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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

予防接種“慎重派”宣言

2014年10月06日 06時52分08秒 | 小児科診療
 先日当院で実際にあったエピソードです。

 予防接種の予約で来院した患者さんが他院へ通院していることがわかりました。
 しかしその診断名と治療内容が不明のため、当日は接種を保留し主治医の接種許可をもらってくるよう話しました。

 そして数日後、診断名と治療内容、接種の可否(“可”に○)を記した書類を持ってきていただきました。
 そこには小児科医の私には馴染みのない病名と治療薬の名前がありました。
 私は「接種はこの病気と治療薬について調べてからにしたいので、申し訳ないが接種を延期させてください」と説明したところ、家族が怒り出しました。
 「向こうの医者が“接種可”と書いているのだから大丈夫だろう。早く接種してくれ。」
 と譲りません。

 確かに、何回も受診してその度に「接種延期します」と言われる家族の気持ちもわかります。
 ただ、そのような理由で、接種される子どもに副反応のリスクがのしかかるのは避けなければいけません。

 ・・・私がここまで慎重になったきっかけは、数年前に起きた日本脳炎ワクチン接種後の死亡事故です。

予防接種後男児死亡 岐阜県「使用量など適切」
(2012年10月19日:中日新聞

 概要を記しますと、小学生の男児に接種する際、嫌がり暴れたのでスタッフ数人で押さえつけて注射し、その後間もなく意識を失い、救急搬送され集中治療を受けましたが、残念ながら亡くなりました。
 その後の検証過程で、男児はほかの病院へ通院し投薬治療を受けていることが判明しました。母親は予防接種してはいけないとは説明されていなかったので、通院/投薬に関して接種医に申告していませんでした。
 しかしその投薬内容に問題がありました(新聞記事内には記載されていません)。
 心臓に負担のかかる薬物が複数あり、うち2つは併用禁忌薬と添付文書に記載されていました。頻度はまれですが異常興奮状態では不整脈が惹起され命に関わることがあるのです。
 そして男児は予防接種の際、嫌がり暴れて押さえつけられて・・・異常興奮状態に陥り不整脈が起きたと推測されます(証明はされていません)。


 このとき、母親が通院/投薬内容を接種医に申告していたら・・・通院先の医師に接種許可の確認を取っていたら・・・展開が変わったかもしれない、と思うと残念でなりません。

 以上のことから「他院通院先の医師が問題ないと考えている」=「接種可能」というわけにはいかないと考えています。
 他院通院先の医師の意見は一つの情報であり、実際に接種する医師が総合的に問題ないと判断するのは別次元とご理解ください。
 ダブルチェックと言ってもよいかもしれません。

 もし、接種後に具合が悪くなった時、受診するのは別の通院先ではなく接種医院に行くはず。
 つまり、最終判断するところが最終的に責任を持つのです。

 このような理由で、私は予防接種に関しては“石橋を叩いて渡る”ことにしています。
 予防接種を含めた医療に関しては大胆さよりも慎重さの方が優先されると考えています。
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