現在の編成になってからの、一つの完成形と感じた。

DESTRUCTIONの『BIRTH OF MALICE』。オリジナルアルバムとしては通算16枚目。
『BORN TO PERISH』から、現在も在籍しているダミアが加わりツインギター編成となった(因みにドラマーも元ANNIHILATOR~PRIMAL FEARのランディ・ブラックに代わっている)事で、明らかにトリオ編成時代とは違った音の質感へと変わり、前作『DIABOLICAL』では遂にオリジナルメンバーであったマイクが脱退し、新たにフュリアというギタリストが加わる事によって、DESTRUCTIONであってそうでないような、まるでかつてシュミーアが率いていたHEADHUNTERの様な感触を思わせるものに風変りしていった。
これまで、オレはトリオ編成であるこのバンドが好きだった。
3人でここまで爆走するか?!と思わせる様な、いかにもMOTORHEAD譲りの暴走ロックンロールな感じのスラッシュメタルが聴いていて良かったんだよね。
まァ、シュミーアがDESTRUCTIONに復帰してからはドラマーが幾度か交代しており、その都度少しばかりの変容を見せてはいたが、バンドを決定づけるトレードマークは不変だった。
そう、結局のところ、DESTRUCTION=シュミーアなのである。
彼の本能的創作に基づいたスラッシュメタル、そして歌唱は、耳聡い人間であれば聞き間違いようの無い個性丸出しの音楽であり、実際シュミーアがフロントに立って唄えば、DESTRUCTIONでなくとも「ん?DESTRUCTION??」と錯覚してしまうほど強力な印象を与える。
シュミーアと友人関係でもあったマイクとのタッグあってこそ、と思いたくもなるものだが、DESTRUCTIONというバンドを上手く機能させる事のできるブレインマンは、他でもないシュミーアであったというのは、このバンドの歴史が物語っている。
シュミーアを解雇という暴挙に出た時期は結果として、DESTRUCTIONというトレードマークを失った事で失速してしまったワケだから。
とはいえ、『BORN TO PERISH』~『DIABOLICAL』で起こった人事問題により、個人的にはDESTRUCTIONに対して興味はほとほと薄れてしまっていたというのは認める。
シュミーアが自分の大事なバンドであるDESTRUCTIONを生かさなければいけないという考えも解るが、一方でマイクの居ないバンドは・・・と。
正直、先行MVで「DESTRUCTION」を視聴した時も、結局こんなモンかと軽率甚だしい感じでしか受け取れていなかった。
それでも、このバンドのアルバムがリリースされるというのは後ろ髪惹かれる思いがある(笑)。
そして今作を聴いて改めて思ったのは、冒頭で述べた通り。
ここにきて、シュミーアの思い描くツインギター編成としてのDESTRUCTIONが、漸く機能し始めたと感じた。
トリオ編成、しかもマイクの居た状態でのバンドとは当然質感は変わったが、根幹にあるシュミーアが揺らぎもしないため、あとはいかにしてギタリスト2人がDESTRUCTION流スラッシュメタルの矜持を保つことができるかがカギとなっていたが、今作でのツインギターでの振り分けは良い耳障りを齎している。
それは古き良き伝統的なHR/HM様式に則ったリードギター構築を擁しており、まごう事無きこのバンドの狂的音楽に、新たな立体感を与えている。
キャッチーな面は昔からあった。しかし、バンドとしてこれほどまでに重厚感と立体感のある聴かせ方は無かったんじゃないかと思う。
曲に於ける説得力/重量感は、この数作で一番だろう。
正に新生DESTRUCTIONである。
しかも、シュミーアは現在58歳。ランディに至っては確か60越えていた筈。
言ってみりゃこのバンドは西側から現れたスラッシュメタルとしては最古参の一つ。
メタルファンが知るところのスラッシュメタル四天王も当然同年代であるが、それにしたってこのバンド(とSODOM、KREATOR)がここまで衰える気配なく続いてきたのはホント狂気じみている(笑)。
この音楽演る人間たちが還暦迎えるとか、誰も想像しなかっただろうよ。
ある意味では、コレも一つの開拓にあたるのかもしれない。
少なくとも当人達がくたびれている様子を見せていない点で、こちらも「負けられん」という姿勢に導かせてくれるのは、悪い事じゃない。
「Thrash till death」をバンドの命題に掲げたシュミーアの意志は、正にピュア・スラッシャーだ。