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祐さんの散歩路 Ⅱ

日々の目についたことを、気ままに書いています。散歩路に咲く木々や花などの写真もフォトチャンネルに載せました。

・ 近いうちに世界規模の破たんが起こる

2015-07-29 22:06:49 | 社会・経済・政治

世界的なアメリカの投資家ジム・ロジャー氏が世界の経済について話しています。日本だけではなくアメリカ・イギリスなども人為的にお金を大量に刷っていることが、今後の経済に悪影響を及ぼすと指摘しています。
以下、ブログ「杉並からの情報発信です」より転載。



米投資家ジム・ロジャー氏[近いうちに世界規模の破たんが起こる]インタビュー記事全文書き起こし!
2015-01-06 14:54:09 | 政治・社会
東洋経済

【情報拡散】■米投資家ジム・ロジャー氏のインタビュー記事全文書き起こし
 (週刊東洋経済12/27新春合併号)


▲行きすぎた紙幣増刷は世界に何をもたらすか?


世界中を旅し「冒険投資家」の異名を取る米投資家ジム・ロジャー氏が、行きすぎた金融緩和で世界は重大な危機に直面していると警鐘を鳴らす。


東京オリンピックまでの世界経済をどう見ていますか。

安倍晋三首相がおカネを大量に刷らせているから、日本経済は当分の間、景気がいいでしょう。しかし東京オリンピック前に状況が悪化し始め、日本のみならず、世界のほぼ全土経済が破綻するでしょう。2020年までにまでに少なくとも1回は世界規模の破綻が起こります。米国や欧州など多くの国々で、今後6年の間に問題が起こるでしょう。正確な時期はわからないが、たぶん16年か17年でしょう。


ー つまり国債が暴落すると?

そうです。国債が大暴落し、金利が上がります。株価も暴落します。今すぐにというわけではありませんが、20年までに起こるでしょう。世界規模の経済問題が発生し、ほぼすべての人が影響を被るでしょう。

お金を大量に刷っている間はそれを享受している人たちの暮らし向きはよくなります。しかし、いずれは破綻へと向かい、すべての人が苦しむことになります。金融緩和でいい思いをした人たちも一緒です。安部首相は円安誘導で日本を破滅に追い込む


ー なぜ破綻が起こるのですか

大半の国々では4~6年ごとに経済問題が発生しています。だから、もうじき、いつ起こってもおかしくない状態になります。

今の景気浮揚は、日本や米国、英国など欧州の国がおカネを大量に刷ったことによる人為的なものです。一部の人たちはいい思いをしているが、政府債務の大きさゆえ、いったん破綻が起こると、通常より大規模なものになります。過去6年というもの、政府債務が膨らみ、天井知らずの状態です。米連邦準備制度理事会(FRB)も、安部首相も、日本銀行も、(世界経済にとっては)非常に危険な存在です。


ー 破綻を回避する道は

今のところ、防ぐ手立てはありません。(何をしても)非常に悪い状態になるか、少しましなものになるかの違い程度でしょう。いずれにせよ、世界経済は破綻します。
(世界が)今すぐにおカネを刷るのをストップし、そのおカネを使わないようになると、それはそれで問題が生じます。とはいえ、(金融暖和を)あと2年続けると、状況は今よりはるかに悪くなります。

日本は減税をし、大型財政支出を打ち切るべきです。人口問題対策も講じねばなりません。どうせやらないでしょうがね。仮にやったとしても、問題は起こります。しかし、(何もしないと)16~18年に事がうまく運ばなくなったとき、問題が表面化するでしょう。


ー これほど厳しい話を聞くとは思いませんでした。

私も、こんな話はしたくありません。現実でなければいいと思います。しかし、これが現実なのです。こうなってほしいという希望を言うのではなく、事実を受け入れなければなりません。安部首相は、「日本を破滅させた男」として、歴史に名を残すでしょう。投資の世界の人たちや、(金融暖和で)おカネを手にしている人たちにとっては、しばらくは好景気が続くでしょうが、安部首相が過ちを犯したせいで、いずれわれわれ皆に大きなツケが回ってきます。米国でも同じことが起こっています。そして、いずれは誰もが苦しむことになります。


ー日本は、東京オリンピックがあるから、少しはマシ?

