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ダンスとか。

安藤洋子×W.フォーサイス

2004-02-25 | ダンスとか
三軒茶屋・世田谷パブリックシアター。
▼『WEAR』
今回目玉の新作。安藤洋子ソロという触れ込みだったが、男性二人との共演になった。だからどうこうとは別に思わないが、安藤洋子の「個性的な身体性とキャラクター」なるもの、つまりダンサーの身体的個性に対して、システムの人であるフォーサイスがどうアプローチするのかはちょっと興味があったわけで、それをこういうタンツテアター寄りの引き出しで片付けられてしまうのはいささか肩透かしではある。舞台下手に灰色のマットがグシャッと積み上げられた家のようなものと、手前に大きな巻紙(何と書いてあったのか不明)が置かれ、モコモコしたダウンジャケットを着込んだ三人がギクシャクと動き回ったり家に引っ込んだりストップモーションのように停まったりする、というのが基調になっていて、巨大なアフロのかつらがユッサユッサとやわらかそうに揺れるのがキモカワイイ感じ。音楽(池田亮司)は単調な弦にセリフがかぶさるもので、さらにフォーサイスが無線を使って男性二人に出しているサインらしきものが聞こえてくる。NY辺りのホームレスみたいに見えたが、コンセプトとしては「南極」らしい。安藤が分厚い衣装を脱いで踊る部分もあるにせよ全体に見せ場は少なめで、25分もやるような作品ではないと思った。これが15分だったら印象もずっと良くなっていただろう。安藤を見るのはA・シルヴェストリンの作品に出ているのを見て以来これがまだ二度目で、ダンサーとしての彼女についてはあまりよくわからなかったが、床に尻をついて宙に浮かせた足が内股にガギガギしているところなどは『疱瘡譚』の土方みたいだった。最後は男性二人がマットの家を引きずってきて、安藤がそこへ無事収監されて幕。
▼『(N.N.N.N.)』
'02年初演。4人の男性が横に並んで腕をからませたり組み替えたりしていくというシンプルな作品で、ダンサーの息遣い以外は無音。フォーサイスでは今までまったく見たことのない傾向の作品であるし、振りであって、ほぼ全面的にコンタクトによる関係のロジックが支配しており、形を作り出す部分がほとんどないから、一見即興のようにも見えるが(衣装がジャージとかだし)、きわめて精密に振り付けられている。地味に凄いタイプの作品。チラッと『白鳥の湖』みたいになるシーンもあったり、全体にコミカルなのがまたフォーサイスらしからぬところで、強烈な個性の刻印が見て取れないからある意味フツーの振付家の作品のようにも思えるのだが、しかしそうはいってもこの、まるで4人で1人のダンサーであるかのような有機的な緊密さはまさに非凡としかいいようがない。手をつないだり組み替えたり、意識のセンターがあっちからこっちへ移動したり、遠く離れた部位と部位が連絡しあったり、こうやって人体は動いているよなー、と思った。
▼『QUINTETT』
'93年初演。翌年の来日公演時には見逃しているので、今回初めて見た。男性3、女性2。フォーサイスと聞いて誰もが期待するこの照明、衣装、音楽、美術、振付。ギャビン・ブライヤーズ『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』(そういえばこの歌もホームレスだ)の反復&漸進する時間の流れに、それとは無関係に並走しているようでいて時折り一瞬だけフワッと乗っかっていくダンス。そして舞台奥の穴や袖から無言で出入りするダンサーの視線の無内容さ、仰向けに落ちかかる女を穴の中から男が何度も押し返しているところへ超然と降りてくる幕……だが、今回はダンスがまったく弱かった。フォーサイスのグネグネした超複雑な振りを非人間的な速度と安定感で見事に踊りこなしているダンサーは一人もいなかった。ヨレていたり、ざっくり大雑把であったり、硬かったりと、あまり身体能力の高くない人が揃っている。デモンド・ハート(たぶん)というアフリカ系の人は迫力があり、この人がソロパートで、舞台中央で右方向にジャンプしつつその頂点でいきなりバカッと左半身を開き、首を思い切り突き出しながら全身を力強くそっちへ持っていく部分があってびっくりした。しかしこの人とて、今まで見たフランクフルト・バレエの平均値からするとだいぶ見劣りがする。むしろ安藤洋子はよく動いていたのではないかと思うが、やはり他の人と並んでしまうと体型のレヴェルであまりにも差がある。
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ペピン結構設計 『東京の米』

2004-02-25 | ダンスとか
池袋・東京芸術劇場(小ホール)、昼。
ダンスと違って演劇はアンソロジーとかオムニバス形式でつまみ食いすることができないから、その劇団を知ろうと思ったら意を決して90分とか120分ぐらい付き合わなければならない。これは実に無茶な話だと思うのだが、今回も開始後5分で興味を失って難儀した。まったくありあわせの類型的な(しかも拙い!)演技でセリフがえんえんと続くだけで、これじゃ目なんかいらねえよ、という芝居。見るものがないのでうつむいて寝たりしていても十分わかってしまう。男の人に触られるとお米を吐いちゃう特異体質な女の話で、それがメタファーになってる。戯曲だけで十分伝わる内容じゃないのかな。
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