徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

子どもの花粉症~何歳から?

2012年02月08日 06時31分08秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行のまっただ中、花粉症患者さんの受診も増えてきました。
 私自身の話で恐縮ですが、数日前から涙がなんとなく粘稠になった印象があります。これが私の体の「花粉症開始シグナル」です。

 とうとう今年もはじまりましたね~。

 この季節、こんな相談が増えてきます。
 「鼻水がつづくんですが、花粉症でしょうか?」
 「よく目をこすっていますが、花粉症でしょうか?」


 相談を受ける患者さんの半分以上は結果的に「風邪」と診断されます。
 では風邪と花粉症を症状からどう区別するかというと・・・

風邪と花粉症を区別するポイント
・花粉症では水性鼻汁(水っぱな)~鼻づまりが2週間以上つづきます。青っぱなではありません。風邪なら1~2週間のうちに落ち着きます。
・花粉症では目をかゆがるけど、目やには目立ちません。風邪に伴う結膜炎は「目やに>痒み」で花粉症の結膜炎は「目やに<かゆみ」が特徴です。


 近年、乳幼児の花粉症が増えてきたことがよく報道されます。
 ネット上でニュースを拾い読みすると・・・


子どもが花粉症~親の3人に1人が認識(2012年2月7日 NHK)
 16歳以下の子どもがいる親の3人に1人が「子どもが花粉症だ」と感じていて、「マスクを嫌がる」など対策に苦労しているという調査結果がまとまりました。
 この調査は、去年11月から12月にかけて16歳以下の子どもがいる全国の親を対象に、製薬会社がインターネットを通じて行い、およそ4100人が回答をしました。
 それによりますと、「子どもが花粉症だと思う」と答えた人は、3人に1人に当たる36%で、前回の6年前の調査に比べて5ポイント増えました。花粉症を発症したと思う年齢を聞いたところ、10歳以下という人が82%で、前回の調査に比べて7ポイント増え、早い時期から症状が出る子どもが一層目立ちました。また子どもの花粉症に関わる経験を聞いたところ、「目薬を自分でさせず、学校に行っているときは我慢をしている」とか「花粉を防ぐためのマスクを嫌がる」など、対策に悩む声が多く寄せられました。
 子どもの花粉症に詳しい大阪府済生会中津病院の末廣豊医師は「最近の報告を見ると、患者の低年齢化が目立つので、小さい頃から花粉を避ける対策をしてほしい。子どもは症状をうまく説明でなかったり、自分では十分な対策をとれなかったりするので、保護者の注意が大切だ」と話しています。


子どもの花粉症ロート製薬 花粉対策情報
 千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科 岡本美孝 教授

◇ 低年齢化する花粉症患者 ~子どもの花粉症は近年増加~
 子どもの花粉症の発症は、最近増加がみられます。
 スギ花粉症の感作率(花粉に対して抗体を持っている割合)を昨年6 月に山梨県の農村部の小学校で調査したところ約60%の児童が感作を受け、このうち40%以上が発症していました。また、千葉県農村部の同一小・中学校で調査したところ、2000 年では約40%だった感作率が2005 年で約60%に増加していました。抗体を持っている方が全て発症する訳ではありませんが、小児での花粉症は確実に増加していると言えるでしょう。

◇ 花粉症の低年齢化の一因は、生活環境の変化
 子どもの花粉症発症の低年齢化を招いた主な要因としては、スギ花粉の増加に加えて、食生活の変化、大気汚染、ストレスなどの現代人を取り巻く生活環境の変化が影響しているのではないかと考えられています。免疫力が発達途上の子どもの場合、粘膜に外的影響をより受けやすい傾向が認められます。さらに昔の子どもに比べ過剰に衛生面に気を使うになったことも免疫力の変化を招いているのではないかと考えられています。

◇ 子どもの花粉症~0歳児でも花粉症に!
 これまでの花粉症は大人の病気として、治療の研究が進められてきたため、子ども(特に乳幼児)の場合は、臨床データは決して多くはありませんでした。
 しかし、最近では1歳以下でもスギ花粉に対する抗体が検出されるという報告もありますので、0歳児での発症も不思議ではありませんが、診断法も含めて詳しい調査が必要でしょう。


子どものスギ花粉症静岡県立こども病院アレルギー科HP

◇ スギ花粉症の始まる年齢
 治療が必要なスギ花粉症は学童期以降に増えてきます。しかし、1~2歳の幼児でも春になると目をかゆがったり、透明鼻汁が出て鼻をかゆがる場合があります。かつてはこのような年齢ではスギ花粉症はないと言われていたものですが、最近は事情が変わって、随分と早く症状が出るようになっているようです。これは専門の耳鼻科医師の報告でも確認されています。
 「こどものアレルギー新知識」でも触れていますが、実際にスギ花粉症の原因となるスギ花粉特異的IgE抗体が1~2歳児でもかなり高率に見られます。乳児でもまれですが陽性となることがあります。

◇ スギ花粉症としての乳児アトピー性皮膚炎
 乳児アトピー性皮膚炎は春に患者数が増えます。入院治療しなければならない重症患者もこの時期に増えます。年長児のアトピー性皮膚炎が入院するほど悪化するのは初夏から夏にかけてであるのと対照的です。
 春に皮膚炎が悪化して入院した乳児アトピー性皮膚炎患者では高率にスギ花粉に対する免疫反応が認められます。IgE抗体とは違うのですが、湿疹を悪化させるタイプのアレルギーの原因になります。
 スギ花粉が原因で悪化した症例では特に顔面の皮膚炎が強い傾向があります。通常は顔には弱いステロイド軟膏しか使用しないのですが、スギ花粉が原因の症例では皮膚炎の勢いが非常に強く、相当強いステロイド軟膏が処方されるに至りますが、それでも容易には収まりません。
 顔の汚れはまめに洗ったり拭いたりして取り除く、衣類は室内に干すか、乾燥機を使用する、花粉飛散の多い日には外に出さない、また戸や窓をあけない、ベッドに寝かせる(室内でも床付近にはスギ花粉が多い)などの注意を守ればかなり改善します。


 う~ん、数年前までは「1歳でも花粉症はありえる」程度の記述が多かったのですが、現在は「ゼロ歳でも発症の可能性あり」とまで云われるようになったのですね。
 また、皮膚症状にも要注意。冬は乾燥の季節でアトピー性皮膚炎が悪化しますが、春先に顔面中心に悪化するタイプではスギ花粉症の影響も考慮する必要がありそうです。乳幼児は自覚できませんので、周りの大人が気づいてあげないとわかりません。

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