いや、逆かもしれません。オリンピックで大量におカネを使い、債務が増えていくため、状況が悪化する可能性があります1億2000万人強の日本の人たちを、オリンピックで救うことはできません。



ー日本や欧米には、それぞれどのような問題がありますか

いずれも巨額の債務を抱えています。それが主な問題です。日本には(豊富な)外貨準備高があるが、国内債務(内国債)がものすごい。米国は、対外債務も国内債務も膨大です。米国は世界一の借金国で、状況は悪化の一途をたどっています。一方、欧州は、国内債務が非常に多いが対外債務はそうでもありません。

日本について言えば、安部首相がやったことはほぼすべて間違っており、これからも過ちを犯し続けるでしょう。いつか目が覚めるかもしれませんが、それも怪しいものです。



ー 円安誘導が、間違っている?

最悪です。短期的には、一部の人が恩恵を受けますが、自国通貨(の価値)を破壊することで地位が上がった国はありません。この2~3年で、円は対ドルで50%も安くなりました。このことが日本にとってよいはずがありません。

市場開放を急ぐ北朝鮮 インドもロシアも買い


ー 以前、北朝鮮に全財産を投資したいと言っていましたね。

私は米国市民なので実際は無理でしょうが、北朝鮮に多額のおカネを投資したいです。今の北朝鮮はすこぶるエキサイティングな国です。1980年当時の中国、10年のミャンマーのように、速いペースで市場を開放しています。

(国内の)「自由経済貿易地帯」も14カ所になりました。14年は、国際マラソン大会や国際レスリング大会も開催されました。2カ月ほど前に人生2度目の北朝鮮訪問をしましたが、北朝鮮は大きな変貌を遂げています。2年間に訪れたときは見かけなかったが、今では携帯電話を手にしている人があちこちにいます。

朝鮮半島は5年以内に統一されるでしょう。日本や米国の政治的プロパガンダに耳を傾けてはダメです。ロシアと中国は、北朝鮮に多額の投資をすでに行っています。



ー 階級制度の強いインドには今も希望がない?

新指導者が誕生したので、つい最近、私の長い人生で初めてインドに投資を行いました。(モディ首相は)いろいろいいことをアピールしています。もっとも近いうちに成果が出なければなくこれまでのインドと何ら変わらないわけですが。



ー ロシアはどうですか?

66年に初めてロシアを訪れたとき、悲観的な思いを胸に同国を後にしました。その後46年間、その思いは変わりませんでしたが日本2年前、ロシア政府に変化が起こっていることに気づき、生まれ初めて同国への投資を始めました。

ロシアは株式市場として毛嫌いされていますが、(株価には)割安感があるし、市場も変わりつつあります。(欧州最大手のロシア系肥料メーカー)フォスアグロの株をモスクワ取引所で買いました。私は現在、フォスアグロの役員を務めています。今回の日本滞在後、モスクワに飛び、初めて同社の取締役会に出ます。プーチン大統領は、モスクワ証券取引所を(世界の)金融センターにしたいと言っています。レーニンとスターリンの第二の故郷を、です(笑)。本当にプーチンがやってのけるかどうかはわかりませんが、私が、証券取引所の株に多額のおカネをつぎ込んでいることは確かです。



ー 以前「米国は世界の警察をやめるべき」と言っていました。オバマ大統領は実際そう宣言しました

米国がおカネを大量に刷るのをストップし、(世界の)人々に対し何をすべきか、あれこれ言うのをやめるとしたら、世界にとっても米国にとっても素晴らしいことだと思います。しかし、私はオバマ大統領のことは信じません。

多くの米国人は「米国が他国にあれこれ指図すべきだ」と思っています。私は、そう考えない少数派の一人です。「米国の言うことを聞くべきではない」と考える人たちが世界中で増えているのに、大半の米国人は今でもそう思っています。

日本でも「米国に指導してもらうべき」だとみんな考えているのでしょうが、それは間違い。自分で考えるようにしなければなりません


ー 大学の専攻は哲学でしたね。

自分の頭で考えるようになるから哲学は大事。多数派に付和雷同するより、独力で考えるほうが投資でも成功しやすいものです。しかし残念ながらほとんどの人は自分の頭で考えていません。政府やメディアの言うことをやみくもに受け入れているだけです。



ー 日本人は自分のことを自分で決められるようになる?

