徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

医療従事者に「新型コロナワクチン義務化」の是非ーその2

2021年08月09日 09時15分53秒 | 小児科診療
2021.7.15に以下の文章を書きました;


正解のない問いですが、これからも向き合い、考えていきたいと思います。
今回紹介するのはこちらの記事;

ひろゆき氏が“コロナ最前線”の医師6人に質問「ワクチン反対派のコロナ患者はどう思う?」「医療従事者はワクチンを義務化するべき?」

私の答えは・・・
医師は患者を選べませんので、職業倫理から「ワクチン反対派のコロナ患者はどう思う?」と聞かれても「目の前の患者をふつうに診療する」しかありません。
では、「たくさん重症患者が押し寄せて、命の選別を迫られる状況ではワクチン接種者を優先するか?」と聞かれたら・・・正直わかりません。
ワクチン接種により重症化率が下げられることはわかっていますので、それを無視して重症化したなら自業自得、という考えがある一方で、接種したかったけれど事情があり接種できなかった、という例もあると思われ、限られた情報の中で判断すること名困難であり、やはり「目の前の患者をふつうに診療する」しかないのかな、と現時点では思います。

2問目の「医療従事者はワクチンを義務化するべき?」という質問については、冒頭で紹介した以前のブログで私の考えは書きましたので興味ある方はお読みください。
医師は職業倫理的に「医師は要望があった際に診療を拒否することはできない」(応酬義務)や「目の前の患者を差別することなく診療する」義務が存在します。
それと同じレベルで「自分が感染源になって患者さんにうつしてはならない」ということも感染対策の基本であり医療倫理と私は感じていますので、ワクチン接種によりそのリスクを軽減できるのであれば、義務化が基本ということになります。

ただ、mRNAワクチンは人類史上初めての試みであることは事実。
歴史上、壮大な実験をしているという見方もできます。
ワクチン以上に有効な手段を見いだせない現在、新型コロナウイルスに対抗するには、それを乗り越えるためには必要な一歩ではないかと。
躊躇すれば被害が拡大し、経済・社会的に破綻する可能性が大、つまりウイルスに負けてしまうのですから。

単純に考えると、

・自然感染:ウイルスの遺伝子の全部が身体に侵入してコピーを作り、増殖して人体にダメージを与える。
・ワクチン:ウイルスの遺伝子の一部が身体に侵入してコピーを作り、中和抗体を誘導し人体を守る。

の違いです。
ウイルス遺伝子の一部を入れるワクチンより、全部が入って自分の細胞内でウイルスのコピーを無限に作られる自然感染の方がイヤですよね。

さて、話を戻します。
著明な医師5名が答えた内容を抜粋します;

【忽那賢志氏(大阪大学医学部・感染制御学教授)】
 「医療従事者は全員接種すべきだと自分のブログに書いたら、医療従事者からたくさん『お前はなんてことを言うんだ』というメールが来た。だが、やはり医療従事者から患者にうつしてはいけない。私自身は医療従事者は全員接種すべきだと思う」 

【高山義浩氏(沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科副部長)】
 「義務という言い方はちょっと強すぎるが、打つべきだと思う。中には不安があって打てない人もいるので、そこに対する許容性も必要だ。医療は患者さんに対しても同じ態度を取りかねないので、注意すべきだと思う」 

【佐々木淳氏(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長)】 
「打つべきだと思っている。特に私たちが診ている患者さんたち、特に我々の場合は基礎疾患がある高齢者が大部分なので、もし万が一私たちを媒介して感染を広げて、その人の生命に大きな影響が出たときにどうやって責任を取るのか。責任の取りようがない。なので、私は基本的にこういう仕事をする以上、ワクチンを打つのは私たちの責務だ。自分たちから病気を広げないために打つという理解をしている」 

【廣橋猛氏(永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長)】 
「私も皆さんと一緒で、気持ちは義務と言いたいぐらいだ。院内感染の経験から、我々だけではなくて患者さんを守るのが医療者の使命だという職業倫理観を持っている。そういった意味ではワクチンを打って欲しいと思う。そういった方と一緒に働きたい」 

【山下紗弥氏(りんくう総合医療センター産婦人科副医長)】
 「私たちは妊婦さんに、そしてできるなら妊婦の家族さんにも打って欲しいと思っている。妊婦さんに接する立場の医療従事者はできる限りワクチンを打って欲しい」 

【木村百合香氏(荏原病院耳鼻咽喉科医長)】 
「ワクチン接種は、適切な医療を提供するための使命の一つだと私は感じる」

多少の温度差はあるものの、医療の現場での認識は「患者さんを守るために接種」と一致していますね。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 若者をワクチン接種へ向かわ... | トップ | 「有効率80%、有効期間3ヶ月... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小児科診療」カテゴリの最新記事