エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

三井物産はモザンビークで太陽光発電に協力

2010-03-22 19:38:09 | Weblog
 三井物産と国連開発計画(UNDP)は、モザンビークの「チブト・ミレニアム・ビレッジ」に太陽光発電を動力源とする灌漑用水ポンプ設備を建設する計画を発表しました。国連「ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト」の一環として行われるものですが、これは、国連ミレニアム開発目標(MDG)を達成するために、アフリカ大陸が直面している農業や水、衛生・医療といったさまざまな問題を抱えた農村にサービスを提供し、生活水準の向上や農村部の開発を行う取り組みで、モザンビークはその対象国の1つです。支援期限を5年と定め、住民の自立による生活改善を促すことを目標としています。
 三井物産 は、この計画の企画推進、太陽光パネルと灌漑ポンプなどの機材調達、技術導入の取りまとめなどを担当し、UNDP は、現地工事に必要な部材調達や建設完工までの工程管理、現地政府・コミュニティーとの調整や能力開発などを行います。
 モザンビークは、土地面積の約6割が農地。綿花やカシューナッツ、サトウキビなどを生産する農業国です。しかし、灌漑用地は耕作面積の2.4%しかなく、大洪水や干ばつの自然災害の影響を受けやすい状況です。また、国内のコメ消費量の約86.4%を輸入に依存しており〔国連食糧農業機関(FAO)、2006〕、食糧安全保障の観点からも農作物の生産量を高める灌漑設備の整備が急務となっています。
 灌漑ポンプの動力源として電力が必要ですが、モザンビークの電力インフラは十分ではありません。国際エネルギー機関(IEA)によると、電化率は11.7%(2008年)で、サブサハラ全体の平均28.5%より低くなっています。また電気へのアクセスがない人口も1,930万人(人口の約90%)と多く、そのほとんどが農村部に集中しています。内陸地に送電網を整備することは容易ではないため、今回の太陽光発電による電力供給には大きな意味があります。
 三井物産は今回の計画で、現在10ヘクタールの灌漑農地が約7倍に拡大し、メイズやコメ、野菜などの換金作物による収益は約15倍になると見込んでいます。同社は、当該支援地域での自立的・持続的な生活レベルの改善に貢献しながら、その結果や効果を検証していく考えです。
 三井物産は、MDG達成のために企業セクターが自主的に行動する「ビジネス行動要請:Business Call to Action(BCTA)」(UNDPと英国政府による貧困削減イニシアチブ)に、日本企業として署名している2社のうちの1社。08年5月に宣言書に署名後、今回の計画は同社にとって初のBCTAの主旨に沿う案件となります。
 同社は、モザンビークで石油・ガスの探査活動を行っており、これら本業を通して雇用創出などの地域貢献を行うとともに、今回のような社会貢献活動(CSR)にも取り組んでいます。自社の専門性や技術、ネットワークを途上国の貧困削減や経済発展のために活用することで、将来的にアフリカ開発や他社の事業活動のモデルケースとなることを目指しています。日本企業とUNDPの官民連携による新たな対アフリカ事業として、10年秋の稼働が待望されています。

EU新方針の基軸は「グリーンイノベーション」

2010-03-22 05:28:50 | Weblog
 欧州議会は2月9日、フランス・ストラスブールで開いた本会議で、新たな欧州委員会の委員候補者に対する信任投票を行い、一括して承認した。これを受けて、バローゾ委員長が率いる新たな欧州委員会は2月10日に発足しました。新欧州委員の任期は2014年10月31日までです。
 バローゾ委員長は、信任投票に先立ってスピーチを行い <こちらをご覧ください> 、再任された時の政治方針として、危機からの出口戦略、気候変動対策とエネルギー効率化に向けた取り組み、新たな成長戦略や社会市場経済回復に向けた結束強化、自由と安全を伴う欧州の構築、通商面などグローバルな欧州の取り組みを明示しました。
 EUでも「グリーンイノベーション」が強調されていることに注目したいと思います。

