エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

EU-ETSの今後の展開

2010-04-17 20:32:56 | Weblog
 EU-ETS(EU Emission Trading System)は、2005年1月にスタートした世界初の温室効果ガス排出に関わる国際的な取引システムです。京都議定書で定められた温暖化ガス削減目標を達成する手段のひとつとして、EUが独自に行っているもので、経済成長等への影響を最小限に抑えつつ、EU域内の温室効果ガス削減を効率的に進めることを目的にしています。
第1段階のコミットメント期間は2005~2007年の5年間(対象となる温室効果ガスはCO2)、第2期間は2008~2012年の5年間(メタンやフロンなど他の温室効果ガスも対象とする)、2013年からは第三期間に移ります。
排出枠取引のスキームは、2004年秋までにEU加盟国が登録簿を用意するよう義務付けられ、割り当てられた排出許容量を達成できた企業と未達成の企業間で排出権を売買できるという仕組みです。
EU25カ国内の燃焼プラント、精油所、コークス炉、鉄および製鋼所、およびセメント、グラス、石灰、レンガ、セラミックス、パルプおよび紙を作る工場より合計12,000を越える発生源をカバーしています。
第三期間に関しては、欧州委員会が2008年1月23日に提案したEU-ETS第三期間に向けた制度改定を含む「気候変動・エネルギー政策パッケージ」が同年12月17日に欧州議会で、2009年4月6日にはEU閣僚理事会で採択されました。
第三期間における排出量取引の特徴は、次の通りです。
第1に、石油化学品、アンモニア、アルミニウムの生産におけるCO2の排出と、硝酸、アジピン酸、グリオキシル酸の生産における亜酸化窒素(N2O)の排出、アルミニウム生産におけるパーフルオロカーボンの排出、CO2回収・貯留(CCS)を新たに対象とすることとなりました。
ただし、中小企業の負担を軽減するため、加盟国には、CO2排出量が過去3年間の平均で2万5,000トン未満の施設については対象外とすること(オプトアウト)が認められています。燃焼施設については、これに加えて、定格熱入力が35MW未満の場合のみとする条件があります。
なお、航空分野については、加盟国内の空港に発着する全便から生じる温室効果ガス排出量を2012年から対象とするための改正指令2が2009年2月2日に発効しました。
第2に、産業界にとっての予測可能性を考慮し、取引期間は従来の5年間から8年間に変更しました。
第3に、排出権の割当方法を変更します。第一期間と第二期間では、制度の柱として加盟国が国内割当計画(NAP:NationalAllocation Plans)によって排出権の割当総量と施設への配分方法を決める方式をとってきていますが、各国の割当方法に大きな差が出るため公正さに欠け、制度が複雑になるなど、多くの問題が指摘されてきました。
このため、加盟国間の割当ルールのばらつきを避ける観点から、第三期間からはNAPを廃止し、EUレベルでキャップ(排出枠上限)を設定するアプローチへと移行します。
第三期間はEU全体のキャップを第二期間平均から毎年1.74%ずつ削減し、2013年の19億7,400万CO2換算トンから2020年には17億2,000万CO2換算トンに引き下げます。これは2005年比で21%削減に相当します。第三期間中のキャップの年間平均は、第二期間のキャップから11%の削減につながる18億4,600万CO2換算トンとなります。
第4に、取引制度の効率と透明性を高め、制度をシンプルなものとする観点から、原則的に有償割当(オークション)に移行します。
第1フェーズでは全体の95%、第2フェーズでは全体の90%とこれまではほどんどの排出枠が無償で割当てられてきましたが、今回の改正により、2027年までに段階的にオークションに全面的に移行することが決まりました。
移行期間として一部に無償割当を行いますが、無償割当はEU共通のルールに基づいて実施することになります。産業部門別に同じ活動を行う施設に対しては同じルールを適用する方式となる予定で、欧州委員会が2010年末までにルールを策定します。
発電部門では2013年から原則的にオークションに移行しますが、電力送電網の相互接続の状況や発電における石化燃料の割合、国民一人当たりのGDPなど一定の条件を満たす加盟国政府は、既存の発電施設に関しては全面オークションの適用除外とすることができます。その場合も、2013年に2005~2007年の検証済み排出実績の30%以上をオークションとし、2020年までには段階的に全面オークションに移行しなければなりません。この適用除外制度を利用する加盟国政府は、無償割当される排出枠の市場価値にできるだけ近い額を、電力インフラの改善やクリーン技術、エネルギーミックスとエネルギー供給源の多様化に投資する義務を負います。
第三期間から新たに制度対象となるCO2の回収・貯留(CCS)については、CO2を回収し地中に封じ込めることが排出削減に相当するとみなし、排出権の償却を行わなくてよいインセンティブが設けられたため、排出枠の無償割当は行われせん。
これら以外の産業部門では、2013年にオークションの割合を20%とし、その後2020年に70%、2027年に100%と段階的に全面オークションへと移行します。ただし、これらの産業部門でも、一部、無償割当が継続される部門があります。すなわち、EU域外企業との競争が厳しい産業は、排出権取引制度を持たない国に比べて生産コストの面等で不利になり、域外に生産を移管するリスクがあり、こういった産業では全面オークションの適用除外となります。
このようなリスクは「カーボンリーケージ(carbonleakage)」と呼ばれ、欧州委員会は2009年末までにカーボンリーケージの影響の大きい産業部門を特定する予定となっています。発電部門については、EU-ETSのコストが電力価格に転嫁されれば一部の発電施設もカーボンリーケージのリスクがある場合があり、このようなリスクを回避するため、加盟国政府はコスト上昇を補助できることとしています。
オークションにかけられる排出枠の加盟国への配分では、まず全体の88%を、各国の第一期間の排出実績に沿って配分します。次に、残る12%のうちの10%を、経済的に後れている加盟国の低炭素経済の実現を支援することを目的(EUの「結束・成長」の目的)に、経済格差を考慮して一部加盟国に追加で配分します。さらに、残る2%は、早期に排出削減を進めた国として、2005年の排出実績が基準年の実績を20%以上下回った加盟国に配分されます。これらの追加割当がない国はデンマーク、ドイツ、アイルランド、フランス、オランダ、オーストリア、フィンランド、英国の8カ国となります。
オークション収入の使途について、加盟国政府は50%以上を一定目的に使用するよう求められています。使途は、グローバル・エネルギー効率・再生可能エネルギー基金(Global
Energy Efficiency and Renewable Energy Fund)や適応基金(AdaptationFund)への拠出、再生可能性エネルギーやCCS、エネルギー効率、クリーン技術等の技術開発支援などが挙げられています。
第5に、制度への新規参入者(施設ないし航空会社)向けにEU全体の排出枠の5%が留保されていますが、CCSおよび革新的な再生可能エネルギーの実証プロジェクトを支援する目的で、当該留保分のオークション収入の一部が最大12の実証プロジェクトの建設・運営費用に充当されます。
第6に、EU域外国におけるクリーン開発メカニズム(CDM)および共同実施(JI)の排出削減プロジェクトからのクレジットについて、2008~2020年のEU全体での削減量の50%を上限に設定しています。

