エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

中国の電気自動車戦略が本格化

2010-03-24 22:41:27 | Weblog
 中国における電気自動車の新動向です。
 1月8日、中国地場の電池メーカー(蘇州星恒電源)と電気自動車駆動システム・メーカー(上海燃料電池自動車動力システム)の合弁企業、「恒動自動車電池」が、中国政府の支援を受けて上海新エネルギー自動車基地内に設立されました。地場初の電気自動車・ハイブリッド自動車用リチウムイオン電池システムの一貫メーカーで、上海市の新エネルギー自動車戦略にとっても同社の設立は重要な1歩になります。第1期工場は2012年から生産開始予定です。
 蘇州星恒電源は長年、車載用電池の開発に取り組んできた企業で、製品は既に米国の安全認証であるUL認証を取得しています。上海燃料電池自動車動力システムは、2000年に上海汽車集団と上海同済大学の共同出資で設立されました。新エネルギー自動車の駆動システムの研究開発に専念しており、電池組み立て、電池管理システム技術を保有しています。両社は03年から電気自動車・ハイブリッド自動車用のリチウムイオン電池の共同開発を進めており、同プロジェクトは政府の「863計画」(注)の支援を受けています。
 恒動自動車電池は蘇州星恒電源と上海燃料電池自動車動力システムの共同研究開発の成果を受け継ぎ、地場企業初の電気自動車・ハイブリッド自動車用のリチウムイオン電池のセルから電池システムまで一貫して開発・製造します。
 第1期工場は10年上半期から建設を開始し、11年末までに完成、12年から生産を開始する予定です。投資総額は3億元(1元=約13円)、年間生産能力は自動車電池2万システム。第2期工場は投資総額15億元、年間生産能力10万システムです。
 上海汽車集団は国内最大の自動車メーカーで、自動車製造業は上海の主要産業です。上海市は新エネルギー自動車という新分野でリードを保つため、09年07月18日に、自動車・部品メーカーの集積している上海市嘉定区に上海新エネルギー自動車基地を設け、12年までに上海の新エネルギー自動車産業を900億元規模にする目標を立てています。
 上海市政府は09年12月17日、「上海新エネルギー自動車産業の発展を促進する政策」を発表しています。開発補助金や利子補助金などのかたちで、新エネルギー車の開発・生産企業に総投資額の最高10%、電池などのコア部品・技術の開発・生産企業に総投資額の最高30%の資金を支援するという内容です。
 恒動自動車電池は電気自動車・ハイブリッド自動車用のリチウムイオン電池のメーカーとして、上海の電気自動車・ハイブリッド自動車の研究開発で重要な役割を演じるとみられ、上海市政府から政策・資金面で強力な支援を受ける予定です。
(注)86年から発足した中国のハイテク研究発展計画で、重要な

気候変動問題は中南米諸国に壊滅的な打撃

2010-03-24 05:09:39 | Weblog
 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は、気候変動対策が国際的に合意されない場合の中南米15ヵ国の被害について報告書をまとめ、発表しました。現在の15ヵ国のGDPの137%相当額が2100年までに失われるとしています。
 報告書は、現状がそのまま続く場合、2100年までに、ボリビア、チリ、エクアドル、パラグアイ、ペルーで、国土の22%から62%の面積が荒廃し、水問題も生じると指摘しています。海面上昇の面でも深刻な問題が生じます。カリブの小さな島国では、人々が住む場所を追われ、国土の喪失が生じます。同時にブラジル、コロンビア、エクアドル、仏領ギアナとガイアナの各国に広がるマングローブ林も消滅し、アルゼンチンとウルグアイに広がるリオデラプラタ地域も脅威にさらされます。
 世界の気温が3度上がれば、アマゾン地域の降雨量が減少し、世界有数の生物多様性を誇る地域に重大な悪影響が起こるともしています。
 報告書は、このような一連の自然災害が2100年までに、毎年86億ドル(00年から08年の年換算として)から最大2,500億ドルの被害をもたらすだろうと分析し、a.次世代のための生物多様性の保護と天然資源の確保、b.人々のライフスタイルや文化の見直し、c.持続可能な技術の開発、d.低炭素社会の実現へ向けた確実な取り組みと石化燃料の利用に限界があることを悟ること、e.石化燃料に代わるエネルギーの利用には、高いコストがかかるため、それに対する心構えが必要だ、という5点の環境保全措置が必要であると指摘していますだ。
 詳細については、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会ウェブサイト((Economics of Climate Change in Latin America and the Caribbean. Summaryこちら > )を参照してください。

