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H16年憲法第2問

2004年07月20日 | ③H16年司法試験論文試験再現答案集
【問題】
 公職選挙法第10条は,被選挙権を有する者を,衆議院議員については年齢満25年以上の者,参議院議員については年齢満30年以上の者と定めている。この規定の憲法上の問題点を論ぜよ。
 また,同条を改正して,衆議院議員及び参議院議員のいずれも年齢満35年以上の者とした場合は,憲法上どのような問題が生じるか,論ぜよ。

(出題趣旨)
 衆議院議員及び参議院議員の各被選挙権の年齢要件に関する公職選挙法の規定の合憲性につき,被選挙権の性質,憲法第44条,第47条等の趣旨を踏まえた理解を問うとともに,それを前提に,両議院の議員の各被選挙権の資格年齢をさらに引き上げた上,それを同じにする改正をした場合に生じる憲法上の問題点につき,両院制との関連等を踏まえた論理的思考力を問うものである。


【私が実際に書いた答案】(再現率75~85%)評価A(7287人中2000番以内)

1 設問前段
(1)公職選挙法10条が,被選挙権者の資格を衆議院は25歳,参議院は30歳としていることは,①被選挙権は憲法上保障される人権か,②被選挙権に年齢制限を設けることは許されるか,③衆議院と参議院で異なる年齢制限を設けることは憲法上許されるか,という憲法上の問題点がある。

(2)①被選挙権は憲法上保障される人権か
 憲法15条1項は,国民主権(前文,1条)に基づき,民主政による人権保障を実現するため,国民固有の権利として選挙権を保障する。
そして,民主政による人権保障するためには,選ぶ方を国民に保障するだけではなく,国民の代表者として国民の権利・自由を制限する可能性のある権力を行使する方も国民が行わなければならない。
 従って,被選挙権は,選挙権と表裏をなすものとして,15条1項により保障されると解する。

(3)②被選挙権に年齢制限を設けることは憲法上許されるか
被選挙権は,民主政による人権保障を実現するための人権としての側面だけでなく,国民の代表者として公務を行う者の資格としても側面もある。
 かかる資格としての側面から,憲法は資格要件を定める裁量を国会に与えている(44条)。
 44条は,被選挙権が民主政を実現する重要な権利であるので,その資格の条件は原則平等なものでなければならないとするが,年齢はその列挙事由にない。
 国会議員は,国民の権利・自由を制限しうる法律を十分な討論と妥協によって制定する者であり,選挙権の行使より高度な判断力が必要となる。そのためには,一定の社会経験が必要である。
 義務教育制(26条)の下では,子供が社会に出る年齢が高年齢化している。
 よって,年齢制限を設けることは許される。

(3)③衆議院と参議院の年齢制限を設けることは,多元的な民意の反映や衆議院の過誤を参議院がチェックするという二院制(42条)の趣旨に沿っており,合憲である。

2 設問後段
(1)設問改正法は,両議院の被選挙権の年齢制限を一律35才とするものであるが,許されるか問題となる。

(2)まず,両院を一律とすることについては,選挙制度や選挙区の定め方の違い等によっても,民意の多元的な反映という趣旨は達成できるので許される。
 しかし,35才という制限は,20才から35才までの被選挙権を認めないので,度が過ぎ,違憲である。

以上


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