ヴォルフ「カッサンドラ」を読んだことで、読書意欲を掻き立てられ、またもや悲劇を読んでいます。
今回読んだ三作はどれもトロイア戦争以後の時代に材をとったもので、「カッサンドラ」に関連のあるものです。
「トローアデス」はトロイア陥落直後のトロイアーの女たちを描いています。
全体を通して登場するのはトロイアーの王プリアモスの妻であったヘカペーで、ヘカペーの前から次々と希望が失われていく情景が繰り返され . . . 本文を読む
久しぶりに悲劇を読んでますが、やはり面白いです。
「イオーン」は正統派の悲劇ではありませんし、大作とはいえませんが、個人的には好きな悲劇のひとつです。
かのゲーテもお好きだったとか。
過去の偉人と趣味があうなんて、ちょっと嬉しいですね。
アテーナイ王エレクテウスの娘クレウーサと夫であり現王であるクスートスとの間には子がなく、
そのためにデルポイへと神託を求めにやってきます。
クレウーサには、娘時 . . . 本文を読む
悲劇を少しづつ読んできましたが、その周辺も気になりだして、ブックオフで購入した一冊。
悲劇は、岩波から出版されている悲劇全集という単行本を読んできましたので、
文庫でギリシア古典を読むのは初めてで、注釈が巻末についていると意外に読みにくいなぁというのが最初の印象でした。
ヘーシオドスは前7~8世紀の詩人で、3大悲劇詩人に先行すること数百年、悲劇の解説に多く言及される「神統記」が有名で、解説によれば . . . 本文を読む
オウィデイウス「変身物語」がどういうものなのか読みたくて、図書館で探したところ、国書刊行会から出版されている書物の王国シリーズの一つにちょびっとだけ所収されているのを見つけ、早速借り出そうとしましたが、そのタイトルに一瞬躊躇しました。
なんたって「美少年」ですから(笑)
国書から出ていますので、あやしげなタイトルのわりには、中身は古今東西の美少年にまつわる文学作品のアンソロジーであって、格調高いも . . . 本文を読む
「ヒケティデス」といえばアイスキュロスにも同名の悲劇がありますが、このタイトルの意味するものは「嘆願する女たち」であって、アイスキュロスとエウリーピデースでは取り上げる題材が異なっており、内容もまったく違います。
エウリーピデースはテーパイ伝説に題材をとっていて、
アイスキュロス「テーパイを攻める七人の将軍」に続くものと思ってください。
敗北した七将の埋葬禁止をめぐるもので、
それはソポクレース「 . . . 本文を読む
「ヘカペー」も「アンドロマケー」同様トロイアー戦争後の物語ですが、ノストイ(帰国譚)としての筋立てあることから「ヘカペー」は直後の事件を扱っていることがわかります。
プロロゴスはトロイアーの王プリアモスと王妃ヘカペーの末の息子ポリュドーロスの亡霊によって語られ、自分が父の友の家で育てられていたこと、父の友であった男が黄金に目がくらみ、彼によって亡き者にされ、海に投げ捨てられたこと、姉ポリュクセネー . . . 本文を読む
お久しぶりのギリシア悲劇です。
「アンドロマケー」はトロイアー戦争後の物語。
ヘレノスによって陥落の必要条件と予言されたのは、ペロプスの遺骨、アキレウスの息子ネオプトレモス、トロイアー城内のパラディオン、ピロクテーテースの持つヘーラクレースの弓。
アンドロマケーは、トロイアー陥落の褒賞としてメネラーオスよりネオプトレモスに与えられた奴隷であり、アンドロマケーはネオプトレモスとの間に一子をもうけて . . . 本文を読む
「ヒッポリュトス」は愛の物語。
アテーナイ王テーセウスが庶子の息子ヒッポリュトス(アマゾーンの女王アンティオペーとの間に生まれた)の住むトロイゼーンへ穢れを避けるために亡命していた間の出来事で、テーセウスの妻パイドラーは、義理の息子であるヒッポリュトスに恋心を持ってしまう。
