オバサンは熱しやすく涙もろい

とてつもなくミーハー。夢見るのはお気楽生活

「ある愛の風景」

2007-12-03 18:44:43 | 映画・DVD【あ】


2004年、デンマーク作品

監督:スサンネ・ビア

出演:コニー・ニールセン、ウルリッヒ・トムセン、ニコライ・リー・コス 他


幸せな家庭が夫の出兵、そしてその夫の死という形によって無残に引き裂かれた。
だが、残された妻、子供、そして夫の弟や両親は悲しみにうちひしがれながらも、その裂け目を必死で繋ぎあわそうとする。
やがてぎこちないながらも前向きに生きようとする家族の元に、夫が生きていたという連絡が入る。

家族の喜びもつかの間、夫はまるで別人のようになって戻ってきた。
心に深い傷を負って・・・。

夫は捕虜となっている間、生きて帰るために人間として決して許されない罪を犯していた。
罪の意識に苛まれ、精神を病んだ夫は、妻と弟の仲を疑い、はしゃぐ子供たちに当り散らす。
そして家族を手にかけようとするほど彼の神経はずたずたに引き裂かれていた。
「自分はこの家族のせいで人間としてあるまじき行為を行ってしまったのだ」
繋ぎ合わされた継ぎ目が再び裂け始める・・・。

だが何度その継ぎ目が裂けようと、結局繋ぎあわすことが出来るのは家族なのだ。
自分を手にかけようとした夫を刑務所に見舞う妻に、今まで押さえていた感情を溢れさせ慟哭する夫。
そして、戦場で捕虜となっていた間自分が何をしたのか、とつとつと語りだす。

かすかな希望を予感させながらも、なんら問題は解決されないまま物語はここで終わる。
スサンネ・ビアは誰にでも起こりうる不幸な出来事あるいは不幸な運命、そして家族の絆を「しあわせな孤独」でも「アフター・ウエディング」でも描こうとしていた。
だがこの映画ではさらに戦争という怪物を介入させ、家族一人一人に鉛のような塊の足かせを履かせている。
日常を切り取りつなぎ合わせたような単調とも言える映像は、かえってリアリティを感じさせる作品に仕上げているような気がした。
「アフター・ウエディング」の時は涙が止まらなかったが、こちらでは涙こそ出ないものの喉につかえたような重い塊が、いくら飲み込もうとしても飲み込めない。
そして「自分が夫の立場だったらどうしていただろう」という自問が頭から離れないでいるのだ。

そんな重いテーマを抱えた映画の中で、(ワタシに)癒しを与えてくれたのが夫の弟ヤニック役を演じたニコライ・リー・コス。

いつか彼をスクリーンで観て見たいと思っていたが、やっと願いがかなった。
彼の肩の力を抜いたような自然な演技が大好きだ。
そして、見る人を捕えて離さない、唇より雄弁に語る瞳も大好き。
ああ「ブレイカウェイ」借りてあるんだ。早く観なくては。

二人の子役の演技力にも舌を巻いた。
思えば子供が一番複雑な位置に置かれていたような気がするのだが、それをこともなげに演じている。

この映画におけるこの子役たちの功績は大きいだろう。
どんなにすごいかは・・・是非劇場でご覧あれ。
コメント (16)
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