エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

フランスの炭素税導入違憲判決

2010-03-13 18:47:34 | Weblog
 2010年予算法の合憲性を審査していた仏憲法院は09年12月29日、同法に含まれている「炭素税」導入を「違憲」とする判断を公表しました。これにより、10年1月1日から石油、石炭、ガスなどの化石燃料の消費に課税される予定だった炭素税の導入は見送られることになりました。政府は憲法院の決定を受けて、1月20日に閣議提出される補正予算案の中に新しい炭素税法案を盛り込む意向です。
 化石燃料の消費に課税する炭素税は09年12月18日に成立した10年予算法に盛り込まれ、10年1月1日から発効予定だった。1リットル当たりの税率は軽油4.52セント(漁業向け消費は1.13セント)、ガソリンは4.11セント(同1.03セント)などで、一部の産業分野には免税または軽減税率が適用されていました。
 野党・社会党議員からの提訴を受けて同法の合憲性を審査していた憲法院は、炭素税について「温室効果ガス排出量の大幅な削減を促すため、企業や一般家庭、行政機関による化石燃料の消費に付加税をかけることが導入の目的としているにもかかわらず、発電所、製油所、セメント・化学工場、空輸など、エネルギーを大量に使用し温室効果ガスの排出量が多い部門が課税対象から外されている上、農業・漁業、陸上・海上運送業などに対しても特別軽減税率を適用している」点を指摘しました。
 その上で、こうした特別措置により「産業部門での温室効果ガス排出量の93%が炭素税の課税対象から除外されている。産業部門に対する炭素税の免税措置は、13年まで無償で排出許容量が付与されるEUの温室効果ガス排出量取引を理由に正当化できるものではない」とし、炭素税の課税システムは「地球温暖化対策という目的に反する上、税負担の公平性を欠く」と判断しました。
 フィヨン首相は、この決定を受けて発表した声明文の中で、憲法院が違憲と見なした免税措置について、「いくつかの業界の特別な経済状況、例えば厳しい国際競争にさらされている部門や、既に温室効果ガス排出量の削減規制に縛られている部門などに配慮したもの」と説明し、同税は「企業および一般家庭のエネルギーの消費行動を変えさせ、温室効果ガス排出量を削減させるために必要な措置だ」と述べた上で、憲法院の判断を踏まえた炭素税法案を1月20日に閣議提出する10年補正予算案の中に盛り込む方針を明らかにしました。
 ジュアノ環境担当相は閣議の後、国民議会(下院)・上院での審議を経て、10年夏までに炭素税を導入したいとしています。

英国政府のヒートポンプ式ボイラーへの買い替え促進クーポン制度

2010-03-13 06:43:30 | Weblog
 日本ではヒートポンプの導入促進策が検討されていますが、その参考となる英国政府の取り組みを紹介します。
 英国政府は2010年からボイラー買い替え促進策を実施し、条件を満たした各家庭に対して400ポンド(1ポンド=約147円)の助成を行うことで、エネルギー効率の低いボイラーから高効率ボイラーへの転換を進め、当面、年間14万トンの二酸化炭素(CO2)削減を目指しています。総額5,000万ポンド、12万5,000世帯分です。
 英国のうちイングランドでは、現在、効率の悪いボイラーを使用している家庭は350万世帯に上ると見積もられている。こうした非効率なボイラーを、新しく、近代的で、エネルギー効率の高い(A評価)ボイラー、あるいはバイオマス・ボイラーやヒートポンプ式のボイラーなど再生可能エネルギーを使用した暖房システムに買い替えることを促すため、政府は「エナジー・セービング・トラスト 」<こちらをご覧ください> を通じて400ポンドの割引が可能なクーポン券(注)を発行するボイラー買い替え促進策(Boiler Scrappage Scheme、「ボイラー・スキーム」) <こちらをご覧ください>をご覧ください> を実施する、と10年1月5日に発表しました。
 クーポン券を申請できるのは、イングランド在住の一般の持ち家所有者か大家に限定されています。なお、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドについては、各地方政府が同様のスキームを導入するか判断する予定です。
 09年12月に発表された10年度(10年4月~11年3月)予算案の編成方針「Pre-Budget Report 2009」では、エネルギー使用効率化の施策に確保した2億ポンドのうち、総額5,000万ポンドをボイラー買い替え促進策に充てることが新たに盛り込まれました。今回のボイラー・スキームの実施は、この方針を受けたものです。
 英国政府は、このボイラー・スキームによって、以下の効果を狙っています。
・景気刺激策として、13万人の設備導入業者と国内に拠点を置く25社のボイラーメーカーを支援
・買い替えによって1家庭当たり年間200~235ポンドの電気・ガス料金を削減(従来比15%以上の削減)
・12万5,000台のG評価ボイラーをA評価ボイラーに置き換えることで、年間14万トンのCO2を削減(4万5,000台分の自動車からのCO2排出削減に相当)
・家庭のエネルギー効率向上に役立つ一連の施策〔炭素排出削減目標(CERT)制度、ウォーム・フロント・プログラム、地域エネルギー節約プログラム(CESP)など〕と連携する。
 英国政府のボイラー・スキーム発表と合わせ、エネルギー供給国内最大手のブリティッシュ・ガス(親会社:セントリカ)と6大エネルギー供給事業者のNpower (親会社:E.ON)は、A評価ボイラーを自社から購入した場合、政府から受けられる割引額に加え、さらに同額(400ポンド)の割引(合計800ポンド)を行うと発表しました。
 
(注)ボイラー・スキームに該当する最初の12万5,000世帯の家庭に対して、1月18日からクーポン券を発券開始しています。各家庭は新しいボイラーの購入と設置費用を前払いし、有効期限内のクーポン券と請求書をエナジー・セービング・トラストに送付すると、400ポンドのキャッシュバックを受けられます。クーポン券は発券後12週間有効で、キャッシュバックはエナジー・セービング・トラストが必要書類を受領後、25営業日以内に実行されます。