明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



荒俣宏さんの著書の中に、白人が大きな帆船である島に着く。しかし原住民は白人を見たことがなく、大きな船だって見たことがない。結果、白人が島の中を歩いていても認識できない、というような話があった。人と自分とは世界の見え方が違っているのではないか、と少しでも疑ったことがある人には興味深い話であろう。   ごく近所に、三角形のヒレのような物がついているビルがある。これは看板でもなんでもなく、もちろん風を切るためでもなく、なんでついているのか不明である。ずっと気になっていたが、何年か前に、このビルの中の会社に勤めている人と酒場で会った。しかしヒレ自体を知らないという。出入口は反対側にあって、目にすることがないのか、とも思ったが、勤めるビルの周囲を一周したことくらいあるだろう。ところが最近、彼がこのヒレの下を歩いて会社に入るところを目撃した。聞いてみたが、まだ知らないという。 そんなことがあるのだろうか。かなりイライラしてきた。そしてその時は来た。このビルはK本の向かいなので、ひょいと見上げれば見える。「ほらあそこのアレ」。すると「ホントだ」。勤続25年の彼はいった。 あんなデカくて意味不明な物がくっついてる会社に25年。行き帰りに下を歩いて気がつかないという。そう考えると、世の中になくたって誰も困らない物を作ることが大変なのは、当然である。

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