そうなってほしいですが、今のところ、そうは見えません。日本はアジアの国々と貿易をして共に豊かにならなければならないのに、領土問題で対立しています。

(構成・在米ジャーナリスト: 肥田美佐子)

・ TPP、実はアメリカでも反対運動が激しくなっている

2015-07-29 19:13:49 | TPP


アメリカの衰退を感じているグローバル企業は、国が衰えても自分の企業が残ればいいと考えています。TPPの問題の一つが「ISDS条項」ですが、1企業が相手国を訴訟に持ち込める条項になっています。相手国に何かを売ろうとしたときに、相手国の政策が問題で利益を確保できなかった場合、その得るべき利益を相手国に損害賠償請求出来るのです。そしてアメリカ企業はほとんど勝っています。負けた国は損害賠償を支払うわけですが、それは国民の税金・・・・・企業にとって、海外に進出することで利益の拡大が図れますが、海外の企業が損害賠償を求めてくるのは国なので、企業には損はありません・・・・

もう一つ問題なのはモンサントの遺伝組換え作物が入ってくること。モンサントは国を訴え、商品に表示されている「遺伝子組み換えは使っておりません」の文字を消させるでしょう。そうすると、もうすべての食材に遺伝子組み換え作物が入り込むことになります。

TPPについてはアメリカでも反対の声が上がっております。そのことに関して MEG2 NEWS で書かれたものがありますので転載します。




オバマ

日本国内はおろか、アメリカでも反対運動が高まるTPP。早期締結に向け、あらゆる手段を講じているように見えるオバマ政権ですが、国際情勢解説者の田中宇さんは「オバマはTPPが否決されるようひそかに誘導しているのでは?」と見ます。その論拠は?


大企業覇権としてのTPP

米国で、米日豪ASEANチリなど12カ国で交渉中のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に対する反対運動が、交渉開始以来、最大の盛り上がりをみせている。TPPは、米国などの大企業が米政府を動かして交渉させており、交渉が非公開・秘密裏に行われ、交渉中の条約文案は機密文書で、条約文案を各国の議員が見ることすらほとんど許されていない。大企業(財界)の影響を受ける国会議員やマスコミの反対も少ない。秘密裏の交渉なので問題点が見えにくく、反対運動も盛り上がりにくかった。

米国は、アジア太平洋諸国と締結しようとしているTPPと、欧州と締結しようとしているTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)という、本質的に同一な2つの貿易圏を並行して交渉中で、早ければ今年中に締結される見通しだった。両方が締結されると、世界の米国の同盟諸国の全域をおおう「自由貿易圏」ができあがる。「自由貿易圏」と呼ばれているものの、実体は、国際的に影響力を持つ大企業が、加盟諸国の政府の政策に介入したり楯突いたりできる「大企業覇権体制」が構築される。

TPPとTTIPをめぐる問題点はいくつかある。最大のものは、加盟国の政府の政策が国際的な標準と合致せず、これによって、外国企業が不利益を被った場合、企業は特別な国際法廷(仲裁機関)にこの件を提訴して政府に賠償金を払わせたり、政策を無効にすることができるというISDS(投資家対国家間の紛争解決)だ。TPPとTTIPの国際法廷は、ワシントンDCの世銀本部に設置される構想だ。この国際法廷は、国家主権より上位に位置する。国家主権を最も上位の権力と(建前的に)みなしてきた近現代の国際法の根幹をくつがえすものだ。欧州では、TTIPを締結すると遺伝子組み替え種子を開発する米国のモンサントがEUの規制を打ち破る提訴をすると予測されている。

このほか、かつて米国で「SOPA」などとして検討された、動画など著作権違反のコンテンツを掲載するウェブサイトを(DNSの変換対象から除外し)インターネット上から抹殺することを可能にする条項も、TPPやTTIPに含まれている。著作権違反の取り締まりと称して、ネット上の言論抑圧を大っぴらにやれるようになる。


これまで弱かった米国でのTPPの反対運動が、交渉がまとまりそうな土壇場の今ごろになって急に盛り上がった一因は、欧州でTTIPに対する反対運動が盛り上がったことからの影響だ。EUでは今年初めから、TTIPのISDS条項などが国家主権や民主主義を無視していることが問題視され、反対運動が盛り上がった。

3月末にウィキリークスが、交渉中のTPPの条文案の一部を入手して公開した。このことも、米欧での反対運動の激化につながっている。ウィキリークスは、TPPの条文が29章からなり、そのうち5章しか貿易に関連していないことも暴露した。残りの章は、大企業の国際活動を有利にするためのものだ。

