前作から、そんなに待たされずにリリースされた感じがする。
CYPTOPSYの『AN INSATIABLE VIOLENCE』。フルアルバムとしては9thにあたる。
まァ、考えてみれば、『CRYPTOPSY』から『AS GOMORRAH BURNS』までの間隔が異例であったようなもので、本来このバンドは2~3年ほどの間隔でアルバムリリースしてきてたからな。
まァ尤も、ライヴ/ツアーはしていたものの、創作活動のペースが停滞していた感は当時何となく感じてはいたんだが、強ち外れてはいないと思う。
それと比べると、今回はDEATH TO ALLとのツアーが大いに刺激になったと思われ、そのツアー最中にレコーディングを行っていたらしく、この手法はバンドとしては初だったとの事。
ストレスもあったらしいが、❝鉄は熱いうちに打て❞を体現する状況であったのではないかと思う。
実際、今回のアルバムは「グルーヴィな雰囲気を重視したアルバム」という当初の案とは真逆とも言える、バンド曰く「歴代最速のアルバム」となったワケだから。
これは個人的見解だが、このバンドは1stから既に狂速の域に達する様な曲を演奏していた感じでもあり、ソレが完全開放/顕著となったのが『NONE SO VILE』ではなかったかと思う。
故に、今回のアルバムを聴いていても、過去のアルバムと比べても特段速い、という感覚を得られるものって正直ないんだが、アルバム全体に通じるスピード感というのは、4th『AND THEN YOU’LL BEG』を彷彿とさせるものがあり、そこに前作『AS GOMORRAH BURNS』で自身の創り上げたデスメタル流儀を現メンバーで再構築した音楽性をプッシュアップさせたのが今作である、と捉える事ができる。
実際、初期と同じではないが、往時のCRYPTOPSYの様に、瞬間的にハッとさせられるフレーズを浮かび上がらせる事で曲の印象を強く残させるのを得意としていたと感じていたが、今回はそういった展開を巧みに設け、曲に対してのインパクトを植え付ける事に成功している。
だからといっても直ぐに覚えられるような音楽ではないのは当然なんだが、それでも闇雲なテクニカリティでブルータリティを装う形から逸脱しにかかっている感じは、前作と今作から伺いとれる。
ライナーノーツで奥野氏が指摘していた様に、特に今作は先のDEATH TO ALLとのツアーと並行して作業を進めていた影響からか、ライヴ感のある点も全体にスムーズさを感じ取れる要因となっていると言える。
ま、言わずもがなやっぱりフロ・モーニエのドラミングの強烈さだろう、語られるのは。
演奏に関しては、今や彼に追随するスピードでもって叩けるドラマーは世界中に数多く存在しているが、これほどまでに自然と思えるほど滑らかな流れを感じさせて炸裂させるドラマーとなると、実際のところ数えるほどしか居なくなる。
しかも、フロはCRYPTOPSY唯一のオリジナルメンバー。
結成から30年をとうに超え、本人も50代に到達しているという事実が、どれだけ驚異であるか知れよう。
しかも本人は「もっとスムーズに、インパクトを伝える叩き方を体得した」と言っているんだから、御見それしましたとしか言いようがない(笑)。
これだけのキャリアを築いてきたバンドなら、昔取った杵柄で活動するでも充分と感じるのも共感できるところでもある。
が、フロを中心にCRYPTOPSYのメンバーはソレを良しとせず、今でも自分自身を開拓できる何かを探りながら、バンドを次の領域へと持ち上げるべく研鑽の手を止めない。
「テクニックを以て表現される音の暴虐性」というのは、正にCRYPTOPSYのためにある表現かと思う。
NILEもその部類にあたるが、オレの感覚としては、ダイレクトに伝わるのはCRYPTOPSYの方である。
デスメタルが何であるか?というのを極限の縁で披露しにかかっているのがこのバンドであると思う。
先のSODOM、そしてMEGADETHがそのキャリアを閉じるという理由も頷ける一方で、CRYPTOPSYの様な存在が姿勢を未だ崩さず闊歩している様を見ると、こちらとしてもやる気に火がつく思いになる。
ま、別にフロの様になるつもりはないが、自分がやりたいと思えるものを追求する、自分のドラムとはコレだという姿勢を崩さず貫く事の大事さを改めて今回のアルバムで知らせてくれた。
それほど、今回のアルバムは良い。
また、アルバムのアートワークは、元メンバーのマーティン・ラクロワによるもの。
彼は去年急逝してしまったが、マット・マギャキーによると、このバンドは歴代ヴォーカルたちとは友好関係を持っているという事で、マーティンに関しては『NONE SO LIVE』でその声を残しているが、彼の創作面をバンドで出されなかったのは残念だと思い、今回マーティンの遺族の承諾を得て、アルバムのアートワークに起用したのだという。
こーいう点も心憎い。
ファンにとっては、より思い入れのできるアルバムになる。