どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

取材と検証...その度合いは作品の深みに

2018年10月15日 22時15分00秒 | 話題
本日の朝刊に片渕須直さんのインタビュー記事が。

ここで改めて言うまでもなく映画「この世界の片隅に」を監督された方ですが、つくづく「取材と検証」の大切さを再認識させられた作品だなぁと。

歴史的な考証などは通常アウトソーシング(悪くいえば人任せ(^_^;)される事も多いのですが、片渕さんは自ら異常(失礼!)とも感じさせられるほど、緻密な調査・研究をしていて、関連イベントなんかでその一部を見るだけで舌を巻くばかりで...(´д`)

たった映画一作のため...と言ったら失礼な話しなんですけれども、壁一面に据えられた本棚いっぱいを埋め尽くすほどの関連資料を収集する映画監督なんて...私の知る限り初めてです。

作業用?のノートPCなんかもフォルダがビッシリで、例えば街の区分けごとにこまかく細分化されて管理していたりもする...エクセル表にも年月日毎にある地域の天候状態や必要な施設の同行なども克明に整理されていて、絶句です...。

でも豊富な資料が多くあれば良いってものでもない。それは素材に過ぎず、それを作品にどう反映するかは監督のセンスです。

これは「この世界の片隅に」を観ると本当に絶妙に活かされていると感じさせられるんです。センスが良くないとただ衒学的になるばかりで、鑑賞者は置いてけぼりを食うばかりなんですが、一見しただけでは何も判らず、巧妙に仕込まれている...しかも気づかなくてもストーリー上はなんの支障もないというね(^_^)

よく小説・マンガ・映画作品などで語られることに、「99%の真実と1%のウソ」という言葉がありますが、歴史的事実を積み上げ徹底的に深掘りした上にホンのちょっとだけ創作したものを載せることで興味深くて面白い作品ができる...こうの史代さんの原作からしてそうなんですが、その積み上げで「すずさん」という人物に血が通い体温さえ感じるんだなぁと...。

ちょっと例えの方向性が違うんですが、黒澤作品における撮影用のセット、その小道具に決して開けることのないタンスの引き出しに着物が入っている...そんなようなものだと思うんですよね(^_^)

朝刊のインタビュー記事には、一例として呉空襲時の高角砲に識別可能な爆煙色の事が語られていますが、

これだってストーリー上なにも影響しない要素。でもそれを加えることによって、すずさんの絵心が喚起されることになるワケだし、鑑賞者にも様々な想いを巡らせる効果(そんな歴史的裏付けを知らず、ファンタジーなのかと思わせたって成立する...)があるシーンになっているんです。ここは本当に凄い表現だなぁと今でも思います。



10月14日(日)のつぶやき

2018年10月15日 05時59分24秒 | 事件・事故・災害