AKILA's えgo

気まぐれに、ドラムや音楽の気になった事上げとります。

貫徹の中の変化

2020-05-27 00:51:00 | 音楽・ライヴ
リアルタイムで入手したかったが、件の自粛期間によりどうしても直に購入できなかったのが何とも歯痒かったな(苦笑)。
VADERの『SOLITUDE IN MADNESS』は、今月中旬に発売予定(当初は5月1日であったがそこから延期)となっていたんだが、漸く入手。

このアルバム発表前に、以前よりチョイチョイやっていたEPをリリースしたが、その内容も中々良かったんで、自分の中では全く心配のないVADERクオリティを感じた(因みに、今回のアルバムの限定デラックスエディションは、そのEPとパックになっている)。

ま、
“心配のない”っていうのは、中心人物であるピーターが生み出す、VADERたる所以の手法ってことであり、個人的訴求としては、また別のところが聴きどころとなっている。


ソレは言わずもがな、ドラムである。

VADERはこれまで、ドラマーが何人か交代をしている。
特に有名なドラマーは、ピーターと共にバンドを始めたとされているドックという人物だろう。

過去にリリースされたアルバムでも依然最も多くの枚数に携わってきた事になり、その時に披露されたドラミングは、安定力の凄まじい高速ツーバスとブラストビートを交えながら、彼特有の音が存在してると言える独特なグルーヴが何より、当時のVADERの重戦車級の突進力と、メロディックではないにせよ印象に残るギターリフの魅力に拍車をかけていた。

所謂80年代スラッシュメタル直系のオールドスクールタイプのドラマーだが、影響源がデイヴ・ロンバードやジーン・ホグランといった、そのシーンの名手であった為に、ドラミングに於けるスピード感やバスドラムに対しての粒の立ち上がり方(つっても、最小限バスドラはトリガー使ってたが)は当時に於ける次世代型と言え、VADERがデスメタルであるが為の先鋭さを持っていたのは、間違いなくドックによるそのドラミングが基盤となっている。

ここ日本のデスメタルファンの間でも、VADERの中でドックの人気はやはり高く、「あのドラムを観に来た」とも言う人が居たくらい。

オレにとってもドックは大好きなドラマーの一人で、個人的にSLAYERを超えるツーバスのスピード感と激烈さ、そしてブラストビートとは何ぞや?というのを学ばせてもらった。

デスメタルバンドは当然、アメリカのバンドが世界的に名を馳せてきたワケだが、オレにとってVADERはSLAYERの提示したスラッシュメタルの極致と、そこからよりおぞましい不穏な音世界を表現するデスメタルとの橋渡しをする重要な存在だと見なしている。

「SLAYER聴けん=VADER聴けん」。逆も然り。
オレにとっちゃこーいう構造が出来上がっている。

だから、オレのドラミングを「ドックみたいだ」と人によっては思う事もあるだろうが、ソレは当然だと思う。
だって、ドックその人の最大の影響源は、デイヴ・ロンバードなのだから。
オレと同じ心の師匠を持っているんだから(笑)、ドックに共感しない筈が無いワケだし、その流儀とも言える演奏が滲み出るのは自然だろう。

ただ、
残念なのは、ドックはもうこの世に居ない。
しかも、死因はアルコール中毒。

彼はアルコールとドラッグ常習癖が問題になっており、一時期はドラッグが原因でVADERを解雇される寸前のところにまで陥った事もあった。

事故ならまだしも、ミュージシャンとしては起こり得る悪癖によって命が絶たれたのは、唯々落胆を覚えた。


以降、
ドックを失ったVADERは、これまでに3名のドラマーが在籍してきた。
ダレイ
ポール
ジェイムズ
の3名である。

いずれもドックに劣らぬ技量。技巧という面に於いては、彼らはドック以上と言えるほどのドラミングを在籍時に作ってきたアルバムの楽曲で披露していた。

だが、そうであったとしても、ドック在籍時のVADERが持っていた、あの突き抜け感には到達していない。

無論、VADERはピーターがメインソングライターであるので、音楽の根本は基本的に変化していない。
それでもこうも違って聴こえてしまうのは、やはりメンバーの変化であるのは否定できない。

ドックだけが離脱した時期の事を考えると、彼のドラムがどれだけバンドに影響していたかが伺えるものだ。

現在、VADERに在籍しているドラマーは、ジェイムズ。
前任者であるポールの推薦で加入したドラマーで、元BIO-MECHANICAL。

ピーターとは親子ほども離れた、現在でもまだ20代後半に入ったばかりくらいの若さだが、その細身の体格から繰り出されるツーバスのスピード感と突進力の在り方は、ピーターも言う通りドックを彷彿とさせるものがある。

オレにとってそう思わせる事実は、ジェイムズは短期間だが、DECAPITATEDにサポートとして参加していたって事。

彼がDECAPITATEDに居た時の演奏を動画で確認したが、DECAPITATEDのオリジナルドラマーであるヴィテック(故人)に大きく通じるドラミングを披露していたってのが驚いた。

実はこのヴィテックも、生前VADERでドックが一時離脱していた際にサポートで参加していた事もあり、DECAPITATEDというバンド自体、「第2のVADER」と当時言われていた音楽性と、メンバー自体が近接した仲であった。当然、VADERは彼らにとって良き先輩として影響源でもあった。

ヴィテックというドラマーも、DECAPITATEDで激烈且つ技巧性も感じさせる超速ドラミングを披露しながらも、ドックに通じるグルーヴを放っていた、オレの大好きなドラマーであった。

話をまとめると、ジェイムズは現時点で、往年のVADERの感触を取り戻すに足るスタイルを備えている。

だからと言って、彼はドックその人ではない。
ドラムってのは、ホントにその人間の感覚ってのが露わになる楽器。

結局重要なのは、そんなジェイムズが居る中で、VAEDRが今一度突き抜けた感のある内容を作って行けるかどうかだ。

ドック離脱以降でオレが描く理想のVADERに肉迫したアルバムは、ダレイ在籍時の『IMPRESSIONS IN BLOOD』だけである。

バンドは、今回レコーディング環境を変化させたという事だが、「何かを変えていきたい」という想いからきたそうだ。

その変化というのが、貫徹したスタイルの中に停滞した、マンネリズムに向けてのものであるか、というのも含まれているのか・・・?

それでも依然として、オレの中ではVADERの存在は揺るぎないものであるが。