現在使用されている抗インフルエンザ薬は「ノイラミニダーゼ阻害薬」というメカニズムが共通しています。
しかし、他のメカニズムによる抗インフルエンザ薬も開発されています。
その候補の一つを扱った記事を紹介します。
「ウイルスの増殖に必要なRNA複製過程の最初の反応(mRNAの合成開始)を阻害」する画期的な薬剤です。
■1回飲めば治療は終わり…塩野義製薬が開発するインフルエンザ治療薬は何がすごいのか
(2017/08/17: AnswersNews)
塩野義製薬が開発中の新規作用機序を持つ抗インフルエンザウイルス薬「S-033188」が、臨床第3相試験に成功しました。2017年度中に国内で承認申請を行う予定で、2018年度の発売が見込まれます。
1回の経口投与で治療が完了するという、既存の抗インフルエンザウイルス薬とは全く異なる特徴を持つ同剤。大型化が期待されています。
細胞内でのウイルス増殖を防ぐ
「S-033188」は「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」と呼ばれる新規作用機序を持つ薬剤。1回の経口投与で治療が完了するという、既存薬にはない特徴で注目を集めています。
塩野義製薬の発表資料をもとに、「S-033188」とノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)、ポリメラーゼ阻害薬(アビガン)との作用機序の違いを図にまとめました。
S-033188の作用機序(キャップエンドヌクレアーゼ阻害薬)
「S-033188」は、インフルエンザウイルスが細胞に侵入したあと、ウイルスの増殖に必要なRNA複製過程の最初の反応(mRNAの合成開始)を阻害します。これによりウイルスは増殖に必要なタンパク質を合成できなくなり、細胞内でのウイルスの増殖を抑える仕組みです。一方、ノイラミニダーゼ阻害薬は細胞内で増殖したウイルスが細胞外に遊離するのを阻害しますが、細胞内での増殖そのものを抑えることはできません。
単回投与で有意に罹病期間短縮
今回結果が発表されたのは、日米やアジアで行ったグローバルP3試験「CAPSTONE-1」。健常なインフルエンザ患者約1500人が対象で、
▽「S-033188」40mgまたは80mg(体重80kg以上)の単回投与
▽プラセボ
▽タミフル75mgの1日2回5日間投与
――の3群を比較しました。
学会発表を控えていることから詳しいデータは明らかにされませんでしたが、主要評価項目のインフルエンザ罹病期間はプラセボに比べて有意に短縮。オセルタミビル(タミフル)に対する優越性は示せなかったものの、同程度の罹病期間の短縮効果を示しました。インフルエンザウイルス力価(感染性を持つインフルエンザウイルス粒子の指標)の低下も早く、感染性のあるインフルエンザウイルス粒子が検出されなくなるまでの時間では、プラセボとタミフルのいずれに対しても優越性を示しました。
タミフルより有意に低い副作用発現率
薬剤との関連性が疑われる有害事象の発現率はプラセボと同等で、タミフルに比べて有意に低く、同社は「忍容性はきわめて良好」としています。手代木社長は7月24日のカンファレンスコールで「既存の抗ウイルス剤と同等あるいはさらに安全性が高いのではないかと考えている」と述べました。
「単回」「経口」両方のニーズをカバー
「S-033188」は厚生労働省から、世界に先駆けて日本で発売が見込まれる革新的新薬を承認審査などで優遇する「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されています。通常12カ月程度かかる審査は6カ月程度に短縮され、18年度前半にも発売となる見通しです。
★国内で承認されている主なインフルエンザ治療薬
国内で承認されている主なインフルエンザ治療薬と「S-033188」の特徴を表にまとめました。タミフルは1日2回5日間の経口投与。単回投与で治療が完了する薬剤には第一三共の「イナビル」と塩野義製薬の「ラピアクタ」がありますが、前者は吸入、後者は点滴で、単回で経口投与のインフルエンザ治療薬は「S-033188」が初めてとなります。
先駆け審査指定制度の対象品目には、薬価算定時に「先駆け審査指定制度加算」を受けられることになっています。加算率は原則10%・最大20%で、タミフルの薬価(1錠283.00円・1日2回5日間投与で2830円)に10~20%を乗せた額が薬価の1つの目安となりそうです。
塩野義は「S-033188」について、日本と台湾を除く全世界でスイス・ロシュと共同開発しており、発売後は販売額に応じたロイヤリティーを受け取ることになっています。