前原国交相「住宅建築物の省エネ基準強化とエコポイント拡充」

2010-04-17 06:03:57 | Weblog
 16日の前原国交相の記者会見での発言は、以下の通りです。住宅建築物の「ネットゼロ・エネルギー化」に向けた動きが今後本格化します。

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 住宅建築物の省エネ対策につきましてのこれからの取組についてお話をさせていただきます。
 これまでも住宅エコポイント等の普及促進に取り組んでまいりましたけれども、地球温暖化対策としてその取組としては、新築の住宅、建築物の100パーセントを省エネ化することを目指して、省エネ基準への適合を義務づけていくことが今後必要だと考えております。
 このように住宅建築物の省エネ化を加速させるために新たな投資を促して、住宅市場の活性化にも繋げていきたいと考えております。
 具体的には住宅エコポイントの拡充と省エネ化の普及促進策を一段と強化をして、省エネ基準の適合率を引き上げていく、更には将来の省エネ化の義務付けを視野に入れまして、省エネ化の状況等を見極めつつ大規模建築物等から段階的に実施をするといった手順で取組を進めていくことが大事かと思っております。
 本日、閣議の前に直嶋経済産業大臣とお話をいたしまして、今後は両省が提携をしてやっていこうということで環境省との協力のもとに、有識者や実務者等によります住まいのあり方や住まい方も含めまして、これからの取組の方向付けや具体的施策の立案に向けての方向性、省エネ基準の義務化に向けて、その対象時期、支援策等について検討する場を設けて本年内にも成案を得ることを目指すということにしております。
 今、1,000億円の住宅版のエコポイントというものがございますけれども、これを経済産業省、環境省と3省でやっておりますけれども、もう少し、例えば太陽光パネルとかコジェネとか、いろいろなところも含めて将来的には100パーセントの省エネ住宅を目指していくと、また今は省エネ住宅の観点でありますけれども、耐震化も勿論バリアフリー化もしっかりとやっていくということで住宅改良のインセンティブをいろいろなかたちで設けて投資を促し、住宅市場の活性化とともに、エコ、そして耐震面での安全、そしてバリアフリー、高齢化社会への対応、こういったものをしっかりと進めていきたいと考えております。