韓国のスマートグリッド国際連携と後塵を拝する日本

2010-03-23 06:16:30 | Weblog
 韓国はスマートグリッドの国際連携を積極的に進めています。今回は、スマートグリッドを含む韓国のグローバルネットワーク構築への取り組みについてご紹介します。
 まず、 米国との連携としては、スマートグリッド関連業界団体( 米・GridWise Alliance と 韓・Korea Smart Grid Association(2009年8月設立))の協力<こちらをご覧ください>、 企業間の技術協力(GEの韓・ヌリテレコムへのスマートグリッドに係る技術協力)、米韓FTAがあります。
 また、 EUとの連携に関しては、欧州の技術・市場へのアクセスの足がかりとして、EUREKA(マーケット志向の研究開発協力を行う欧州のプロジェクト)への欧州圏外で初めての加盟(2009.6)、 EU-韓FTA仮署名(2009.10)があります。
 いずれも、FTAが絡んでいることがポイントで、米国、EUいずれともFTA締結が遅れている日本は、スマートグリッドの国際連携でも、韓国の後塵を拝しています。 

三井物産はモザンビークで太陽光発電に協力

2010-03-22 19:38:09 | Weblog
 三井物産と国連開発計画(UNDP)は、モザンビークの「チブト・ミレニアム・ビレッジ」に太陽光発電を動力源とする灌漑用水ポンプ設備を建設する計画を発表しました。国連「ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト」の一環として行われるものですが、これは、国連ミレニアム開発目標(MDG)を達成するために、アフリカ大陸が直面している農業や水、衛生・医療といったさまざまな問題を抱えた農村にサービスを提供し、生活水準の向上や農村部の開発を行う取り組みで、モザンビークはその対象国の1つです。支援期限を5年と定め、住民の自立による生活改善を促すことを目標としています。
 三井物産 は、この計画の企画推進、太陽光パネルと灌漑ポンプなどの機材調達、技術導入の取りまとめなどを担当し、UNDP は、現地工事に必要な部材調達や建設完工までの工程管理、現地政府・コミュニティーとの調整や能力開発などを行います。
 モザンビークは、土地面積の約6割が農地。綿花やカシューナッツ、サトウキビなどを生産する農業国です。しかし、灌漑用地は耕作面積の2.4%しかなく、大洪水や干ばつの自然災害の影響を受けやすい状況です。また、国内のコメ消費量の約86.4%を輸入に依存しており〔国連食糧農業機関(FAO)、2006〕、食糧安全保障の観点からも農作物の生産量を高める灌漑設備の整備が急務となっています。
 灌漑ポンプの動力源として電力が必要ですが、モザンビークの電力インフラは十分ではありません。国際エネルギー機関(IEA)によると、電化率は11.7%(2008年)で、サブサハラ全体の平均28.5%より低くなっています。また電気へのアクセスがない人口も1,930万人(人口の約90%)と多く、そのほとんどが農村部に集中しています。内陸地に送電網を整備することは容易ではないため、今回の太陽光発電による電力供給には大きな意味があります。
 三井物産は今回の計画で、現在10ヘクタールの灌漑農地が約7倍に拡大し、メイズやコメ、野菜などの換金作物による収益は約15倍になると見込んでいます。同社は、当該支援地域での自立的・持続的な生活レベルの改善に貢献しながら、その結果や効果を検証していく考えです。
 三井物産は、MDG達成のために企業セクターが自主的に行動する「ビジネス行動要請:Business Call to Action(BCTA)」(UNDPと英国政府による貧困削減イニシアチブ)に、日本企業として署名している2社のうちの1社。08年5月に宣言書に署名後、今回の計画は同社にとって初のBCTAの主旨に沿う案件となります。
 同社は、モザンビークで石油・ガスの探査活動を行っており、これら本業を通して雇用創出などの地域貢献を行うとともに、今回のような社会貢献活動(CSR)にも取り組んでいます。自社の専門性や技術、ネットワークを途上国の貧困削減や経済発展のために活用することで、将来的にアフリカ開発や他社の事業活動のモデルケースとなることを目指しています。日本企業とUNDPの官民連携による新たな対アフリカ事業として、10年秋の稼働が待望されています。

