徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

やりわすれた予防接種、何歳までに打てば効果的?

2013年07月28日 06時50分08秒 | 小児科診療
 やり忘れた予防接種、もう定期接種の期間を過ぎてしまったけど、かかるのが心配・・・今打っても効かないの?
 という疑問に小児科学会が答えました;

■ 予防接種、何歳まで大丈夫? 小児科学会、ウェブで公開
(2013.7.26:朝日新聞)
 【森本未紀】ワクチン接種、間に合う年齢教えます――。子どもの予防接種を期間内に受け損ねても、いつまでに受ければ効果があるのかを示した「キャッチアップスケジュール」を日本小児科学会が作った。25日、学会のウェブサイト(http://www.jpeds.or.jp/)で公開した。
 予防接種は、学会などが推奨しているスケジュールがある。これに合わせると、1歳までに受けなければならない予防接種は、任意も含めて計15回程度もある。子どもの病気や引っ越しなどで、その期間内にできない場合もあり、こうした保護者の悩みに応えた。
 学会は、ワクチンの添付文書や海外の事例などをもとに、安全で効果的に接種できる年齢の期限などを示した。例えば、小児用肺炎球菌の定期接種は生後2カ月から5歳未満までに4回する(標準的なケース)と勧められているが、今回のスケジュールでは最終の接種年齢を「10歳未満」としている。

 ただ、定期接種は定められた期間内なら公費が自治体から出るが、それを過ぎると自己負担になってしまうことがある。スケジュールを作った斎藤昭彦新潟大教授(小児科)は「予防接種は、自己負担になっても病気を防ぐというメリットがある」と話す。


 上記の範囲内なら、有料で副反応の補償は減額されますが、免疫をつけるという意味では有効です。
 ヒブと肺炎球菌、BCGにはなぜ上限があるのか不思議に感じた方もいらっしゃると思いますので簡単な説明を。

 ヒブと肺炎球菌はふつうに生活していると自然に免疫が獲得されるのです。
 上限の年齢(ヒブでは5歳、肺炎球菌では10歳)頃にはほとんどの子どもが免疫を有するようになるので、それ以降は必要なくなるのですね。

 一方、結核を予防するBCGは年齢が上がると効果が期待できなくなるという性質があります。
 乳幼児期は大人の肺結核と異なり、全身感染(結核性髄膜炎、粟粒結核)となり重症化しやすいのです。
 BCGはこの重症結核を8割の確率で予防してくれます。
 しかし、6歳以降は大人と同じく肺結核がメインになりますが、こちらの予防率は5割にとどまり、あまり意味がなくなるのですね。
 
 このニュースを見て、日本の予防接種行政が抱える問題を連想しました。
 日本は大人の予防接種が手薄です。
 もともと不活化ワクチンは免疫をつけても一生持続しないので追加接種が設定されてきました。
 一方、生ワクチンは一生持続すると当初考えられましたが、その後10年程度で減衰することが判明し、2回接種がスタンダード化しています。
 
 実は、ワクチンの接種率が上がって流行がなくなると、ワクチンの効果が早くなくなるので一生定期的に追加接種しなければならないのではないか、と近年考えられるようになりました。
 地域的な小流行が、ワクチン追加接種と同じ効果を発揮していたようなのです。
 つまりワクチンで予防する感染症の流行は、ワクチン接種済みのヒトにとって追加接種となるありがたい効果があったということ。

 ワクチン接種率を上げると、追加接種の必要性も上がる・・・想定外のジレンマに今後悩まされることになりそうです。
 将来、麻疹/風疹ワクチンは10年ごとに一生接種し続けましょう、ということになるかも。
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