しかし、他のメカニズムによる抗インフルエンザ薬も開発されています。
その候補の一つを扱った記事を紹介します。
「ウイルスの増殖に必要なRNA複製過程の最初の反応(mRNAの合成開始)を阻害」する画期的な薬剤です。
■1回飲めば治療は終わり…塩野義製薬が開発するインフルエンザ治療薬は何がすごいのか
(2017/08/17: AnswersNews)
塩野義製薬が開発中の新規作用機序を持つ抗インフルエンザウイルス薬「S-033188」が、臨床第3相試験に成功しました。2017年度中に国内で承認申請を行う予定で、2018年度の発売が見込まれます。
1回の経口投与で治療が完了するという、既存の抗インフルエンザウイルス薬とは全く異なる特徴を持つ同剤。大型化が期待されています。
細胞内でのウイルス増殖を防ぐ
「S-033188」は「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」と呼ばれる新規作用機序を持つ薬剤。1回の経口投与で治療が完了するという、既存薬にはない特徴で注目を集めています。
塩野義製薬の発表資料をもとに、「S-033188」とノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)、ポリメラーゼ阻害薬(アビガン)との作用機序の違いを図にまとめました。
S-033188の作用機序(キャップエンドヌクレアーゼ阻害薬)
「S-033188」は、インフルエンザウイルスが細胞に侵入したあと、ウイルスの増殖に必要なRNA複製過程の最初の反応(mRNAの合成開始)を阻害します。これによりウイルスは増殖に必要なタンパク質を合成できなくなり、細胞内でのウイルスの増殖を抑える仕組みです。一方、ノイラミニダーゼ阻害薬は細胞内で増殖したウイルスが細胞外に遊離するのを阻害しますが、細胞内での増殖そのものを抑えることはできません。
単回投与で有意に罹病期間短縮
今回結果が発表されたのは、日米やアジアで行ったグローバルP3試験「CAPSTONE-1」。健常なインフルエンザ患者約1500人が対象で、
▽「S-033188」40mgまたは80mg(体重80kg以上)の単回投与
▽プラセボ
▽タミフル75mgの1日2回5日間投与
――の3群を比較しました。
学会発表を控えていることから詳しいデータは明らかにされませんでしたが、主要評価項目のインフルエンザ罹病期間はプラセボに比べて有意に短縮。オセルタミビル(タミフル)に対する優越性は示せなかったものの、同程度の罹病期間の短縮効果を示しました。インフルエンザウイルス力価(感染性を持つインフルエンザウイルス粒子の指標)の低下も早く、感染性のあるインフルエンザウイルス粒子が検出されなくなるまでの時間では、プラセボとタミフルのいずれに対しても優越性を示しました。
タミフルより有意に低い副作用発現率
薬剤との関連性が疑われる有害事象の発現率はプラセボと同等で、タミフルに比べて有意に低く、同社は「忍容性はきわめて良好」としています。手代木社長は7月24日のカンファレンスコールで「既存の抗ウイルス剤と同等あるいはさらに安全性が高いのではないかと考えている」と述べました。
「単回」「経口」両方のニーズをカバー
「S-033188」は厚生労働省から、世界に先駆けて日本で発売が見込まれる革新的新薬を承認審査などで優遇する「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されています。通常12カ月程度かかる審査は6カ月程度に短縮され、18年度前半にも発売となる見通しです。
★国内で承認されている主なインフルエンザ治療薬
国内で承認されている主なインフルエンザ治療薬と「S-033188」の特徴を表にまとめました。タミフルは1日2回5日間の経口投与。単回投与で治療が完了する薬剤には第一三共の「イナビル」と塩野義製薬の「ラピアクタ」がありますが、前者は吸入、後者は点滴で、単回で経口投与のインフルエンザ治療薬は「S-033188」が初めてとなります。
先駆け審査指定制度の対象品目には、薬価算定時に「先駆け審査指定制度加算」を受けられることになっています。加算率は原則10%・最大20%で、タミフルの薬価(1錠283.00円・1日2回5日間投与で2830円)に10~20%を乗せた額が薬価の1つの目安となりそうです。
塩野義は「S-033188」について、日本と台湾を除く全世界でスイス・ロシュと共同開発しており、発売後は販売額に応じたロイヤリティーを受け取ることになっています。