米国では今年3月ごろから、米国の労働組合がTPP締結によってアジア企業に雇用を奪われるなどとして反対を強め、労組との結びつきが強い米民主党内でTPP反対運動が強まった。民主党の大統領であるオバマは、党内の反対を鎮めようとしたが逆効果だった。

オバマはおそらく当選前にTPPとTTIPの締結に向けて努力することを条件に大企業の支持を得ており、TPPなどを積極的に推進している。米2大政党の中では、大企業(財界、金融界)の代理勢力である共和党がTPP・TTIPの推進派だ。対照的に、労組や市民運動を支持基盤とする民主党は反対派だ。オバマは、自分の政党の支持を得られず、野党である共和党と組んでTPPを推進するという、ねじれ現象になっている。

TPPの前身(同質)の多国間貿易協定として、米国の民主党クリントン政権が1998年にカナダ、メキシコと締結したNAFTA(北米自由貿易協定)がある。NAFTAの時も、今回と同様、与党だった米民主党が反対し、クリントン大統領は共和党と組んでNAFTAを可決した。その後、米国の雇用市場は縮小し、賃金上昇も抑制された。労組などは、これをNAFTAのせいだと批判し、今回NAFTAの時の失敗を繰り返したくないとして、TPPに反対している。

4月末に日本から安倍首相が訪米して米議会で演説したが、これはオバマ政権がTPPに積極的な日本の首相を呼んで演説させることで、TPPに反対する米議会の民主党に影響を与えようとしたものだ。日米は、安倍訪問時に日米間のTPP交渉を妥結することを狙ったがうまくいかず、米国のTPP反対運動はむしろその後加速した。

オバマ政権は、米議会が、TPPの交渉をオバマに一任する交渉の「ファストトラック」化を求めている。これが実現すると、議会は交渉に参加できず、一任されたオバマが交渉に成功した場合、交渉結果としてのTPPの協定条文を一括して可決するか否決するかの選択肢しか与えられず、条文の一部改定が許されなくなる。オバマ政権は、夏休み前の6月中に、議会にファストトラック法案を可決させようとした。財界(大金持ち)との結びつきが強い上院は、5月にファストトラック法案を可決した。しかし、下院は審議がもめている。

TPPは、大企業が国家主権をくつがえせる国際法廷ISDSなど、国家主権を発動する組織である議会が猛反対しそうな要素を含んでいる。有権者(国家の主権者)より献金者(企業)を重視する議員が多い中、うまくやれば、国家主権を制限して企業に権限を移譲するTPPの実現が可能だが、それには国民やその代表である議員がTPPの本質を知らないままであることが必要だ。そのためTPPの条文案は米国で国家機密とされ、議員が希望すれば条文案を閲覧できるが、閲覧した内容を他人に伝えることを禁じられている。議会の特別な地下室で、当局の職員が同席する中の閲覧で、メモをとることも許されない。

議員は閲覧の際、機密保持の要件(セキュリティクリアランス)を満たした側近を連れていけるが、機密保持要件を満たす側近は軍事や安全保障の専門家が多く、貿易協定の専門家が少ない。専門家の側近を連れずに議員1人で閲覧しても、協定の条文案は専門用語が多く、意味を把握しきれないことが多い。TPPなど貿易協定の条文は、細部や脚注が重要なことが多く、何人もの専門家が数日がかりで検討しないと問題点を指摘できない。米議員は、TPP条文の吟味を事実上禁止されている。

米当局は通常、機密保持のため、誰がいつ機密文書を閲覧したか一覧表(ログ)を残すが、当局はTPP条文案の閲覧ログの公開を拒否している。米民主党幹部が聞き回ったところによると、米議会上下院の合計500人以上の連邦議員の中で、条文案を閲覧したのは10人未満だという。総勢54人の上院共和党議員の中で、条文案を閲覧したことを認めているのは2人だけだ。下院の219人、上院の62人がTPPのファストトラック法案に賛成したが、彼らのほとんどは、条文案も見ずに法案に賛成したことになる。

オーストラリアでも、国会議員にTPP条文案を閲覧させることになったが、閲覧から4年間は、その内容を他人に話すことを禁止されている。日本では、国会議員に条文案を閲覧させることが検討されたが、機密保持の法律を整備していないため、閲覧した情報を漏洩した議員を処罰できないとわかり、閲覧させないことにした。日本の国会は、条文案を全く閲覧せずにTPPを議論している。