EU新方針の基軸は「グリーンイノベーション」

2010-03-22 05:28:50 | Weblog
 欧州議会は2月9日、フランス・ストラスブールで開いた本会議で、新たな欧州委員会の委員候補者に対する信任投票を行い、一括して承認した。これを受けて、バローゾ委員長が率いる新たな欧州委員会は2月10日に発足しました。新欧州委員の任期は2014年10月31日までです。
 バローゾ委員長は、信任投票に先立ってスピーチを行い <こちらをご覧ください> 、再任された時の政治方針として、危機からの出口戦略、気候変動対策とエネルギー効率化に向けた取り組み、新たな成長戦略や社会市場経済回復に向けた結束強化、自由と安全を伴う欧州の構築、通商面などグローバルな欧州の取り組みを明示しました。
 EUでも「グリーンイノベーション」が強調されていることに注目したいと思います。

米連邦政府機関のCO2排出削減目標

2010-03-22 00:06:09 | Weblog
 米連邦政府機関が排出する温室効果ガス(GHG)を、2020年までに08年比で28%削減するという目標が取りまとめられました。10年1月末に気候変動枠組み条約事務局に提出した、国全体で20年までに05年比17%削減の目標を上回るものです。国内外で気候変動対策の法的枠組みの整備が遅れる中で、政府自らが模範となり、今後の取り組みをリードしていく狙いがあります。
 09年10月に発表された大統領令「環境、エネルギーおよび経済パフォーマンスにおける連邦のリーダーシップ」 <こちらをご覧ください> は、連邦政府機関に対し、20年度までに達成すべきGHG削減目標(基準年は08年度)を90日以内に定めて環境問題諮問委員会(CEQ)議長と行政管理予算局(OMB)局長に報告することを求めていました。これを受けて、期限までに各機関が削減目標を提出し、10年1月29日に35機関全体の目標を「20年までに08年比で28%削減」とすることが発表されたものです。
 オバマ政権は、この削減目標を達成することで、石油に換算して年間2億500万バレルのエネルギーを削減し、20年にかけて80億~110億ドルのエネルギー経費が削減できると試算しています。
 機関ごとの個別の目標値などは発表されていませんが、代表的な機関のGHG削減行動が例示されています<こちらをご覧ください> 。主なものは次のとおりで、再生可能エネルギー利用発電や低燃費車の導入、データセンターの省エネ化などの取り組みが行われます。
〔エネルギー省(DOE)〕
・核関連施設のサバンナ・リバー・サイト(サウスカロライナ州)の老朽化した石炭火力発電所と石油ボイラーに替えて、新たに国内最大級のバイオマス発電施設を建設する。年間10万トンのGHGが削減される。
・オークリッジ国立研究所(テネシー州)の天然ガスボイラーに替えて、新たにバイオマス利用の蒸気発生プラントを建設する。年間5万5,000トンのGHGが削減される。
・国立再生可能エネルギー研究所(コロラド州)のデータセンターで空調の改善、サーバーの整理統合などを行い、電力消費量を65%削減する。
〔環境保護庁(EPA)〕
・今後10年間のうちに、公用車を低燃費車、ハイブリッド電気自動車などに入れ替える。これによりガソリン消費を30%、GHG排出量も25%それぞれ削減できる。さらに、代替燃料利用車の導入などの効率化を図ることで、EPAの公用車全体でGHGを40%以上削減できるという。
・国立コンピュータセンター(ノースカロライナ州)で電力消費と冷却設備の点検・改善を行い、エネルギー消費量を15%削減し、エネルギー経費を年間10万ドル削減する。
〔内務省〕
・景気対策法の資金を利用して、テキサス州の4ヵ所の野生生物保護区などにソーラーエネルギー利用システムを設置する。
〔国防省〕
・空軍士官学校(コロラド州)に4メガワット(MW)のソーラー発電施設を設置し、送電線や給水・ガス管なども改善する。15年までにエネルギー消費量を38%削減し、再生可能エネルギーやグリーンエネルギーの使用割合を現在の10%から100%に高める。
・ごみ処理場からのメタンガスを利用し、海兵隊基地(ジョージア州)のエネルギー需要の22%(1,200世帯分の電力)を賄う。
・海軍の水上船としては初めて、ガスタービンと電気駆動の両方を用いるハイブリッドエンジン船を導入する。ミシシッピ州からカリフォルニア州まで航海した場合、同規模の通常の船と比較して燃料を90万ガロン(1ガロン=約3.8リットル)、金額にして200万ドル節約できる。
 大統領令は連邦政府機関に対し、排出削減目標の提出のほか、目標達成のための年次計画の策定や、物品供給者などの直接的に管理を行っていない排出源からのGHG排出削減目標についても報告するよう求めています。今後は、OMBが各機関の年次計画の内容などを確認・評価し、進捗状況を毎年公表するとしています。
 このような取り組みは、08年に245億ドルに上った連邦政府機関の電力・燃料費の削減に役立つだけでなく、今後の民間企業や地方自治体などの排出削減行動をリードしていくことになると見られます。

