「アガメムノーン」から経つこと8年。
成長したオレステースが仇を討つ。
それが「コエーポロイ」です。
「コエーポロイ」の唯一の写本の一部が欠損しているために、他の2作に比べると復元されている部分が目立ちますが、そこは、欠けた部分に何が書いてあったのか、後世作家の引用などを組み立てたり推測したりする人たちが頭を悩ませている姿を思い浮かべて読みましょう。
「コエーポロイ」は、ソポクレス「エーレクトラー . . . 本文を読む
ギリシア悲劇特集、再び。
アイスキュロスは3部作構成を好んで用いていたようですが、
現存するものとしてはオレステイアのみです。
7編しか残されていないなかで、3部作という体裁を保っていること自体驚くべきことですが、現代まで伝わるだけの理由、いろいろな時代で語り継がれる何かがあるということでしょう。
オレステイア伝承は「オデッセイア」にも語られる有名な仇討ちであり、
オレステースは賞賛に値する人物と . . . 本文を読む
私はダメ男が好きである。
が、これは物語のなかだけのお話。
実際に目の前にダメ男がいたらムカつくにちがいないのだけれど。
エマニュエル・ボーヴは、そんなダメダメな男を描く、一級品の作家であると思う。
前作「ぼくのともだち」では、友達を作りたいと願いながらも、結局は独りよがりで失敗ばかりを繰り返す、そんな男でありましたが、その内面と行動を微妙なユーモアと哀しさで表現する、静かな小説でありました。
文章から感じ取る素描画のような静けさ、そのなかに存在する小さな音、小説から醸し出される雰囲気が私には魅力で、「きみのいもうと」もその心地よさに浸りながらあっという間に読み終わってしまいました。 . . . 本文を読む
何を隠そう、これが初村上春樹でございます。
翻訳モノっていうのが私らしいでしょ。
村上春樹といえば、カフカ賞を受賞されたそうでなにかと話題ですが、そのせいでしょうか、カフカの記事へのアクセス数がとても多いです。
私の記事でお役に立つかどうかはあやしいですが。
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ソポクレスで「オイディプース王」の次に読みたかったのが「エーレクトラー」。
「アイアース」も「トラーキーニアイ」も「プロクテーテース」も面白く読みましたが、やはりギリシア神話に精通していたり、その頃のアテーナイとスパルタの関係などの知識をもっていないと十分に理解できるとは言えません。
「エーレクトラー」は「オイディプース王」に比べると知名度としては低いですが、その内容は現代にも通じるものであると私は確信します。 . . . 本文を読む
ヘラクレスという英雄の名は、誰でも一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
主神ゼウスが人間の女アルクメーネーに恋をし、彼女の夫アムピトリュオーンの不在の折に夫の姿となって彼女のもとを訪れたことで生まれたのがヘラクレス。
アルクメーネーの腹からヘラクレスが生まれようというとき、父ゼウスはもうすぐ生まれるペルセウスの子孫が支配者になると予言しますが、ゼウスの妻ヘーラーは嫉妬からお産の神に命令してペルセウスの孫エウリュステスを先に生まれさせます。
エウリュステスは予言どおりにアルゴス王となりますが、ヘラクレスに悪意を抱き、ヘラクレスに多くの難行(ヘラクレスの12の功業)を命じます。 . . . 本文を読む
ギリシア悲劇に、いえ、ソポクレスにハマっています。
ソポクレスはかなりな高齢(90歳以上)でも、創作意欲を失わず、生涯に100以上の戯曲を生み出したそうですが、現存するのはたった7編。
2500年くらい前に書かれたものが、読めるかたちで伝わっているというのも軌跡に等しいですが、それ以上に、織り成す物語の浮き沈みを現代の私達が感じ取ることができ、感動したり涙したりできることこそ奇跡でなくてなんでしょうか。
そんな思いも手伝って、ソポクレスの全ての戯曲を読んでみましょうと、続けてギリシア悲劇全集を図書館から借りてきました。 . . . 本文を読む
本書は、ソポクレス作品、しかもオイディープスにまつわる3作を所収しています。
自分の呪わしい運命を知る「オイディープス王」、彷徨った後に死を迎える「コローノスのオイディプース」、その後の娘アンティゴネーの悲劇「アンティゴネー」。
悲劇の一族の物語を時系列に沿って並べてみるとこの順ですが、作品自体の成立年代は、「アンティゴネー」が一番先で、次に「オイディプース王」、そして老年の作とされるのが「コローノスのオイディプース」。
この3作は、一つの一族を扱った戯曲ではありますが、どの作品もそれぞれ違う性質をもっています。 . . . 本文を読む