他国との交渉で、議会が交渉内容を吟味せず、大統領に交渉を一任することは、米国で昔から行われていた。ファストトラック関係の法律は米国で1970年代からある。しかし今回は議会に対する軽視があまりにひどかった。TPPが、ISDS条項など、国家主権つまり議会の立法を超越する超国家的な国際権限(つまり覇権)を持つがゆえに、議員に条文も見せずに交渉を大統領に一任しろと言ってくるやり方に、各方面から反発が出た。

5月後半、FT紙は「米政府はTPPの交渉を公開でやるべきだ」とするハーバード大の学者の主張を掲載した。民主党系の著名な経済学者ジョセフ・スティグリッツは同時期に「TPPは、企業が秘密裏に国家主権を乗っ取る構造を隠し持っている」と酷評した。200万人の反対署名が集まり、米政府に提出された。

反対運動が盛り上がる中、6月12日に米議会下院でTPPに関する票決が行われた。TPPのファストトラック化の法案と、TPP(など貿易協定全般)による米国民の失業増を見込んだ雇用支援策の法案を抱き合わせにして票決した。ファストトラックは共和党が賛成、民主党が反対する傾向で、雇用支援策は民主党が賛成、共和党が反対する傾向だったので、抱き合わせて1つの法案にすることで可決の可能性を高める策略だったが、ファストトラックを可決したくない民主党の議員たちは、雇用支援策にあえて反対することで、抱き合わせ法案を否決に追い込んだ。

2つの法案を別々に票決していたらファストトラック法案は可決されていたはずなので、共和党はファストトラックのみの再票決を求めたが、民主党の反対で実現しなかった。オバマは民主党議員団と話し合い、議会が夏休みに入る直前の7月末までファストトラックに関する議論を6週間続けることを決めた。

春以降、時期が経つほど米国内でTPPへの反対論が強まっている。今後の6週間で、TPPの交渉を大統領府(ホワイトハウス)による非公開の国際協議に一任(ファストトラック化)することに反対する米国民の世論がさらに強まり、ファストトラック化が否決されるかもしれない。そうなると米政府は、貿易協定からほど遠く、米大企業の覇権強化策である、とんでもない内容のTPPの条文を機密解除して米議会で公開審議せざるを得なくなる。米国がTPPの署名や批准を拒否する可能性が増す。

米国のマスコミの一部は、米国がTPPを否決するとアジアの貿易を無法な中国に乗っ取られ、法治や民主主義や環境を守る主導役である米国がアジアから追い出されてしまう、TPPが創設できれば中国を弱体化させられる、と喧伝している。しかしFT紙は最近「TPPを作っても中国を弱体化できない」「米政府は最近まで、中国は経済の市場化が不十分なのでTPPに入れないと言っており、TPPを中国封じ込め策だと言っていなかった」と指摘する記事を出している。

一貫してTPPに反対してきたハフィントンポストは、中国脅威論に絡めてTPPを売り込む冷戦型の扇動報道を非難し「中国の脅威と無理矢理に結びつけないとTPPの必要性を説明できないこと自体、TPPがいかに不必要なものであるかを示している」と書いている。

TPPの兄弟分である米欧間のTTIPに関しても、ここにきて欧州での反対運動が急に盛り上がっている。欧州議会は6月10日、TTIPについての議論を計画したが、超国家法廷ISDSの設置を定めた条文の削除を求めるものなど、200件以上の修正動議が出され、否決されそうな流れになったので、欧州議会の2大会派(保守派と中道左派)が談合し、予定されていた議論を無期延期した。

欧州議会ではこれまで、2大会派が談合し、TTIPをろくに審議しないで可決してしまおうとする動きが続いてきた。TTIPに反対していたのは、英国の反EU政党UKIP(イギリス独立党)など、保守とリベラル(左派)の2大会派に属さない少数派だけだった。ところが今年2月ぐらいから、左派の間で、TTIPが大企業覇権の拡大策であることに気づいて反対する動きが強まった。

5月に入って欧州各国の左派勢力が賛成から反対に転換し、6月3日、TTIPをろくに審議せず可決するという2大会派間の談合を左派が破棄し、欧州議会での談合体制が崩れた。6月10日に審議しても大荒れになり、否決される見通しになったため延期された。米国同様、欧州でもTTIPに対する反対運動が強まる一方なので、欧州議会がTTIPを可決する可能性は低くなっている