「アジア低炭素共同体」構想

2010-03-21 14:19:16 | Weblog
 鳩山政権は「東アジア共同体」を提唱していますが、東アジアは世界でも有数の流動性と多様性を持つ地域です。したがって、EUのような共同体の実現はそう簡単なものではありません。しかし、地球環境問題の緊急性にかんがみると、低炭素社会の実現は、先進国と途上国が共通に目指すべき目標です。どこで削減しても、どこから排出しても気候の変化に対してはほぼ同じ効果を有するというCO2の特徴とCO2対策のコストベネフィット効果を考えると、アジアにおいて国境を越えた互恵的広域低炭素社会を構築するという「アジア低炭素共同体」構想は、比較的実現可能性が高く、かつ、優先度の高いものであると言えます。
この「アジア低炭素共同体」構想は、同志社大学の周教授が提唱しているものですが、2015年までの期間においては、アジアの中で、法的拘束力のある数値目標を設定する国(強制的:日本など)、法的拘束力のない数値目標を自主的に設定する国(自主的:韓国など)、数値目標は持たないものの自発的に削減方法を講じる国(自発的:中国など)の3類型に分け、その後2020年までの期間においては、自主的な国は強制的な国へ、自発的な国は自主的な国へと転換し、2020年以降において自主的な国が強制的な国への転換するという3段階アプローチを取るものです。また、アジア内における国際的な技術・資金協力とアジアワイドの排出量取引に関しては、ESCO方式とCDMの組み合わせにより、互恵関係を構築しようというものです。

スマートグリッド革命時代のビジネスモデル、「スマート企業」になるためには?

