明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



マンションの改装業者が検査で室内に入るというので、ほんの一部であるが本を段ボール箱に詰め、徹夜で片付けた。疲労困ぱいである。おかげで何故だか朝までに何度もギターを弾いてしまった。 『こんなことをしていてはいけない』。これは“こんなこと”に集中するための秘密の呪文である。私は幼い頃からこの呪文を誰にも教わらずに知っていた。遠藤周作は『何かをしなければならない時に、他の事をせずにいられない人間を怠け者という』といっている。そういわれるとそんな気もしてくる。  普段片付けないくせに、片付けないでいて恥ずかしい、という気持ちがあるところが私の駄目なところである。近所に住むオデコにへと書いてある年金暮らしの小学生は、普通の人間なら、恥ずかしさに人知れず街を出て行くであろう時にも、カナカナカナと笑っている。  チャイムが鳴るので出ると、業者が予定より二時間も早く来た。配水管の掃除をするという。「オジさん早すぎるよ」。後を見ると、作業着姿の二人の若者を引き連れており、一人はなんとも可愛らしい女の子である。こんな娘を招き入れよというのか。時間通り来てくれるよういってドアを閉め、ギターアンプのスイッチを入れる私であった。 Mさんより電話。東大で来月16日まで開催の『鴎外の書斎から-生誕150年記念 森鴎外旧蔵書展-』は私の出品作は鴎外像1点なのに、知り合いが観にいってくれている。Mさんは今赤門にいるが、入ってすぐに立っている案内の人に聞いたらそういうものはやっていない、といわれたという。まったくどいつもこいつである。それは勤め先の催しに関心のない人物と、片付けられずに下手なギターをかき鳴らす私のことである。

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