TPPとTTIPに反対する人々が最も強く批判しているのは、超国家法廷ISDSの設置に関してだ。ISDS自体は、目新しいものでない。1980年代から、各国間の貿易協定にISDSがつけられる傾向だ。これまでISDSは、貿易協定を結ぼうとする2国(多国)のうち強い方の国が、自国の企業を有利にし、相手国の政策を無効にできる内政干渉的な道具として使っていた。

たとえばオーストラリアの場合、82年の対ニュージーランドと、03年の対米の貿易協定には、豪州の反対でISDS条項が入っていない。だが、シンガポール、タイ、韓国、ASEAN、香港、アルゼンチン、インド、ハンガリー、ベトナムなど、他の諸国との貿易協定には、すべてISDSが入っている。豪州は、自国より立場が強い(または対等)な国々との貿易協定にはISDSを入れたがらず、自国より弱い国々との貿易協定にはISDSを入れている。ISDSは、自国より弱い国々との貿易戦争において、相手国の市場をこじ開ける武器であり、自国より強い国との貿易協定にISDSを入れてしまうと、それは自国を攻撃する相手国の武器になってしまうので、ISDSを入れることを拒否する。それが豪州の貿易戦略だった。豪州は、TPPの秘密交渉でも唯一ISDSを入れることに反対してきたことが、ウィキリークスの条文暴露によって明らかになっている。

つまりISDSはこれまで、国家(政府)が自国企業に力をつけさせてやるための道具だった。この延長で考えると、TPPとTTIPにISDSがついていることは、2つの貿易協定の参加国で最も強い国、つまり米国の企業が、他の参加国の政府の政策を無効化して市場をこじ開けるための道具としてISDSが使われることを意味する。これだけなら「米国がまた覇権を乱用している」という、昔ながらの話で終わる。

しかし今、米国の覇権は衰退期に入っている。今後、米覇権はさらに衰退するだろう。そのような中で今、米国の大企業がオバマ政権や議会に強い圧力をかけてTPPとTTIPという、西側世界を網羅する「貿易協定」(という名の企業覇権体制)を創設しようと急いでいるのは、米国の覇権が衰退した後も、米国企業が、西側諸国の政府の政策に介入し、市場をこじ開けるISDSという道具を持ち続けるためだろう。米国覇権が衰退していないなら、米財界は急いでTPPやTTIPを作る必要がない。

大企業は従来、米政府や議会にロビー活動(献金や圧力)を行って、米国の国際戦略や国内政策を企業好みのものに変質させてきたが、米国の覇権が衰退すると、この手のロビー戦略が有効でなくなる。だから、ロビー活動で政府をあやつるのでなく、大企業が政策立案者を政府内に送り込み、TPPやTTIPの機密の条文を非公開で作成し、それを欧州やアジアの米同盟諸国に押しつけようとしている。米覇権衰退を受けた、米大企業による「米国覇権の乗っ取り」「米政府の乗っ取り」が、TPPやTTIPの本質だ。

今のところTPPやTTIP(ISDS)で得をするのは米国の大企業だが、今後米国覇権が衰退していくと、米国以外の大企業がISDSを武器に使い、米国の政策を無効化する場合があり得る。前述の豪州の場合、自国より弱いはずの香港との貿易協定に盛り込まれたISDSを使い、タバコ会社のフィリップモリスが豪政府のタバコの箱のデザイン規制の法律を無効化(賠償請求)すべく、提訴してきた。TPPやTTIPは、米国の下に各国政府があった現代の覇権体制を崩し、大企業が覇権を奪い合う新世界秩序に転換させる。

米国の民主主義(議会と政府)の力を自ら削いで大企業に差し出すTPPやTTIPを、なぜオバマ政権は推進するのか。選挙の時に献金などと引き替えに財界に約束させられたので仕方がない、ということなのだろう。オバマが喜んでTPPを推進しているとは考えにくい。私はさらに一歩進んで「実のところオバマは、米欧国民の反対運動が強まって、TPPやTTIPが否決される事態を、ひそかに誘導しているのでないか」「TPP条文の機密化や審議拒否を異常なまでに過激にやって人々をわざと怒らせ、TPP反対運動を強めているのでないか」と勘ぐっている。

image by: wikimedia commons


『田中宇の国際ニュース解説』
国際情勢解説者の田中宇(たなか・さかい)が、独自の視点で世界を斬る時事問題の解説記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。