2010-03-21 06:43:06 | Weblog
 今回は、スマートグリッド革命時代の日本企業の基本戦略、「スマート企業」になるためにはどうしたらよいのかについて考えてみたいと思います。
 これからは、スマートグリッド革命が進展して様々な破壊的イノベーションが登場し、商品、サービスがコモディティ化していくパラダイムが現出していきます。この中で日本企業は、かつてない規模で「イノベーションのジレンマ」に直面します。
 この状況下で、自社技術を特許等で守り、モノづくり、モノうりで収益を稼ぐという昔ながらのビジネスモデルを継続させることは、自社技術は守れたとしても他社が新たな技術を投入して市場を席巻すれば、自社技術はたちまち時代遅れになってしまいます。このことは、いち早く破壊的イノベーションに直面した電子機器やテレビの分野において、EMS(Electronics Manufacturing Service)形態をとる中国などの企業が日本のモノづくり、モノうりを駆逐していることからもうかがい知ることができます。スマートグリッド革命が進展する時代においては、従来型のビジネスモデルでは、早晩中国などに競争上の優位性を奪われます。
 これからは、経営のスピードを上げ、仲間をつくり、その中から競争優位性を形成するという「Linux型経営」が基本となります。たとえば、電子機器の世界でもJVC・ケンウッドは、中国のEMSを巻き込んでM-LinXという新しいサービスを提供するシステムを世界に供給しようとしています。M-LinXにより、インターネット網を活用してFM・AMラジオ放送と同じ音声を受信できるというサービスで、ネットを利用することで、電波障害などが起こらず、難聴取地域でもクリアなラジオ放送を聴けるようになります。音声とは別に画像などの付加データを受信できる技術仕様も開発中で、動画、静止画、文字情報などの情報を追加することが可能となります。
 提携先の海外のメーカーから中国のEMSに対して、M-LinXなどの多様なサービスを利用することができるBlue-ray Discレコーダー、HDD、デジタルハイビジョンチューナー、FM・AMチューナー、デジタルアンプを1台に集約したホームAVC機器であるRYOMAの生産をアウトソーシングさせ、「JVC・ケンウッド*海外メーカー*中国EMS」のビジネスネットワークにより、製品を売るだけではなく特許料収入を継続的に獲得しようというビジネスモデルの根本的転換がここにあります。
 スマートグリッドに対応した新しいイノベーション創造のため日本企業が「Linux型経営」によりビジネスモデルを転換し、「スマート企業」を目指すかどうか、これこそが日本企業の生殺与奪を決する本質的な問題です。太陽電池、燃料電池、そして蓄電池等の要素技術の優位性をいかにビジネスモデルひいては社会システムのイノベーションレベルにまで高めるかが問われています。

米エネルギー省は情報通信分野の省エネに対しても助成

2010-03-20 06:44:42 | Weblog
 米エネルギー省(DOE)は、景気対策法に基づく情報通信分野の省エネ技術に対する助成措置対象事業を発表しました。
 対象事業は14件、助成総額は4,702万ドルで、対象事業者による7,000万ドルの負担分と合わせて1億1,700万ドルの投資が行われることになります。
 景気対策法では、産業分野のエネルギー効率向上のための予算として2億5,600万ドルが用意されました。DOEエネルギー効率・再生可能エネルギー部はこの予算を活用し、3つの助成措置を新設しました。最大のものは、産業施設の熱併給発電(CHP)や廃エネルギー利用システムの開発、省エネに向けた取り組みなどに対する1億5,600万ドルで、2009年11月に41件の対象事業が発表されています。
 これに加えて、今回の情報通信分野の省エネ技術とクリーンエネルギー技術に関する先端素材の開発に対する助成措置が創設されたものです。
 今回の助成措置は、a.サーバーやネットワーキング装置の省エネやエネルギー利用の最適化を図るソフトウエアの開発、b.データセンターなどでの電力ロスや発熱を最低限に抑える電源装置の開発、c.データセンターなどの冷房装置の省エネに関する事業、が対象となっています。実施する企業と研究機関は次のとおりです。カッコ内は助成額です。

