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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

医療従事者に「新型コロナワクチン義務化」の是非

2021年07月15日 06時47分45秒 | 小児科診療
まず、医療従事者における、新型コロナ以外の「ワクチン義務化」の現状を報告します。

現在、看護師や医師を養成する大学・短期大学・専門学校では、
入学前に「麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜ」に関して、
「感染・ワクチンの既往」の確認を求められます。
その内容は日本環境感染学会による「医療者のためのワクチンガイドライン第3版」に準じて行われます。
不十分と判断された場合、抗体検査や必要に応じてワクチン接種が指示され、
それに従わない場合は入学を認められません。

つまり、事実上「ワクチン接種が義務」です。
また、医療施設に実習に行く職種を目指す学生も、
実習前に同様のことを求められます。

これは、自身を守ることと免疫弱者である患者さんを守ることが目的です。
医療従事者が感受性者(その感染症の免疫を持っていない)場合、当然感染する可能性があります。
そして感染した場合、その時点では被害者かもしれませんが、
同時に加害者に否が応でもなり得ます。
そして免疫弱者である患者さんにうつると、患者さんは重症化する可能性が大です。
例えば、健康な人が水痘に罹っても1週間程度で治りますが、
白血病患者が罹ると命に関わります。

続いて一般人に対する「ワクチン義務化」の現状を。

アメリカでは、小学校に入学する際に麻疹・風疹などのワクチン接種が済んでいることを
証明する必要のある州があります。
宗教上の理由とかで例外が認められていますが、
基本的に義務化と等価ですね。

また、アメリカへ留学する際、一般的にワクチン接種証明書の提出を求められます。

これらは、集団生活で上記感染症のアウトブレイクが繰り返し問題になった経緯を反映した施策です。

世界旅行をした経験のある方は「黄熱ワクチンに対するイエローカード」をご存知だと思います。
黄熱流行国では、あらかじめ黄熱ワクチンを接種しておかないと入国できません。
それを証明するのがイエローカードです。

以上、日本では定期接種といえども法律上は
・ワクチンは推奨で義務ではない
・国民はワクチン接種の努力義務がある
という中途半端な扱いですが、
現実にはリスクの高い環境では一部義務化されているのです。


さて、ここからは新型コロナおよびそのワクチンの話です。

パンデミック発生から1年半以上経過しましたが、
新型コロナウイルスの勢いは止まる気配がありません。

人間にとって、新型コロナウイルスの困った特徴は、
「無症状の感染者からもうつる」
ことでしょう。

このため、感染対策を尽くしてもすり抜ける例がゼロにできず、流行を抑えきれません。
感染対策を尽くした結果、毎年流行する季節性インフルエンザは影を潜めたのに、
新型コロナはどこ吹く風。
つまり、新型コロナはインフルエンザより手強いことは間違いありません。

ウイルス感染症に対抗する人類の手段は、
感染を予防するワクチンと、感染した場合に使用する治療薬があります。
残念ながら、現在手に入るのはワクチンのみ。
ここがタミフルなど治療薬が充実しているインフルエンザと違うところです。

そして、今回開発された新顔の mRNA ワクチンは有効率95%と驚異的な数字を示しています。
開発スピードの速さと有効率の高さは、ワクチン専門家の間では「奇跡」と捉えられています。

すると、
「国民全員にワクチンを打てば解決するのでは?」
という考えが生まれます。

しかし副反応も一定の比率で発生することがわかっており、
それを不安視して接種を拒否する人たちもいます。

ただ、流行拡大〜医療崩壊が止まらない国もあり、
世界各国で新型コロナワクチンを義務化する動きがあります。

アメリカでは医療施設が職員に義務化を提示し、
職員が反発して訴訟になり、
職員側が敗訴したというニュースが聞こえてきました。

フランスでも義務化の議論が始まっています。
マクロン大統領は「ワクチンを打たない医療従事者には給料を払わない」と言い出しました。

EUで導入されたワクチンパスポートも、
接種者のみ利用可能な施設、権利を設定するため、
間接的に非接種者に行動制限がかかります。

「このまま放置すると国が危ない」
「ワクチンを接種するのは自由選択などと言っている場合ではない」
という危機感が日本と比較にならないほど強いのだと思われます。

一方で、新型コロナワクチン接種を医療従事者の中でも一定の比率で拒否する人たちがいます。
看護師では3割に上るというデータもあります。
各個人で事情はあり、もちろん強制ではありませんが、
その方々はどのような勤務を望まれるのでしょう?
私は医療従事者に以下のようなアンケートをとってみたいです。

①ワクチンを接種し、新型コロナ感染リスクのある病棟・外来で働く
②ワクチンを接種せず、新型コロナ感染リスクのある病棟・外来で働く
③ワクチンを接種せず、新型コロナ感染リスクが低い部署で働く

医療施設においては「患者さんを守る」という視点から、
②のパターンは倫理的に許されない状況です。
つまり、医療従事者でワクチン拒否する方々は、
③を選択したことになります。

しかし、これらの選択を迫ることに息苦しさを覚えることも確かです。
一部の看護師スタッフが退職していくのも理解できます。

もし医療従事者に対して新型コロナワクチン接種義務化を考えるなら、
それに見合うリスク手当て等、考えるべきだと思います。

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