吉祥寺シアター。
数ヶ月前にここで長いソロ作品を見た時よりもKENTARO!!のやっていることがクリアに感じられた(作品の内容が違ったのか、自分の感覚が変化したのかはもはや確かめようもない)。いわゆるコンテンポラリーの振付家がヒップホップの語彙をいわば「外来語」として取り入れるのはよくあるパターンだが、ここでは動きのみならず演出面まで含めて二つの言語が限りなく等価に扱われようとしているように見える。すなわち、「舞台芸術」としてのコンテンポラリーの文法と、ストリートダンスの文脈でクラブなどで行われるショーの文法のパッチワークであって、いうなればバイリンガルな人間が二ヶ国語を混ぜて喋っているような状態。例えば「日常の身振り」だが音ハメ、しかもその動きが黒くファンキーに跳ねていたりするのを見ると、民主主義を謳いながら実際にはWASPの集団であったジャドソン教会派への批評的コメントとも読めてしまうし、四角い舞台空間の構成的秩序から能う限り無頓着でいようとするダンサーの居方や移動の仕方、あるいはユニゾンでありながら二つの集団が向かい合ってジャム風に踊っていたりする辺りも、そもそも一心不乱に「踊る」姿を観客に見せるなんていう意味不明な制度としての近代ダンスを軽やかに相対化してみせてしまっている。トワイラ・サープがバレエとシアターダンスを混在させてみせたのと比べてKENTARO!!のやっていることの射程がはるかに長いのはやはり「外」から来た人の立ち位置ゆえなのだろう。いずれは、コンテンポラリーの人種を驚かすだけでなく、ストリート系の人種をも驚かすことができたら凄い。