「明日はどうする?」
「父さんに任せるよ。」
「わかった。」
そんな会話をして、二人でテレビを見たり、お菓子を食べたり、絵を描いたりしながら夜ふかしをした。
別に、寝坊をしたっていいのだ。
あてなんてないのだから。
別に、朝まで起きていたっていいのだ。
これをするのだという「目的」があるわけではないのだから。
「早く寝な。」
「明日も早いんだぜ?」
そんなことも言わず、彼が自然と眠るまで付き合った。
「こうやって寝ようかな?」
「いいねぇ、俺もやる。」
「このパジャマ最高だね。」
「うん、動きやすい。」
会話なんて、どうでもいいことばかり。
唯一、目的があるとすれば「一緒にいること」だけです。
色んなことを話します。
つまらないことから、大事そうなことまで。
ゲームのことから、学校のことまで。
生まれてきてから、今まで。
お土産話なんて出来ないくらい、色んなことを話します。
だって、二人だから。
『そいつしかいない状況』だから。
美味しいものを食べる時。
いつもは、なにか食べものを誰かに譲るなんてあまりしない彼です。むしろ、
「それ、ちょーだーい!」
と誰かの分まで食べちゃうぐらい。
でも二人だと違う。
「これ、美味しかったよ?父さん食べた?」
「いいよ、お前食べな。」
「ほんと?じゃあ…いや、やっぱ食べてよ。美味しいから。」
「ありがと。」
そんな感じ。
二人だとね、共有をしたくなる。
色んなことを。
そして、君が優しい奴だと僕は知ってる。
滲み出てくればいいのにとも思ってる。
君なら、どこでもうまくいくよ。
君ならどこでもやっていける。
「足痛〜い。」
「どこがどんな感じに?」
「靴ズレだと思う。」
「おぉ、では待ってろ。絆創膏でガードしてやる。そこに座ろう。」
【旅人心得】
履き慣れていない靴は、旅の時は避けましょう。
見た目よりも大切なことを、大切に。
それは、足だ。
唯一無二で、最後の移動手段。
それが、足です。
「履き慣れた靴で来なきゃ。」
「青い靴にしようとしたら、母さんがこっち履いてけって。」
「別に誰が悪いとか言ってるわけじゃない。教えてるだけだよ。これでどうだ?」
「あれ?痛くない。」
「そんなもんだ、靴ズレなんて。靴ズレは命取りとか言うけど、それは本気の勝負の時。なんなら挫いてもいいぞ。固定してやる。俺がいる時はね。」
何が起きても楽しいものです。
【目的は一緒にいること。】
同じものを見て、同じものを食べて、それぞれに何かを感じる。
同じことを感じなくていい。
それぞれに。
僕らは親子だけど別な人間です。
ましてや他人など。
感じ方まで押し付けるから、何かがズレる。
違うからいいのに。
「同じように感じてくれる人なのね、運命だわ。」
などとハナっから共感を求めてるような奴だとさ、一つのズレも許せないんだろ?
そんなの無理じゃん。
好きな映画が違う。
好きな音楽が違う。
好きな本も違う。
今日も押し付けず。
【ダメと言わない日】を貫きます。
あと何度、こんな朝を迎えるのかと思うと大切にならざるを得ない。
こんなに大きくなった。
立派な青年じゃないか。