徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

花粉症対策にワセリン塗布

2016年03月24日 07時07分42秒 | 小児科診療
 花粉症対策として、数年前に鼻の穴の入り口周囲に塗る薬が発売されました。
 そして現在、ワセリン塗布法が現在話題になっているとか。

 わたしは以前から「鼻の穴の周囲や目の周りにワセリンを塗ると花粉侵入がブロックされるのでいいですよ」と説明して処方してきましたので、何を今さら・・・という感が無きにしも非ず。

 ワセリン塗布が有効な根拠は、粘膜保護・保湿作用の他に、花粉をトラップしてくれることと説明されています。
 花粉が鼻の中や目の粘膜に付着すると、水分を吸って膨れて割れて花粉成分が出てきてアレルギー反応を起こすけど、ワセリンという油層でトラップしてしまうと花粉が割れることがないので症状が出にくい、というもの。

 ちなみに私が処方しているのは、ワセリンをより精製した眼科用ワセリン(プロペト®)という薬剤です。目の中に入っても問題ないことが保障されている、ある意味貴重な塗り薬です。
 診療ではアトピー性皮膚炎のスキンケアに多用しています。赤ちゃんの顔に塗っても、目に入っても大丈夫というお墨付きがありますからね。
 たくさん使う必要のある患者さんにはAmazonで購入するよう勧めていました。当時は500g瓶で1000円くらいでしたが、その後有名になってからは価格が上昇しています。商売ですねえ。

■ 効果絶大?「花粉症にワセリン」説
BIGLOBEニュース:R25、2016年3月13日
 長い冬もようやく終わりを迎えているが、そうなるとつらいのが花粉(症)。日本人の10~20%、一説には国民の3分の1ともいわれる花粉症について、「ワセリンが効く」との説がツイッターで飛び交い、花粉症患者の人々が効果を確認し合っている。
 ワセリンが大きく話題になったのは3月5日のことだ。前日の4日、あるツイッターユーザーが、
 「花粉のせいで目も鼻も死亡って感じだったんだけど、『鼻の穴と目のまわりにワセリンを塗る』っていうやつがすごく効く(花粉受容体?wのある場所をカバーする事で症状が出ない)。これ教えてくれた人まじ神」(一部抜粋)
 と、ツイートし、これが爆発的に拡散。さらに8日にも、別のツイッターユーザーが、
 「花粉で毎日地獄だったけど、綿棒で鼻の中にワセリンを塗りたくって外に出たら!!!くしゃみ鼻水が全く出なくて!!!世界が明るい!!!!」
 とツイートして、これが2万以上RTされ、「ワセリン」はツイッター上のトレンドを紹介する『ついっぷる』の「HOTワード」というコーナーで上位にランクインした。
 ワセリンは実際に花粉症に効くのだろうか? 大阪市の川村耳鼻咽喉科クリニックのブログによると、ワセリンを鼻の中に塗れば、「花粉の侵入を防ぐことで鼻水やくしゃみを防ぐことができます」とのこと。塗る場所としては、

・目の周り:涙袋からまぶたのライン
・鼻:鼻の下、穴の前、穴の中
 などが良いそうだ。
 さっそく多くの花粉症患者が試したようだが、
 「マジ鼻ワセリン効果絶大。鼻の花粉症で悩む人はやってみた方がいい」
 「ワセリン鼻に塗ったらほんとだ??全然くしゃみ出ないし鼻水出てこないし快適!!!すげぇ!!!」
 「今まで知らんかったが鼻にワセリンマジでやべぇな…花粉症の鼻水一瞬で消えた」
 「鼻の中にワセリン塗ったら本当に鼻水出なくなった!」
 など、続々と感激の声が寄せられている。今や検索エンジンで「ワセリン」と入力すると、最上位に登場するのは「花粉症」という単語(3月11日現在)。「花粉症にはワセリン」という新常識が、急激に広まっているようだ。


 ツイートなので、ちょっと過剰な表現がなきにしもあらず(^^;)。
 実はこのワセリン塗布法、イギリスでは正式に推奨されているそうです。

■ 花粉症の救世主?”鼻にワセリン”は本当に効くのか
(市川衛 | 2016年3月18日)
 シーズンを迎えている花粉症。くしゃみやセキにお悩みの人も多いですよね。最近、ツイッターなどで「鼻の中に、ワセリンを塗ると症状が軽くなる」とにわかに話題になっています。
ワセリンは、原油を精製するときに出来る成分を原料に作られるクリームで、保湿剤などに使われています。確かに花粉症は、鼻の粘膜などに花粉が付着して起きるわけですから、クリームを塗って花粉をシャットアウトしてしまえば効果がありそう。とはいえ、科学的な根拠はあるのでしょうか?そして本当に、効くのでしょうか?

