パリでオールロケ。主演がパリ在住の中山美穂と、NHKの連続TV小説「ゲゲゲの女房」、映画「ハナミズキ」の向井理。加えて、いかにも軽快なラブストーリーを予感させるタイトル「新しい靴を買わなくちゃ」(10月6日公開)。題名の由来は、パリに到着した日本人青年が、ノートルダム寺院近くで落としたパスポートを日本人女性に踏まれて破られてしまい、そのため折れてしまった彼女のハイヒールを接着剤で直す、という出会いにあります。でも彼女は忙しく、なかなか新しいハイヒールを買うことが出来ない、というわけ。
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カメラマンのセン(向井)は、妹(桐谷美玲)の付添いでパリ観光にやって来る。だが、途中で妹に置き去りにされ途方に暮れる。そんなとき知り合ったのが、パリで日本語フリーペーパーの編集をするアオイ(中山)。パリに不案内なセンは、アオイにホテルの場所を教わり、彼女と夕食をともにする。そして、酔ったアオイを自宅まで送り届けたあげく、彼女の部屋に泊まってしまう。その後、センはアオイの取材に同行、パリを満喫する。アオイは壊れた靴を履いたままで「新しい靴、買わなくちゃ」とつぶやく。二人は誰にも言えなかった思いを打ち明け合い、3日間をともに過ごすうちに特別な感情を抱き始める。
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ドラマの伏線として、パリで一人暮らしをするアオイが抱える心の傷と、商業カメラマンとしての仕事に疑問を抱くセンと、互いに相通じる悩みが潜在する。やがて、いつしか離れられなくなる二人。演じる中山美穂と向井理は、約12歳の年の差がある。年上の女性と、年下の青年との切ない愛。普通なら軽快かつ感情たっぷりな愛の物語になるはず。だが、話が陳腐で、セリフで説明するくだりが目立ち、映像で見せきるというテクニックに欠ける。おまけに、パリ・ロケのわりには室内シーンが多く、全体的に展開がゆるい。
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監督・脚本は、TVドラマの脚本家出身、「ハルフウェイ」(09年)で映画監督デビューした北川悦吏子。プロデュースと撮影監督を手がけたのが岩井俊二。メロドラマとして材料がそろっているのに、日常会話がうざったく、進行が退屈なのは脚本の不備のせいか? 特に、センの妹とパリで絵の勉強をする恋人(綾野剛)とのやりとりが甘ったるく、目障りだ。最後、日本に帰ったセンからアオイに新しいハイヒールが送られてくる。そのハイヒールを履いて、アオイが家の外に出てくるくだり。カメラは、彼女の姿をロングでとらえるが、喜びの感情が突出しない。このラストが象徴するように、作品全体に恋愛感情の躍動感が表出されないのが、残念!!です。 (★★★)
宵の芳香・エンジェルストランペット