一般市民からすると「学会」という団体はちょっと縁遠い印象があります。
医学専門学会はその分野の研究の他に、政治に影響されない学術的な視点に立った見解を政府に伝えるという役割もあります。
さて、私も所属する「日本小児科学会」が最近政府へ提出した要望書が3件、某メディアで取りあげられていましたので紹介します;
■ 日本小児科学会が風疹対策,HPV勧奨中止などで要望書(2013年8月6日:MTPro)
日本小児科学会(会長:五十嵐隆氏)は8月5日,同学会を含む小児科関連の4つの医学団体が,厚生労働大臣および厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会長宛てに予防接種に関する3つの要望書を提出したことを公式サイトで明らかにした。
要望は
(1)昨年(2012年)から流行が続く風疹および先天性風疹症候群(CRS)への対策について,
(2)より多くの血清型をカバーするワクチンへの切り替えが予定されている結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)の指針,
(3)現在,国の勧奨が中止されているヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン,
の3点について行われており,7月19日に提出された。
◇ 風疹・CRS制圧の緊急対策求める要望書は5月に続き2度目
風疹流行対策に関して同学会は,「厚労省がこれまでに発出した種々の注意喚起だけでは流行制圧には不十分で,風疹およびCRS予防にはワクチン接種が極めて有効かつ唯一の方法」と指摘。一方,自治体の公費助成が広がっているにもかかわらず財政的な問題で助成を行えない地域もあると現状を説明。厚労省分科会に対し,現在の流行の中心である成人の予防接種につながる緊急対策と中期的な施策を早急に厚労大臣に提言するよう求めた。
同学会は,今年5月23日にも風疹予防接種を予防接種法上の臨時接種とするよう大臣宛の要望書を提出している。
◇ PCV13「補助的追加接種も定期接種に」ただし,結論は覆らない見通し
7価から13価への切り替え方針が話し合われていたPCVについては,13価の登場を待ち「7価の接種控え」が起きないよう早期の指針策定を要望。また,一斉切り替え後に既にPCV7の規定回数を完了した小児へのPCV13を定期接種として1回追加接種(補助的追加接種)を行うことも求めていた。
なお,同要望書提出から4日後の7月23日に開かれた分科会では,「補助的追加接種は有効性,財政上の問題などから任意接種とする」との分科会下部組織からの提言が覆ることはなかった。
◇ HPVワクチン「CRPSの明らかな増加なければ,勧奨中止の即刻解除を」
HPVワクチンについては,現在の国による勧奨中止で接種者の大幅な減少が想定され「将来,子宮頸がんを発症する者が出ることが予想される」と懸念を示した。また,勧奨中止の根拠となっている同ワクチン接種後の複合性局所疼痛症候群(CRPS)の頻度が海外や国内での献血事業との早急な検討などが必要と提言。その上で「同ワクチン接種後のCRPSの明らかな増加がなければ有効性とリスクを勘案し,勧奨中止を即刻解除することを要望する」と述べている。
<原文はこちら>
□ 風疹流行対策に関する要望書(2013年7月19日)
□ 小児用肺炎球菌ワクチン~7 価から 13 価への切り替えに関する指針の早期策定に係る要望書(2013年7月19日)
□ 子宮頸がん予防ワクチンの「積極的な接種勧奨の差し控え」に関わる要望書(2013年7月19日)
しかしこれまでの経緯では、厚労省がアカデミズムの意見を取り入れて政策に反映させることは遅々として進まず、政府は科学的事実ではなく別の力(社会現象?)で動いているんだなあという印象を私は持っています。
わかりやすい例が「子宮頸がんワクチン」です。
産婦人科系の学会も要望はしていましたが、小児科系が要望していたヒブや肺炎球菌、B型肝炎の方がその活動は長かったはず。しかし、子宮頸がんを患った芸能人(某女優と某議員)の活動であっけなく認可されてしまい、医師達は愕然としたことは記憶に新しい。そのタイミングでとってつけたようにヒブと肺炎球菌ワクチンも認可したのでラッキーと言えなくもないですが・・・順番が変、これは世界からも指摘されています。
そういう事情が、トラブル後のフォローの差になって現れています。
ヒブと肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡が問題になった際、一旦停止となりましたが1ヶ月後には再開されました。
一方、子宮頸がんワクチンはCRPSが問題になり積極的勧奨停止となり、しかしこれが解除される見通しが立っていません。
表に出ない学会系の地道な努力が効いているのだと感じます。
結局影響力のあるヒトが騒いだ者勝ち、という感が否めず、その都度ガッカリする私です。
