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明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



夕方、丸善に作品を収め、歩いて日本橋三越で開催中の三重県物産展に向かう。専門学校時代の旧友N君に会うためである。彼は伝統工芸展において朝日新聞社賞受賞という快挙を果たした陶芸作家。今回は物産展ということで、作家としてのアピールは控え、産地の焼き物屋として販売員の札を着けて立っていた。彼の受賞に繋がった代表的技法の象嵌は大変手間のかかるもので、その点を横にいた中年婦人に聞こえるようにいっていたら、湯飲みを買っていった。彼とは私が18、彼が19か二十歳からの付き合いであるが、彼はいい加減にしろ、といいたくなるほど変わっていない。 卒業目前、私は女の子とアパートで酒を酌み交わしていた。学校が近くてプライバシーなどないので、貴重な一時、邪魔されてはと留守を装っていた。そこに彼と、現在中尊寺の近くで陶芸作家のO君が現れた。「絶対いるって。酒ばっかり飲んでるから倒れてるんじゃないか」という声が聞こえる。有り難迷惑な二人は、裏に回って雨戸をこじ開け始めたのであった。バツが悪い私は「入れよ」というし、彼らも急に用事を思い出してくれるほと気が利いていない。歴史という物は、こんなことで変わってしまうものであろう。もっとも彼女は現在、長らく連載を続けている漫画家の奥さんになっているから、メデタシメデタシといったところである。 N君には年寄りにマタタビのような妙な才能があり、昔、永代通りにある、魚○という行列のできる居酒屋に連れて行った時のこと。ここは頑固で有名なオバサンが切り盛りしている。彼は注文時に、一言二言喋ったに過ぎないのだが、翌日忘れたセーターを取りに行ったら、そのオバサンが「アラァ」と笑顔で迎えるという、信じられない光景を目にした。今回K本に連れて行って、彼のマタタビ効果を実験したかったのだが、その時間がないのが残念である。8時に洲崎の韓国料理『オウリム』で旧友5人が集まり彼を迎えた。中にはN君とは30年ぶり、という男もいたが、話の調子から何も変わらないので、感心というより少々呆れていた。こういった何も身につけていない、恥ずかしい時代をさらけ出しあったような友人関係は、これからでは作りようがない。

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