徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

水痘ワクチンが「帯状疱疹予防ワクチン」へ適応拡大されます。

2016年03月03日 07時18分40秒 | 小児科診療
 最近目にした、ワクチン関係のちょっとした話題を提供します。
 まずは、水痘ワクチンが帯状疱疹予防に適応が通ったという記事。

 水痘と帯状疱疹は同じウイルスが原因であることはご存じかと思います。
 小児期に水痘にかかると1週間くらいで治ります。
 しかし、水痘ウイルスは体から消えることなく、神経節という所に隠れて住み続けることができます。
 そして中年期以降、体力が落ちたときに活性化して再び皮疹を出すのが帯状疱疹です。

 水痘との違いは、体の一部にしか皮疹が出ないこと、そして「痛い」ことです。
 とくに痛みはやっかいで、運が悪いと痛みだけ残りずっと悩まされることがあります(帯状疱疹後神経痛)。
 神経ブロックとかの治療法はあるのですが、それより賢い方法としてワクチンが注目されるようになりました。
 ワクチン接種による水痘抗体価上昇が、帯状疱疹予防になることが医学的に証明されているのです。

 帯状疱疹予防に水痘ワクチンを接種することは「水痘にかかったことのある人に水痘ワクチンを接種する」という、ちょっと不思議な構図になりますね。
 日本の水痘ワクチンは、そのまま帯状疱疹予防も可能なほど高力価であることは以前から知られており、一部の医師は非公式に実施していました。
 今回、それが正式に認められたという形になります。

水痘ワクチン、帯状疱疹予防に適応拡大へ 対象は50歳以上
(2016/3/1:日経メディカル)
 厚生労働省は、2月26日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で、阪大微生物病研究会(阪大微研)の「乾燥弱毒生水痘ワクチン『ビケン』」に、「50歳以上の帯状疱疹の予防」の効能・効果を追加することを報告した。事務手続きを経て承認され、1カ月程度で添付文書が改訂される見込み。
 帯状疱疹は、過去に感染した水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再燃により発症する疾患だ。高齢者ほど、帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行するリスクが高く、神経痛を生じた患者は治療に難渋しやすい。
 これまでの研究で、水痘ワクチン接種で帯状疱疹の発症を予防できることが確認されている。既に米国予防接種諮問委員会(ACIP)は2008年に、免疫抑制状態になく、帯状疱疹を発症していない60歳以上の高齢者に対するワクチン接種を推奨している。
 これらの知見に基づき、国内でも、帯状疱疹予防の目的で水痘ワクチンを接種する医療機関があったが、帯状疱疹の予防は水痘ワクチンの適応外であることから、水痘ワクチン接種により健康被害が生じた場合には、公的な救済措置の対象とならない状態だった。
 阪大微研以外では、ジャパンワクチンが帯状疱疹ワクチンを開発中で、現在フェーズ3臨床試験中だ。
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