ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

緊急提言(日産婦委員会):ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う病院は3名以上の常勤医を!

2006年04月25日 | 地域周産期医療

現時点では、産婦人科医1~2人体制の公立・公的病院の産婦人科で周産期医療が支えられている地域は非常に多いのが現実である。

実働の産婦人科医の総数がどんどん減り続けて、分娩施設が急減している現在の状況の中で、今回の緊急提言通りに、公立・公的病院の産婦人科医1~2人体制を一気に解消しようとすれば、公的な分娩施設の総数を現在の半数以下に思い切って減らす必要があり、全国の産婦人科医の配置を大幅に入れ替える必要がある。これを強行突破で実行しようとすれば、全国的に地域住民の反対・署名運動の嵐が巻き起こることは間違いないだろう。

従って、今後、各地域で、住民、行政、医療機関で、十分に話し合う必要があるが、それぞれ違う立場の人達の利害をうまく調整して、地域全体の意思を統一することはなかなか困難と思われる。

また、今後、各広域医療圏の公的な分娩施設をセンター化していく中で、産婦人科医3人体制という中途半端な規模では全く不十分であることは共通の認識としていただきたいと思う。忙しい病院で、3日に一度当直して徹夜で仕事をし、その上、昼間も休まず働き続けるというのは絶対に無理な話だ。ハイリスク妊娠・分娩を取り扱うセンター的な分娩施設の常勤産婦人科医数の最終的な到達目標は最低でも10人程度とすべきであり、今回の緊急提言の常勤医3人という数字は、あくまで地域の周産期医療が絶滅するのを回避するための緊急避難的な暫定目標であり、決して最終的な到達目標ではないことを提言の中でも強調していただきたいと思う。

*** 検討委員会の資料、緊急提言

                    日本産科婦人科学会
            産婦人科医療提供体制検討委員会

本委員会は、中間報告書の提出に際して、以下の点について緊急の提言を行います。本提言の趣旨をご理解の上、何卒、迅速かつ適切なご対応をお願い申し上げます。

緊急提言

ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う公立・公的病院は、3名以上の産婦人科に専任する医師が常に勤務していることを原則とする。

提言の理由

1. 産婦人科医の不足の原因の一つが、その過酷な勤務条件にあることは、既に周知の事実である。しかし、平成17年度の本学会・学会あり方検討委員会の調査においても、分娩取扱大学関連病院のうちで、14.2%が一人医長、40.6%が常勤医2名以下という事実が明らかとなっており、勤務条件の改善傾向は認められていないと考えざるを得ない。

2. それに加えて、地域の病院によっては、産婦人科の勤務条件改善の必要性が理解されず、一人でも産婦人科医を確保すれば、分娩取扱を継続できるという考え方に立って、産婦人科医確保の努力を行っているという現状がある。

3. 産婦人科医を志望する医師および医学生に対して、近い将来の産婦人科医の勤務条件の改善の見通しを提示するためには、この状況を改善する明確な意思を学会が示す必要があると考えられる。

4. 本提言を実効のあるものとするために、各地域の医療現場で働く産婦人科医師は主体的にその活動の場を再編成すべきである。


産婦人科常勤医、2年で8%(412人)減

2006年04月25日 | 地域周産期医療

****** 読売新聞、2006年4月24日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060424-00000314-yom-soci

大学病院などの産婦人科常勤医、2年で412人も減少

 全国の大学病院やその関連病院に勤務している産婦人科の常勤医が2年余りの間に8・0%(412人)も減少している実態が24日、横浜市で開かれている日本産科婦人科学会で報告された。

 調査は、同学会の検討委員会(委員長=吉川裕之・筑波大教授)が、全国110の大学病院とその関連病院を対象に、2003年4月と05年7月の時点でのデータを比較した。

 それによると、5151人だった常勤医は4739人まで減少したほか、分娩(ぶんべん)を取り扱う関連病院の数も1009施設から9・4%(95施設)減少し、914施設になっていた。

 こうした減少傾向について、同委員会では、新卒の医師が医師免許取得後2年間に様々な分野を研修する臨床研修が04年度から義務化されたことによる影響で、大学病院の医局への医師供給が減ったことに加え、産婦人科医が置かれた過酷な診療環境から、他の診療科などに移る医師も少なくないとみている。

 同学会の武谷雄二理事長は「経済的に豊かな日本で、安全なお産が危機的状況に陥っている」としている。

(読売新聞) - 4月24日21時33分更新

****** 朝日新聞、2006年4月24日http://www.asahi.com/health/news/TKY200604240390.html

産婦人科医、2年で8%減 非常勤への異動など影響か

 全国の大学病院と関連病院に常勤する産婦人科医が2年間で8%減り、お産の扱いをやめた関連病院も相次いでいることが、日本産科婦人科学会(日産婦)の調査で分かった。24日、日産婦が開いた産婦人科医師不足対策などを話し合う会議で公表した。

 日産婦の「学会のあり方検討委員会」(委員長=吉川裕之・筑波大教授)が全国110の大学病院を対象に、各大学病院とその関連病院の状況を尋ね、109の大学病院から回答を得た。

 常勤産婦人科医の総数は03年4月には5151人だったが、05年7月には4739人に減った。特に近畿(13.4%減)、北陸(10.2%減)両地方での減少が目立った。お産を扱う関連病院も03年の1009病院から、2年間に95病院(9.4%)減っていた。

 日産婦は、常勤産婦人科医減少の主な要因として、複数の診療科で研修を受ける臨床研修制度が04年度にスタートしたことや、常勤から非常勤への異動などを挙げる。その一方で、常勤の産婦人科医に占める女性の割合は年々急激に大きくなっているといい、吉川委員長は「意欲はあるのに、出産や子育てで当直が出来ないばかりに、非常勤に回らざるを得なくなる女性医師も多い」としている。

(朝日新聞、2006年04月24日23時07分)