(1)装置およびソフトウエア
・シーマイクロ(930万ドル)
省消費電力型の小型の中央処理装置を数百機結合することでサーバーの電力消費を抑える実証試験を行う。75%の電力削減が可能としている。
・IBM T.J. ワトソン 研究センター(167万ドル)
データセンターの温度やホットスポットの管理などを行うソフトウエアを活用して、冷却装置の電力消費を抑える実証試験を行う。10%の電力削減が可能としている。
・その他
アルカテル・ルーセント・ベル研究所(30万ドル)やカリフォルニア州技術研究所(30万ドル)の事業が当該分野の助成対象とされた。
(2)電源装置
・ヒューレット・パッカード(743万ドル)
効率的な高圧交流電源、再生可能エネルギーを用いた直流電源装置と、冷却水を用いた冷却装置により、電流変換時のエネルギーロスや発熱を削減するシステムの試験を行う。
・パワー・アシュアー(508万ドル)
利用しない時に自動的にサーバーの電源をオフにするソフトウエアと関連機器の実証試験を行う。データセンターのサーバーの消費電力を50%削減できるとしている。
・コロンビア大学(280万ドル)
複数のシステムを単一のチップ上に集積するオンチップ技術の開発によって、サーバー内の電流変換の効率化を図る。サーバーのエネルギー効率を10%以上向上させることができるとしている。
・その他
リネッジ・パワー(241万ドル)とBAEシステム(22万ドル)が当該分野の助成対象とされた。
(3)冷房装置
・ヤフー(992万ドル)
建物の形状や方角、サーバーの配置場所などを工夫することで年間の冷却の99%を外気だけで行う、次世代型のパッシブ冷却設計のデータセンターを建設する。
・エジソン素材技術センター(284万ドル)
液体冷却装置を用いた超密集型コンピューターシステムの原型試験を行う。
・その他
IBM T.J. ワトソン 研究センター(235万ドル)、アルカテル・ルーセント・ベル研究所(182万ドル)、フェーダースピール・コントロール(58万ドル)が当該分野の助成対象とされた。

世界最大の中国台山原発(2基)はCO2排出量を約2,270万トン削減

2010-03-20 01:35:40 | Weblog
 日本はUAE(韓国の原子力発電所の受注に失敗しましたが、フランスが進出に成功した中国広東省の台山原子力発電所が2009年12月21日に着工しました。
 同発電所は、広東省東部の台山市の赤渓鎮に立地し、国内では初めて欧州型加圧軽水炉(EPR)技術を採用したもので、単基容量としては175万キロワット(kW)の世界最大規模の原子力発電所となります。
 中国政府は、「原子力の発電設備容量を20年には4,000万kW、全発電設備容量の4%にする」という方針を打ち出しています。そのため、06年から15年間に3,000万kW以上の開発が必要となっており、現在、各地で原子力発電所の建設計画が目白押しの状況です。
 特に広東省政府は、省全体の原子力発電設備容量を3,000万kWにするという計画を有しており、20年までに2,000万kWを開発し、原子力発電量を広東省の全発電量の20%にするとしています。
 現在、広東省内では、大亜湾原子力発電所(2基、最大出力196.8万kW)と嶺澳原子力発電所(第1期、2基、最大出力198万kW)が運転中で、陽江原子力発電所が建設中です。台山原子力発電所は、広東省内では4つ目の原子力発電所で、プロジェクト全体では2期に分けて4基を設置する予定で、総発電設備容量は700万kWになります。
 このうち第1期(2基)は、13年12月の運転開始を予定しており、単基容量は175万kWで世界最大です。第1期の年間発電電力量は約260億kWhで、南方電網へ供給されます。同発電所の建設により、年間の石炭消費量を約1,050万トン、温室効果ガス排出量を約2,270万トン削減できると報道されています。
 同発電所の発電事業者となる台山核電合営は、広東核電集団とフランス電力公社(EDF)がそれぞれ70%と30%を出資して設立された。登録資本金は167億4,000万元(1元=約13円)で、現在、国内の電力分野では最大の投資規模の合弁企業です。
 同発電所は中国と海外企業との共同設計、共同建設のモデルを採用しました。施工、デバッグ(プログラムの誤りの除去)、生産運営は中国側がメーンの役割を果たしますが、技術は主にフランス側が提供します。同発電所の主要設備の国産化率は50%以上、蒸気タービン発電ユニットの国産化率は3分の2に達する見込みです。