ヒッポリュトスは、潔癖で、穢れを知らぬ青年であり、純潔の神であるアルテミスの顔を見ることは出来なくとも、言葉を交わすことがで . . . 本文を読む
ヘーラクレイダイとは、ヘーラクレースの子供たち、
あるいはその末裔という意味が含まれる言葉で、「ヘーラクレイダイ」は、半神ヘーラクレースが自らを火葬にして天に昇り、神となった後の物語。
火葬になるまでのいきさつは、
ソポクレース「トラーキーニアイ」に詳しいのでそちらを参照してください。
ヘーラクレースの死後、ヘーラクレースの子供達、及び、ヘーラクレースの母デーイアネイラ、ヘーラクレースの弟の子であ . . . 本文を読む
現代でも上演されることがあるギリシア悲劇としてあげられるのは、ソポクレース「オイディプース」、エウリーピデース「オレステイア」、「メーディア」でしょうか。
とはいえ、紀元前431年春のディオニューシア祭では、
「メーデイア」はそれほどの評価はされておらず、エウポリオーン(アイスキュロスの息子)、ソポクレースに続き3位という成績に甘んじています。
エウリーピデースの悲劇は、どちらかといえば神や神託に . . . 本文を読む
アイスクリーム、ソフトクリーム、え、売り切れ?
のエウリーピデースに入りました。
アイスキュロスには素晴らしい構成力が、ソポクレースには詩の力強さがありましたが、エウリーピデースは静かだなぁというのが第一印象です。
「アルケースティス」は夫の死の身代わりとなって死んだ妻が、夫の友人であるヘーラクレースによって連れ戻され、ハッピーエンドを迎えるという物語。
悲劇でありながら、どこかユーモラスで、幸 . . . 本文を読む
「ヒケティデス」とは「嘆願する女たち」を意味します。
ギリシア悲劇では、いくつかの作品のなかで嘆願する者が登場します。
オリーヴまたは月桂樹の小枝に撚った羊毛を巻きつけたものを手に持ち、聖域や祭壇に取りすがり、自分より大きな力を持つ人間や神に援助を求める者たちのこと。
彼らは、ゼウス・ヒケシウス(嘆願者を守るゼウス)の庇護のもとにおかれ、彼らの願いを拒んだり、ないがしろにしたりすることはもってのほ . . . 本文を読む
この作品は、ソポクレース「オイディプース王」で知られるテーパイ伝説を題材にしたもので、伝説の概要を知っていないと、いまひとつ理解しがたいかもしれません。
アイスキュロスは「ラーイオス」「オイディプース」「テーパイを攻める七人の将軍」サティロス劇「スピンクス」で紀元前467年の大ディオニューシア祭で優勝したそうです。
ソポクレース「オイディプース王」を読んでおられる方なら、なるほど、
と思わせる4部 . . . 本文を読む
アイスキュロスの悲劇の魅力のひとつには、格調の高さがあげられると思います。
「ペルサイ」は、サラミースの海戦によって敗退したペルシア側の悲しみを崇高に謳いあげていて、ダーレイオスが亡霊であらわれるという仕掛けはあるにしても、凝った演出がほとんどありませんので、なおいっそう詩人としての能力の高さを感じとることができます。
「縛られたプロメーテウス」では、なにか足りないと思っていたんですが、「ペルサイ . . . 本文を読む
現在読むことが出来るアイスキュロスの悲劇は7編。
そのうちの3編はオレステイア3部作としての体裁を保っていて、アイスキュロスのスケールの大きさや職人的な芸の細かさ、仕掛けを十分に堪能できるものです。
本書、「アイスキュロス II ギリシア悲劇全集(2)」はその他の4編が所収されています。
今回は「縛られたプロメーテウス」を取り上げてみましょう。
プロメーテウスといえば人間を泥から創ったという神話 . . . 本文を読む