くろにゃんこの読書日記

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「宇宙消失」 グレッグ・イーガン

2009年10月07日 | SF 海外
「宇宙消失」は、量子力学における観測問題を軸にしたSF小説。
いわゆるシュレーティンガーの猫である。
猫が生きているのか死んでいるのかは、箱を空けることで確認されるが、箱を空けるまでは生きている/死んでいるという状態が重なり合っている。
確立は50パーセント/50パーセントだ。
「宇宙消失」は、イーガンの長編のなかでは、読みやすいほうではないかと思うが、考えれば考えるほど観測問題の厄介なところに行き着く。
拡散と収縮を意図的に行う主人公は、途中から収縮をしなくなる。
収縮はいつ起きたのか?

重なり合いの状態で、たくさんの自分がお互いに関係なく生きていることを想像してみよう。
人はたくさんの選択を繰り返し行いながら生きている。
選択を行うたびに私は分岐する。
分岐した私はそこから別の人生を歩む。
今の私とどれだけの差があるのか?
たぶん、そのすべての私が複合的に私なのだろう。
ブログを書いている私は、私の一部分でもあり、すべての私であるともいえる。
が、これも仮定の話。
解釈を試みたところで、猫の生死の予測される確立は変わらないのである。

さて、私の量子力学のお勉強がどこまで進んでいるかと言えば、まったく進んでいない。
素粒子物理学というわき道に逸れている。



ウロボロスの蛇の図は、美しささえ感じる。
「素粒子物理学の世界」は、とてもわかりやすくすぐに読み終えてしまったので、難しい系の本を読もうと努力することにした。



ノーベル賞学者による入門書である。
電子編ではトムソンの陰極線の実験を詳しくみていきながら、必要なところで物理学の基礎を勉強していくというスタイルが面白いが、物理の参考書が娘のところ(山梨)に行っているので少々キツイ。
山梨に行ったら取り戻してこよう。
というわけで、未だ電子を発見していない私なのでした。

宇宙消失 (創元SF文庫)
素粒子の世界―物理学は何をめざしているのか? (NHKライブラリー)
新版 電子と原子核の発見 20世紀物理学を築いた人々 (ちくま学芸文庫)


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やっぱり無理でした (迷跡)
2009-10-09 23:16:39
記憶があいまいになっていますが、イーガンでは一番好きな作品です。
量子力学的選択能力(?)でドアの鍵を開ける場面なんかけっこうリアルで、自分でもできそうな気がして試したりして。
…開きませんでした
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これは (manimani)
2009-10-10 03:50:20
なかなか面白い小説ですよね。
波動関数の収縮が観測によりもたらされるならば、それは人間の脳がやっていることなのではないのか?とかいう素朴な仮説をいきなり適用して、じゃあ、脳の一部にパッチをあてて収縮が起こらないようにしちゃうとこうなるんじゃない?というようなことだったと記憶していますが、あってるかな。
それがちゃんとしたアクションサスペンスにつながるところも面白いですね。
もう一回読みたいが・・読まないかも・・
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お返事遅くなりました (くろにゃんこ)
2009-10-10 21:55:19
ちょっと、娘の住んでいる山梨まで行って、参考書を取り返してきました(笑)
いえ、学園祭を見学に行っただけなんですけど。


迷跡さま

挑戦されるとは、やりますね!
成功しているバージョンの迷跡さまもいるのでしょう。
覚えていないだけなのですよ、きっと。
イーガンの短編のなかには、パラレルな世界観を持つものがありましたよね。
私もそういう変な妄想をけっこうするほうなので、「宇宙消失」はかなり楽しんで読みました。
短編の要素をばらばらにして、長編で再構成させて、さらに深化させるのがイーガン流なのだなぁと思いました。


manimaniさま

着眼点がいいですよね。
実際問題、そういうことが出来るか出来ないかということでなく、もし出来たらどうなのだろうというところが、サイエンスフィクションの面白いところ。
バブルの生成が、そこに繋がるかとわかった時は、おおーっと思いましたよ。
ところで、私はひとつ疑問に思っていることがあるんです。
ラストでは、バブルがどうなったか書いてないですよね。
私が読み逃しているだけかもしれませんが。
私ももう一回読まなけりゃだめかもです。
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