医学専門学会はその分野の研究の他に、政治に影響されない学術的な視点に立った見解を政府に伝えるという役割もあります。
さて、私も所属する「日本小児科学会」が最近政府へ提出した要望書が3件、某メディアで取りあげられていましたので紹介します;
■ 日本小児科学会が風疹対策,HPV勧奨中止などで要望書(2013年8月6日:MTPro)
日本小児科学会(会長:五十嵐隆氏)は8月5日,同学会を含む小児科関連の4つの医学団体が,厚生労働大臣および厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会長宛てに予防接種に関する3つの要望書を提出したことを公式サイトで明らかにした。
要望は
(1)昨年(2012年)から流行が続く風疹および先天性風疹症候群(CRS)への対策について,
(2)より多くの血清型をカバーするワクチンへの切り替えが予定されている結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)の指針,
(3)現在,国の勧奨が中止されているヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン,
の3点について行われており,7月19日に提出された。
◇ 風疹・CRS制圧の緊急対策求める要望書は5月に続き2度目
風疹流行対策に関して同学会は,「厚労省がこれまでに発出した種々の注意喚起だけでは流行制圧には不十分で,風疹およびCRS予防にはワクチン接種が極めて有効かつ唯一の方法」と指摘。一方,自治体の公費助成が広がっているにもかかわらず財政的な問題で助成を行えない地域もあると現状を説明。厚労省分科会に対し,現在の流行の中心である成人の予防接種につながる緊急対策と中期的な施策を早急に厚労大臣に提言するよう求めた。
同学会は,今年5月23日にも風疹予防接種を予防接種法上の臨時接種とするよう大臣宛の要望書を提出している。
◇ PCV13「補助的追加接種も定期接種に」ただし,結論は覆らない見通し
7価から13価への切り替え方針が話し合われていたPCVについては,13価の登場を待ち「7価の接種控え」が起きないよう早期の指針策定を要望。また,一斉切り替え後に既にPCV7の規定回数を完了した小児へのPCV13を定期接種として1回追加接種(補助的追加接種)を行うことも求めていた。
なお,同要望書提出から4日後の7月23日に開かれた分科会では,「補助的追加接種は有効性,財政上の問題などから任意接種とする」との分科会下部組織からの提言が覆ることはなかった。
◇ HPVワクチン「CRPSの明らかな増加なければ,勧奨中止の即刻解除を」
HPVワクチンについては,現在の国による勧奨中止で接種者の大幅な減少が想定され「将来,子宮頸がんを発症する者が出ることが予想される」と懸念を示した。また,勧奨中止の根拠となっている同ワクチン接種後の複合性局所疼痛症候群(CRPS)の頻度が海外や国内での献血事業との早急な検討などが必要と提言。その上で「同ワクチン接種後のCRPSの明らかな増加がなければ有効性とリスクを勘案し,勧奨中止を即刻解除することを要望する」と述べている。
<原文はこちら>
□ 風疹流行対策に関する要望書(2013年7月19日)
□ 小児用肺炎球菌ワクチン~7 価から 13 価への切り替えに関する指針の早期策定に係る要望書(2013年7月19日)
□ 子宮頸がん予防ワクチンの「積極的な接種勧奨の差し控え」に関わる要望書(2013年7月19日)
しかしこれまでの経緯では、厚労省がアカデミズムの意見を取り入れて政策に反映させることは遅々として進まず、政府は科学的事実ではなく別の力(社会現象?)で動いているんだなあという印象を私は持っています。
わかりやすい例が「子宮頸がんワクチン」です。
産婦人科系の学会も要望はしていましたが、小児科系が要望していたヒブや肺炎球菌、B型肝炎の方がその活動は長かったはず。しかし、子宮頸がんを患った芸能人(某女優と某議員)の活動であっけなく認可されてしまい、医師達は愕然としたことは記憶に新しい。そのタイミングでとってつけたようにヒブと肺炎球菌ワクチンも認可したのでラッキーと言えなくもないですが・・・順番が変、これは世界からも指摘されています。
そういう事情が、トラブル後のフォローの差になって現れています。
ヒブと肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡が問題になった際、一旦停止となりましたが1ヶ月後には再開されました。
一方、子宮頸がんワクチンはCRPSが問題になり積極的勧奨停止となり、しかしこれが解除される見通しが立っていません。
表に出ない学会系の地道な努力が効いているのだと感じます。
結局影響力のあるヒトが騒いだ者勝ち、という感が否めず、その都度ガッカリする私です。