徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

エボラ出血熱への新薬

2014年08月28日 06時19分29秒 | 小児科診療
 エボラ出血熱がアフリカで流行し、コントロールできないでいます。
 診療に当たっている医療関係者も感染し死亡例が出ています。
 そんな中、アメリカ人医師が感染し、自国へ帰国して未認可薬剤で治療し回復したことが話題になりました。
 その際、エボラ出血熱に対する開発中の薬剤の情報が垣間見えました。

米医師らの本国移送で注目,エボラ出血熱にどんな治療が?(2014.8.6:MTPro)

MB-003(ZMapp)
 エボラウイルス(EV)の蛋白質に対する3種の複合モノクローナル抗体。これまでに,EV感染によりヒトと似た症状を示すアカゲザルの実験で,曝露後24~48時間投与を受けた群で6頭中4頭が生存したのに対し,対照群では全頭が死亡。有意な防御効果が見られた(P<0.05)などの成績が報告されている(Proc Natl Acad Sci U S A 2012; 109: 18030-18035)。
 現時点でヒトにおける安全性や有効性の検討に至っていない他,今回の使用による有効性は不明とCDC。今回の特例的な措置は国際人道支援組織Samaritan’s Purseの非公式な手配によるもので,一般に入手できる可能性は低い他,現時点では流行地で同製剤が使用される見込みは少ないと説明した。

TKM-Ebola(開発名):Tekmira Pharmaceuticalsが開発中の抗EV RNA干渉薬
 企業公式サイトなどによると,TKM-Ebolaは2014年1月から健康成人を対象としたランダム化単盲検プラセボ対照デザインの臨床第Ⅰ相試験を開始。同年3月には米食品医薬品局(FDA)の迅速審査の対象品目に指定されたと発表されている。

BCX4430:Biocryst Pharmaceuticals社が開発中のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)インヒビター
 広域スペクトラムの抗ウイルス作用が期待されており,EVDの他,黄熱に対する非臨床試験などが行われている。CDCによると,今年末には同薬のエボラウイルスに関する臨床第Ⅰ相試験が開始される見込み。

 また、回復した医師Brantly氏は自身が治療に当たり回復した14歳の少年からの血清を1単位投与されていたそうです。エボラ出血熱をモデルにした20年前の映画「アウトブレイク」(1995年、アメリカ)を思い出しました。
 上記の他、Newlink Geneticsが開発するワクチンもあるそうです。

史上初のエボラワクチン臨床試験、米国で来週開始(2014年08月29日:AFP)
 米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases、NIAID)のアンソニー・フォーシ(Anthony Fauci)所長は28日、エボラ出血熱ワクチンの初の臨床試験を来週、米国で開始すると発表した。
 使用するのは英製薬大手グラクソ・スミスクライン(Glaxo Smith Kline)と米政府機関の研究者らが共同開発したワクチンで、「NIAID/GSK」と呼ばれている。米国立衛生研究所臨床センター (NIH Clinical Center)で3人の治験ボランティアを対象に来週、フェーズ1の臨床試験を始める。
 この試験ではまず、スーダンエボラウイルスと、現在西アフリカで感染が広がっているザイールエボラウイルスの2種類のウイルス株に対するワクチンの安全性を確認する。また、人体内でのワクチンの抗体反応を調べ、効果があるかどうかを確かめる。
 続いて10月から、20人の健康な成人を対象にザイールエボラウイルスのみを対象としたワクチンのフェーズ1の臨床試験を始める。
 エボラ出血熱については、市販されているワクチンが存在せず、世界各地でワクチン開発の動きが加速している。間もなく、英国、マリ、ガンビアでも同様の臨床試験が開始される予定だ。
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