わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

8歳のオス猫みーすけが魅力的!「ねこタクシー」

2010-06-05 18:06:02 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img283 永森裕二・原作、TVドラマにもなった「ねこタクシー」が映画化されました(6月12日公開)。主人公は、タクシー運転手の間瀬垣勤(カンニング竹山)、40歳。売り上げ成績は万年最下位、家では妻(鶴田真由)にも娘(山下リオ)にも頭が上がらない。そんな彼の前に、一匹の野良猫・御子神(みこがみ)さんが現れる。ふてぶてしく、何でもマイペースだが、ちょっととぼけて、可愛いところもある老いた猫だ。人づきあいが苦手だった間瀬垣は、この御子神さんを助手席に乗せて、ひそかに“ねこタクシー”を開業。やがて、売り上げはウナギのぼりに上昇、いままでスポイルされてきた妻や娘からも見直されることに…。
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 全編にホンワカとしたユーモアが漂う佳作に仕上がっています。完全な負け組で、まったくウダツが上がらない中年のダメ男。彼とタクシー会社や、家族との人間関係が軽妙に描かれます。間瀬垣が、人気のない公園でわびしく弁当を食べているときに御子神さんと遭遇するシーンが、なんともいえず良い雰囲気。猫の登場で、それまで口下手で営業が苦手だった間瀬垣が、笑いと自信を取り戻していく過程に、しんみりさせられます。それだけではない。“猫タクシー”営業ということを嗅ぎつけて、保健所の職員(内藤剛志)が動物愛護を盾に、いやらしく執拗に横槍を入れてくるエピソードも面白い。つまりは、主人公をめぐって、家庭・会社・法律にひそむ現実の不条理も浮きぼりにされるのです。
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 監督は「幼獣マメシバ」(09年)の亀井亨。ハワイアン風のバックミュージックを巧みに用いて、まったく気負うことなく間瀬垣と御子神さんの交流を軽いノリでスケッチする。とりわけ、主人公を演じるカンニング竹山の哀感こめた演技が印象的。間瀬垣の人生を変えるきっかけとなる通称“ねこババァ”を、名女優・室井滋が演じています。タクシーの乗客として、塚本高史、根岸季衣、水木一郎らが顔を出すのも見どころ。でも、なんといっても魅力的(!?)なのは、御子神さんに起用されたオス猫・みーすけだ。年齢は8歳、体長40センチ。「ALWAYS  三丁目の夕日」やTV「龍馬伝」にも出演したという名優で、世界でも希少といわれるオスの三毛猫。その“おやじ臭い(?)”風貌としぐさに脱帽!です。
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アガパンサス

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