明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



30年ほど前のギターアンプが届いた。申し訳ないような価格である。T千穂で会う、私より8つ年下の某運輸のSさんと最近ギター談義に花を咲かせている。そういえばアンプが壊れて何年も音を出していないなと思い、制作ばかりの毎日もどうかと思ったのである。 1980年頃だったろうか。ポリスがデビューし、良いと思いながらも私のロックは終わった気がした。時代は黒人でさえ、大学に入って始めてブルースを聴いた、などという時代になっていた。 8歳違うと聴いている音楽も違う。メタリカが好きなんだそうだが、私にはどこが良いやら判らない。逆にTレックスやエマーソン・レイク・&パーマー、ハンブル・パイを観たといっても、おととい生まれたような顔をして名前は聞いたことがあるけど。と張り合いがない。百万円のギターを所有する彼だが、「石塚さんはそうは仰いますがー」。と私のインチキ臭いビザールなギターをくさす。合板は合板の音しかしないと毎回いわれるし、私の入手したアンプは半分真空管、半分トランジスタなのだが、アンプはフルチューブじゃなけりゃ、というしコンデンサーがどうした、何がこうしたとうるさい。 しかし私は彼が強烈に発する私と同じ、“好きなくせに上達することなく死んでいく男”の鼻が曲がるような体臭をすでに嗅ぎとっている。 私のギター談義の相手として、彼こそふさわしい男だ、と選んだ理由は、ただこの一点であることを露とも知らず、楽し気に語り続ける彼であった。

去の雑記
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