風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

九州大学YMCA名島寮

2015-05-01 09:40:18 | 日記

先週土曜日、九州大学学生YMCAの建物アドバイスに福岡市の名島寮を見に行きました。YMCAは都市YMCAと学生YMCAがあり、各大学に学生YMCAの寮があります。熊本は熊本大学YMCA花稜会があります。

数日前設計図の資料を頂いて分ったのですが、設計者はW・M・ヴォーリズです。建設されたのは昭和30年前後のようで築60年経っています。

3面道路に囲まれ、南西側は多々良川の河口に面し、約300坪のゆったりした環境に境界には塀も無く伸びやかに建っています。平面形状は十字形で1階部分が食堂兼ミーティングルームなどの共有スペースで2階が寮室になっています。

平面、立面のデザインは時代的にコルビジェのユニテダビダシオンの影響が感じられ、2本の柱から2階がキャンティレバーで持ち出され、部分的にピロティになっていることで開放感と伸びやかさを感じさせます。

60年前の建設当時、YMCAの学生寮で大学生活を通し、共同生活と聖書研究の場として、建築にも精神的な思いを込められたのだと思いました。

入寮数は10名強(当初20名強)でコンパクトな寮ですが、協同の炊事場とミーティングルームが中心にあり、寮生同士のコミュニティがとても緊密な気がしました。最近の個人プライバシーを優先した寮にする傾向にありますが、昭和の自治学生寮らしい雰囲気は温かさを感じました。

廊下の天井が折れ天井になっています。音響のことを考慮したのだと思いますが、チョットしたアクセントにもなっています。

見ていると多くの学生が過した時間と共に建築に馴染んだ建具や家具などが、懐かしさや郷愁を感じさせます。このような建物が時代の要請で失われていくものかもしれませんが、精神性や大切にしていたものを何らかの形でつないで行く必要があると思いました。