米連邦政府機関のCO2排出削減目標

2010-03-22 00:06:09 | Weblog
 米連邦政府機関が排出する温室効果ガス(GHG)を、2020年までに08年比で28%削減するという目標が取りまとめられました。10年1月末に気候変動枠組み条約事務局に提出した、国全体で20年までに05年比17%削減の目標を上回るものです。国内外で気候変動対策の法的枠組みの整備が遅れる中で、政府自らが模範となり、今後の取り組みをリードしていく狙いがあります。
 09年10月に発表された大統領令「環境、エネルギーおよび経済パフォーマンスにおける連邦のリーダーシップ」 <こちらをご覧ください> は、連邦政府機関に対し、20年度までに達成すべきGHG削減目標(基準年は08年度)を90日以内に定めて環境問題諮問委員会(CEQ)議長と行政管理予算局(OMB)局長に報告することを求めていました。これを受けて、期限までに各機関が削減目標を提出し、10年1月29日に35機関全体の目標を「20年までに08年比で28%削減」とすることが発表されたものです。
 オバマ政権は、この削減目標を達成することで、石油に換算して年間2億500万バレルのエネルギーを削減し、20年にかけて80億~110億ドルのエネルギー経費が削減できると試算しています。
 機関ごとの個別の目標値などは発表されていませんが、代表的な機関のGHG削減行動が例示されています<こちらをご覧ください> 。主なものは次のとおりで、再生可能エネルギー利用発電や低燃費車の導入、データセンターの省エネ化などの取り組みが行われます。
〔エネルギー省(DOE)〕
・核関連施設のサバンナ・リバー・サイト(サウスカロライナ州)の老朽化した石炭火力発電所と石油ボイラーに替えて、新たに国内最大級のバイオマス発電施設を建設する。年間10万トンのGHGが削減される。
・オークリッジ国立研究所(テネシー州)の天然ガスボイラーに替えて、新たにバイオマス利用の蒸気発生プラントを建設する。年間5万5,000トンのGHGが削減される。
・国立再生可能エネルギー研究所(コロラド州)のデータセンターで空調の改善、サーバーの整理統合などを行い、電力消費量を65%削減する。
〔環境保護庁(EPA)〕
・今後10年間のうちに、公用車を低燃費車、ハイブリッド電気自動車などに入れ替える。これによりガソリン消費を30%、GHG排出量も25%それぞれ削減できる。さらに、代替燃料利用車の導入などの効率化を図ることで、EPAの公用車全体でGHGを40%以上削減できるという。
・国立コンピュータセンター(ノースカロライナ州)で電力消費と冷却設備の点検・改善を行い、エネルギー消費量を15%削減し、エネルギー経費を年間10万ドル削減する。
〔内務省〕
・景気対策法の資金を利用して、テキサス州の4ヵ所の野生生物保護区などにソーラーエネルギー利用システムを設置する。
〔国防省〕
・空軍士官学校(コロラド州)に4メガワット(MW)のソーラー発電施設を設置し、送電線や給水・ガス管なども改善する。15年までにエネルギー消費量を38%削減し、再生可能エネルギーやグリーンエネルギーの使用割合を現在の10%から100%に高める。
・ごみ処理場からのメタンガスを利用し、海兵隊基地(ジョージア州)のエネルギー需要の22%(1,200世帯分の電力)を賄う。
・海軍の水上船としては初めて、ガスタービンと電気駆動の両方を用いるハイブリッドエンジン船を導入する。ミシシッピ州からカリフォルニア州まで航海した場合、同規模の通常の船と比較して燃料を90万ガロン(1ガロン=約3.8リットル)、金額にして200万ドル節約できる。
 大統領令は連邦政府機関に対し、排出削減目標の提出のほか、目標達成のための年次計画の策定や、物品供給者などの直接的に管理を行っていない排出源からのGHG排出削減目標についても報告するよう求めています。今後は、OMBが各機関の年次計画の内容などを確認・評価し、進捗状況を毎年公表するとしています。
 このような取り組みは、08年に245億ドルに上った連邦政府機関の電力・燃料費の削減に役立つだけでなく、今後の民間企業や地方自治体などの排出削減行動をリードしていくことになると見られます。