階には礼拝堂、最近できた木造屋根の体育館、他にも多くの建物が在りコンパクトに纏まっています。高校は普通科と国際コミュニケーション科があります。

  大同生命本社

 2階ホール

29日は午前中に大阪中之島にある一粒社ヴォーリズ建築事務所を訪問、原図の借用のお願いや展覧会の協力をお願いしました。そしてすぐ近くの大同生命本社ビル(ヴォーリズ事務所設計)を訪問。NHKの朝ドラ「あさが来た」のモデルになった「加賀屋と広岡浅子」の展示を見学。

広岡浅子の娘婿、広岡恵三氏は加島銀行、大同生命、大阪電気軌道の社長になっています。自宅設計をヴォーリズに依頼し、そのとき妹の一柳満喜子と運命的な出会いをしますが、一柳家は子爵の家柄で当時外国人との婚姻は認められなかった為、華族から平民戸主になって結婚されています。周辺の反対もあったそうですが広岡浅子が結婚を強く後押しして結ばれています。一柳満喜子は9年のアメリカ留学経験があり聡明な女性で津田塾大学を開いた津田梅子は満喜子に後を託したいと思っていたとのことです。ヴォーリズの義兄となる広岡恵三との関係から大同生命本社ビルなど大阪の商業建築を多く手掛けますが、どの建物も評価がとても高かったようです。広岡浅子はキリスト教の洗礼を受け、YMCAやヴォーリズ建築とも強く繋がりが出来ています。

浅岡浅子がキリスト教の洗礼を受けた大阪教会は大同生命本社から5分ほどのところにあります。重厚なレンガ造りで圧倒的な存在感があります。周辺に建物が建て込んで来ていて、知らなければ通りすぎてしまうかもしれませんが、教会正面横から入ると正面に鐘楼が見え、一瞬イギリスの教会に迷い込んだような気分になりました。

1922年(大正11年)にヴォーリズ事務所設計で建設、1995年の阪神・淡路大震災で半壊し、復元工事の上登録有形文化財になっています。周辺に建物が無かった頃は全景が見え、その存在感は凄かっただろうと想像できます。急な訪問で残念ながら葬儀があっていたため内部は見れませんでしたが、いつか必ず見に来たい建築でした。