◇ 一般に推奨される「花粉症対策」とは
 まず、国内で一般的に推奨されている、自分でできる対策法(セルフケア)を探してみました。少し古い資料ですが、厚生労働省による花粉症のパンフレット(平成19年発行)の患者さんに推奨したいセルフケアの項には次のような記載があります。

【外出時】
・防御具を装着し、眼・鼻をガードする
・ウールの服は避ける
【帰宅後は次のことを励行】
・手洗い、うがい、洗顔、上着を玄関ではたく
【家では】
・花粉の大量飛散時には窓を開けない、洗濯ものや布団を干さない
・洗濯ものはよくはたく
・その他(タバコは避ける、ストレスをためない)

 ここには、クリームについての記載は見つかりませんでした。一方でパンフレットには「水や市販の洗浄液で眼や鼻を洗浄すると症状が緩和されることがありますが、花粉が逆流して戻り、かえって症状悪化につながる場合もあるため、医師に相談が必要です」との注意書きがありました。うーん、クリームを鼻に塗って、大丈夫なの?

◇ 本当に推奨されていた!
 では続いて、海外の情報を。様々な病気の患者が「自分で出来る」対策を紹介している有名なサービスに、NHS Choicesがあります。イギリスの医療サービスを運営するNHS(国民保健サービス)が提供しているもので、科学的根拠に基づいた信頼できる情報が紹介されています。
 では、NHS Choicesで、花粉症(Hay fever)の「予防」の項を調べてみます。すると・・・「鼻の穴の内側(穴の入り口に近い部分)に少量のワセリン(ペトロレウムゼリー)を塗り付けることで、花粉が入るのを防ぐことができます」と書いてあります。
なんと!本当に推奨されていました。
 では、効果はどの程度確かめられているのでしょうか?過去に世界中で行われた臨床研究を検索できるPubMed(パブメド)を使って調べてみます。「Pollen cream」(花粉 クリーム)などの語句で検索してみると、いくつかの研究が過去に行われていることが分かりました。
 2013年に発表された中国の研究グループによる論文では、「プラセボ対照二重盲検下比較試験」という、非常に信頼性が高いといわれる方法によって効果を調べました。
 研究グループは、慢性アレルギー性鼻炎と診断された患者さん30人を2つのグループに分け、ひとつのグループには、治療用のクリーム(ワセリンと同じ、原油を精製してできる成分を含む)を渡します。そしてもうひとつのグループには、偽クリーム(見た目は似ているが、別の成分が入っている)を渡しました。そして、どちらのグループにも、1日3回、鼻の内側にクリームを塗ってもらいました。
 30日後、研究グループは患者さんたちを検査。鼻炎の症状を示す指標(NSSs)を調べました。すると・・・治療用のクリームを使ったグループは、開始前が23.4だったのに比べ、開始後は10.7と大幅な改善を示していました。しかし、偽のクリームを渡されたグループはあまり改善しておらず(開始前後で3.6の改善)、その差は統計的に有意であるとされました。(なおクリームを塗ることにより、悪い影響が出た人はいませんでした)
 この結果から推測されるのは、ワセリンに含まれる成分は花粉をひきつけやすい性質があり、鼻の内部への侵入を防ぐことで、症状を軽くしてくれるのではないか?ということです。外出前などに、鼻の内側(穴の入り口に近い部分)に「少量」塗り付けるというのは、あくまで数ある対策のひとつとしてですが、「試してみても良さそう」と言えそうです。
 もちろん、お薬とは違いますから「劇的な効果」があるかどうかはわかりません。また、試してもよいかどうかなど不安に思われた方は、ぜひ一度、かかりつけのお医者さんにご相談してくださいね。


 油分を塗れば何でもよいような気がしますが、上の記事によるとワセリン以外のクリームでは効果が期待できない可能性があるようですね。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スギ花粉の飛散はピーク越え | トップ | 3月30日の日曜日・・・ »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小児科診療」カテゴリの最新記事