エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

米大統領経済諮問委員会報告に見るクリーンエネルギー政策の効果とグリーンジョブ創出

2010-03-02 06:58:04 | Weblog
 米大統領経済諮問委員会(CEA)は2009年米国再生・再投資法(景気対策法、ARRA)」の経済効果に関する2回目の報告書 <こちらをご覧ください> をまとめ、公表しました。
 それによると、総額7,870億ドルのうち約3分の1に相当する2,633億ドル(減税も含む)が支出され、さらに、総額の2割弱に相当する1,497億ドルも支出可能になっており、全体の過半の実行にメドが立っているとのことです。
 報告は、オバマ政権が特に力を入れるクリーンエネルギー関連の施策の実施状況と雇用創出の効果を特別に取り上げて分析しています。景気対策法に含まれるクリーンエネルギー関連の施策は約900億ドル(支出607億ドル、減税295億ドル)で、対策総額の11%に達します。
 09年12月末時点で総額900億ドルのうち、既に割り当てが決まったものは34%にとどまり、景気対策全体の進捗状況と比べると、遅れています。さらに実際に支出されたのは51億2,000万ドルで、予定総額の5.7%にとどまっています。
 分野別で最も実施が進んでいるのが省エネルギー関連事業で、支出予定額の60%、119億ドルの割り当てが決まっています。省エネルギー関連では、低所得者層が住宅の省エネ化に取り組む際に最大6,500ドル補助するプログラム(50億ドル)や、州・地方政府などが実施する省エネルギープロジェクトへの補助金(32億ドル)などが代表的です。
 報告は、クリーンエネルギーの雇用創出効果も試算していますが、事業の進捗がまだ初期段階にあることもあって、09年第4四半期時点で、関連事業の直接的な雇用増が5万2,000人、これらの雇用増によって生み出された消費増などによる間接的な雇用拡大が1万1,000人と小規模にとどまっています。
 ただし、事業の実施が今後さらに進めば、12年末までに72万人の雇用創出を見込めるとしており、景気対策法全体の雇用創出効果680万人の10%超がクリーンエネルギー関連で生み出されると期待しています。
 米国経済全体の関しては、CEAの試算によると、景気対策法による実質GDP成長率の押し上げ効果は、09年第2四半期が2~3ポイント(年率換算、以下同じ)、第3四半期が3~4ポイント、同第4四半期が1.5~3ポイント。この結果、09年末時点のGDPの水準は約2%押し上げられたとしています。
 景気対策法の効果のピークは、実質経済成長率が前期比年率2.2%と5期ぶりにプラスに転じた09年第3四半期で、対策がなければプラス成長に転じる時期は1四半期ほど遅れていた可能性もあったとしとしています。失業率が当初想定していた最大8%を大きく上回るなど、規模が不足していたとの批判はあるものの、対策の実施時期自体はおおむね適切だったといえます。
 ただ、09年第4四半期の押し上げ効果は、ピークの半分程度にまで減少しています。今後は支出ペースが鈍化するため、効果はさらに薄れていく見込みです。10年半ばにも景気対策の押し上げ効果がなくなる、との民間シンクタンクの各種試算ともおおむね整合していますが、10年の効果の見通しや追加策の必要性などについて、報告書は特に言及していません。
 雇用面では、同対策がなかった場合と比べて、09年第4四半期時点の雇用者数が150万~200万人増えたと試算しています。非農業部門雇用者数は、07年12月の景気後退入りから09年12月までの2年間で724万人失われており、国民の注目が集まる雇用面での成果は十分とは言えません。
 産業別では、景気悪化に伴い雇用が大きく減少する傾向にある産業ほど大きな恩恵を受けたと試算しています。人材派遣業を含む企業向け専門サービスで最大の51万人(全体の雇用増に占めるシェア25%)の雇用増効果があったほか、小売り・運輸・公益の46万人(22%)、自動車などの耐久財を含む製造業の35万人(17%)、建設業の26万人(13%)などの産業が大きな恩恵を受けました。
 州別では、a.人口が多い、b.景気に敏感な製造業などの産業を多く抱える、c.失業率が高い、といった要素がそろう州で雇用創出効果が大きいと分析し、カリフォルニア州(25万6,000人)、テキサス州(14万7,000人)、ニューヨーク州(14万1,000人)、フロリダ州(11万2,000人)の4つの州で10万人超の効果があったと報告しています。