池袋・東京芸術劇場(小ホール2)。
▼Co. 山田うん 『ハイカブリ』ショートバージョン
20分に圧縮され、初演より構成がすっきりした。時間的・空間的スケールは小ぢんまりしたが、ヌルい部分がないのでいきなりギヤがバックに入って逆回転が始まる。おバカ系の動きが少なく、その意味で振付家の個性が弱いし、逆回転にしても初演時のような、重力など不可抗力に関わる動きの逆回転があまり見られなかったので驚きは少ないとはいえ、やはりこれだけのグループ作品をきちんと振付けてグイングイン動かしていくところは素晴らしいなと思う。この日の山田うんのバレエ的なソロも良かった。体が澄んでいて伸びやかでキレもあり、抑えつけ(られ)ているような感じがなく、見ていて体が浄化される。他には、加藤奈々と田畑真希が至近距離でバラバラの動きをしながら上手から下手へググーッと移動してくる部分(このパターンは個人的にツボなのだが)における、加藤の動きが気持ちよかった。四肢や胴を激しく動かしつつ旋回移動、しかも渦の中心がずっとクリアに保たれる。アイススケートみたいだ。しかし全体を見渡すと、ダンサーの踊りには不満の方が多い。振付に対して「律儀」であるわりにさほど「忠実」ではなく、もちろんだからといって「奔放」であるわけでもない。振りのしっかりしたダンスというのは、振りを踊りながらそこから無意識的なものをはみ出させてほしいわけで、その意味では冒頭の木村美那子の長いソロにおける顔の演技みたいなのはいかにも「はみ出ました」という感じがあって良かった。
▼枇杷系 『愛情十八番』ショートバージョン
天野由起子、尹明希、加藤奈緒子の部分を取り出して圧縮。これはちょっと目も当てられない。この三人ならもっと潔くダンサーの身体の強度を「ライヴ」というか「セッション」的な形で見たいと思うのだが、しゃっくりだの、片足コイルだの、人形浄瑠璃だの、そういうものを片っ端から無理矢理押し込んでいる。出ハケも間が悪くていかにも「何となく」という感じだし、音楽が全く無造作にカットインして神経を逆撫で。良かったのは尹明希の出だし部分。何かこみ上げるような衝動に満ちて、スタート前のF1みたいだった。空間軸もガッチリ押さえて、音楽に先走って逆にリードしていく前のめりな踊り。持ってかれそうになったが他のダンサーとの絡みが始まると次第に沈静化していった。天野由起子は、今までで初めて見るくらい体のコントロールができていなかった。
▼Ko & Edge Co. 『美貌の青空』ショートバージョン
目黒大路、鈴木ユキオ、林貞之の三人が真鍮板を引っくり返す部分、やけに迫力がなく、やっぱりこういう場にもってきてお手軽に見せるようなものじゃない気がした。室伏のソロの部分では、上から吊った真鍮板を肩に乗せて後ろを向き、ボワワワワワン!と震わせるシーンが凄い。首のない無頭人の、肩の筋肉が無数の小さい瘤になって隆起し、それが上下の鏡合わせになって激しく揺さぶられている。目線の高さにある舞台で彼の踊りを見るのはもしかしたら初めてで、それでまた強烈だったのかもしれないが、立ったまま上半身を屈める時、背中が肩と腰の中間辺りから逆U字型に曲がっちゃっているところは目を疑った。腰と肩が折れるのではない。どういう体なんだ。ジョン・レノンの『Woman』がかかるラストまでちゃんとあり、ここのシーンの笑い声のタメの長さと持続の短さは絶妙であった。早くこのユニットで、想像を超えるようなものが見たい。
▼Co. 山田うん 『ハイカブリ』ショートバージョン
20分に圧縮され、初演より構成がすっきりした。時間的・空間的スケールは小ぢんまりしたが、ヌルい部分がないのでいきなりギヤがバックに入って逆回転が始まる。おバカ系の動きが少なく、その意味で振付家の個性が弱いし、逆回転にしても初演時のような、重力など不可抗力に関わる動きの逆回転があまり見られなかったので驚きは少ないとはいえ、やはりこれだけのグループ作品をきちんと振付けてグイングイン動かしていくところは素晴らしいなと思う。この日の山田うんのバレエ的なソロも良かった。体が澄んでいて伸びやかでキレもあり、抑えつけ(られ)ているような感じがなく、見ていて体が浄化される。他には、加藤奈々と田畑真希が至近距離でバラバラの動きをしながら上手から下手へググーッと移動してくる部分(このパターンは個人的にツボなのだが)における、加藤の動きが気持ちよかった。四肢や胴を激しく動かしつつ旋回移動、しかも渦の中心がずっとクリアに保たれる。アイススケートみたいだ。しかし全体を見渡すと、ダンサーの踊りには不満の方が多い。振付に対して「律儀」であるわりにさほど「忠実」ではなく、もちろんだからといって「奔放」であるわけでもない。振りのしっかりしたダンスというのは、振りを踊りながらそこから無意識的なものをはみ出させてほしいわけで、その意味では冒頭の木村美那子の長いソロにおける顔の演技みたいなのはいかにも「はみ出ました」という感じがあって良かった。
▼枇杷系 『愛情十八番』ショートバージョン
天野由起子、尹明希、加藤奈緒子の部分を取り出して圧縮。これはちょっと目も当てられない。この三人ならもっと潔くダンサーの身体の強度を「ライヴ」というか「セッション」的な形で見たいと思うのだが、しゃっくりだの、片足コイルだの、人形浄瑠璃だの、そういうものを片っ端から無理矢理押し込んでいる。出ハケも間が悪くていかにも「何となく」という感じだし、音楽が全く無造作にカットインして神経を逆撫で。良かったのは尹明希の出だし部分。何かこみ上げるような衝動に満ちて、スタート前のF1みたいだった。空間軸もガッチリ押さえて、音楽に先走って逆にリードしていく前のめりな踊り。持ってかれそうになったが他のダンサーとの絡みが始まると次第に沈静化していった。天野由起子は、今までで初めて見るくらい体のコントロールができていなかった。
▼Ko & Edge Co. 『美貌の青空』ショートバージョン
目黒大路、鈴木ユキオ、林貞之の三人が真鍮板を引っくり返す部分、やけに迫力がなく、やっぱりこういう場にもってきてお手軽に見せるようなものじゃない気がした。室伏のソロの部分では、上から吊った真鍮板を肩に乗せて後ろを向き、ボワワワワワン!と震わせるシーンが凄い。首のない無頭人の、肩の筋肉が無数の小さい瘤になって隆起し、それが上下の鏡合わせになって激しく揺さぶられている。目線の高さにある舞台で彼の踊りを見るのはもしかしたら初めてで、それでまた強烈だったのかもしれないが、立ったまま上半身を屈める時、背中が肩と腰の中間辺りから逆U字型に曲がっちゃっているところは目を疑った。腰と肩が折れるのではない。どういう体なんだ。ジョン・レノンの『Woman』がかかるラストまでちゃんとあり、ここのシーンの笑い声のタメの長さと持続の短さは絶妙であった。早くこのユニットで、想像を超えるようなものが見たい。