弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

イソ弁について

2005年12月15日 | ⑥弁護士等法曹情報
昨日イソ弁について書きましたが,それに続いてそれにまつわる情報
を書きたい思います。

1 イソ弁について
前回も書きましたが,イソ弁とは,居候(いそうろう)弁護士の略。最近では,「居候」は聞こえが悪いので,「アソシエイト弁護士」とか「アソシエイト」と言われるようになってきています。かっこいい言い方ですが,従業員弁護士のことです。

2 ボス弁について
雇っている側の弁護士のことを,「ボス弁」とか「パートナー弁護士」とか単に「パートナー」と言います。弁護士法人のボス弁は,「社員」とか「社員弁護士」とか言われることが多いです。これは,従業員という意味の一般用語としての「社員」ではなく,合名会社・合資会社とかでいう,出資者兼経営者という意味の法律用語としての「社員」です。
昔は,弁護士は独立して一人でやることが前提で,共同でやるといっても複数の個人事務所の集合体的だったのでしょうね。だから,独り立ちするまでは,ボス弁の下で修行させてもらうので(ある意味,職人や芸人の弟子みたいなものですね),居候扱いされたのではないでしょうか(弟子なら居候扱いせず,「弟子弁」とか言えばいいのにね)。弟子みたいなものなので,自分より先に事務所のイソ弁になった人を,「アニ弁」とか「アネ弁」とか言ったみたいです。

3 弁護士の初任給について
気になるイソ弁の初任給についてですが,私の聞いたことのある噂に基づいて書きます。あくまで噂なので真偽については保証しません。各自調査して下さい。
相場は年640万円(40万円×16ヶ月(うち4ヶ月分は夏季・冬季のボーナスです。)と聞いたことがあります。20年以上前からこの相場は変わっていないそうです。バブル前後を挟んでいるので,相対的に高くなったのか安くなったのよくわかりませんね。
司法試験合格者急増に伴い,東京や大阪では500万円台のところも増えており,相場が落ちているそうです。
東京の大手渉外事務所では初任給が1000万円以上のところも多いようです(うらやましい。)。弁護士3000人時代が来ると,弁護士がもっともっと増えるので,年収についてももっともっと下がっていくかもしれませんね。
また,この初任給が,一般に比べて高いか安いかも微妙な気がします。大卒で一発で受かれば,1年半修習生をやった後,24歳でいきなり年収640万円はかなり一般に比べていい気がします。これに対して,30歳くらいで合格して,32歳で640万円だと大学同期でサラリーマンになった人と比べてそんなにいいわけではありません。みんながコツコツ稼いでいるときに,自分は無収入かバイトしかしていないし,それまでにかなり差が作られています。また,弁護士は自由業なので,サラリーマンと違って,病気になって働けなくなれば収入は当然ゼロになってしまうので,その不安定さを考えると,24歳で640万円と言ってもさほどいいものとは思えません。

4 イソ弁の収入について
また,640万円と言っても,単純にこれだけもらえるというわけではありません。事務所によっては,この額がいろいろ増減します。

(1)まず,減るほうについて
弁護士会の入会費と月々(年?)の会費については,事務所が負担してくれるところと,自分で負担するところに分かれます。前者の方が多いようです。
健康保険・年金については,ほとんどのところが国民健康保険と国民年金です。ただし,最初の2年間は,修習生時代の公務員の共済の任意継続が可能です。あと,大手事務所や弁護士法人については,通常の健康保険と厚生年金になり,その掛け金は労使折半になります。
経費については,事務所事件(ボス弁の下請けの仕事)については,当然事務所(ボス弁)負担になりますが,個人事件(自分が持ってきた仕事で,その着手金・報酬が原則自分の懐に入る事件)については,自分が当然負担します。個人事件についての事務所の使用料(事務員,コピー機,電話,パソコン等)としての経費負担については,事務所によっては,不要というところや報酬等の1割という感じで事務所(ボス弁)に上納するところと分かれます(割合は事務所や事件の種類によって異なります。)。
その他の弁護士としての活動(弁護士会活動,会派活動,弁護団,学会,勉強会,接待,弁護士同士の付き合い等)にかかるお金も自分持ちという事務所が多いと思います(これは実情がいまいちわからないので予想です)。

(2)次に増えるほうについて
これは,前述した個人事件です。国選の刑事事件,弁護士会や市役所等の法律相談から受任した事件,親族・友人・知人等個人的な付き合いで受けた事件等が個人事件になるところが多いです。これについては,前述した事務所(ボス弁)に上納しなければならない場合は,それを除いた部分は全部自分の収入になります。ただ,事務所(ボス弁)にはあまり収入が入らないし,事務所(ボス弁)の事件をやる時間がその分減るので,個人事件をイソ弁がやることを嫌がる事務所(ボス弁)は多いそうです(事務所(ボス弁)は事務所(ボス弁)の事件で収入を得ているので)。また,事務所の事件が多すぎて,個人事件やる暇が全くないこともあります。したがって,弁護士の求人欄には,「個人事件原則可」と書いてあっても,実際にできるかどうかそれだけではわからない場合多いです。

5 個人事件について
上の述べたことからするとわかるように,個人事件をやればやるほど,イソ弁にとっては収入が多くなります。しかし,個人事件と言っても,自分ひとりの収入になるので原則自分ひとりでやらなければならず労力も勉強もプレッシャーも大変ですし,楽な事件ばかりやっていると勉強になりません。事務所事件は,定型的な仕事(ルーティン・ワーク)でなければ,ボス弁・アニ弁と一緒にやるので,いろいろなことをボス弁・アニ弁から教えてもらえ,自分の能力が上がる機会が多いです。大きな事件も多いし,そのうち任されてくれる部分も増えてきて,やりがいも多いです。個人事件は,人間関係とお金とキャリアアップ等のバランスをうまく取りながらやらないとダメだと思います。

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