かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠391(中欧)

2017年01月20日 | 短歌一首鑑賞

   馬場あき子の外国詠54(2012年7月実施)
     【中欧を行く 虹】『世紀』(2001年刊)P110
     参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:藤本満須子
     司会と記録:鹿取 未放


391 ウィーンの秋オペラ座に「エレクトラ」観んとして正装す日本の帯を締めたり

      (レポート)
 秋のウィーン、古都ウィーンの秋ときただけで十分に旅愁を誘われる。音楽の都ウィーンのオペラ座に正装(もちろん着物のこと)して「エレクトラ」を観た。ウィーンに限らず海外の音楽祭はよく放映されるようになったが、日本人が着物で席に着いている様子も見かけるようになった。結句の「日本の帯を締めたり」に作者の意気込みが感じられる。演目がギリシャ神話に材を採った「エレクトラ」であることも、作者の昂揚した気分を十分に表現している。(藤本)
  エレクトラ:ホフマンスタールの戯曲、リヒャルトシュトラウス作曲の楽劇。ギリシャ神話中
        の女性エレクトラが父の仇を討つというストーリーだ。エレクトラの母であるク
        リュタイムネストラがその情人アイギストを使って父アガメムノンを殺す。弟オ
        レストスが母とアイギストを殺し父の仇を討つ。すでにギリシャの三詩人により
        劇化、二時間一幕。


     (当日意見)
★別のところでこの折の事を先生が話された。一級のものを鑑賞する時にはこちらも正装しなけ
  ればならないと。(藤本)
★正装だから重厚な袋帯を締められたのでしょうね。「エレクトラ」を観ることがこの旅の目的の
 一つだったようだから、心意気が伺える。(鹿取)
★ロビーに正装して一団が集結した(藤本談)というところに、先生の勝ち気なところが表れて 
 いる。「白露や死んでいく日も帯締めて」という三橋鷹女の句を思い出した。(慧子)
★「正装す」と切れているのはなぜか?(T・H)
★四句めが句割れになって、その前半で切れている複雑な形。このようにおしまいの方にある切 
 れは力強い切れで、この後に新たに言い起こし、歌全体がうねるような形になる。(鹿取)
★力強い歌なので、迫力で読ませてしまうが、実はものすごい字余りの歌だ。切れ目も難しい。
 とりあえず斜線を入れたところで切ったが、6・10・5・9・7音。二句め十音の部分に句割
 れが、四句め九音は3句めからの句跨りがあって、さらに句割れになっている。(鹿取)

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